寒さが増してくると空気は澄み、冬の夜空は一段と美しくなる。
今、西の空には金星が輝き、その近くには鎌のように鋭い三日月が光を放っている。
こんな三日月を見るたびに思い出すことがある。
11年前の春、妹が逝ってしまった。
当時3才5か月であった妹のたった一人の孫Sちゃんは
火葬場の炉からでてきた妹のお骨に
『バァバがとけちゃった!』 と大声で泣き叫んだ。
3才5か月の幼い子がどこまで理解して泣き叫んだのか、
まわりの大人たちは 戸惑いながらもその泣き声は 皆の悲しみを一層深くした。
それからSちゃんのママは
『バァバは、お月様に行ったの。お月様からSを毎日見ているからね・・・』 と。
Sちゃんはお月様を見るたびに
(バァバはお月様にいるんだ。あそこから見ているんだ・・・) と思って過ごしたのであろう。
満月がだんだん細くなって、今夜のように三日月になった時、Sちゃんは
『バァバがお月様から落ちちゃう・・・』 と泣きじゃくった。
ママはSちゃんを抱きしめ、涙がとまらなかった・・・と。
月を見るたびに思う。
私も妹は月にいると・・・
そして、月にむかって話しかける。
『Sちゃんの成長をこの目でしっかりと見ているよ。そして いつか出会うとき
たくさんお土産話をするからね・・・』