りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“スティーブ・ドガー” ―全10場― 2

2012年03月26日 22時07分37秒 | 未発表脚本



  スティーブ「(何か思い出したように。)そうだ・・・。(ジャケットの
         内ポケットから携帯電話を取り出しかける。)」

         暫くの呼び出し音の後、相手が出る。
         (声の主はアイザック警部。)
         紗幕閉まる。

    ――――― 第 3 場 ――――― B

         紗幕前。

  アイザックの声「はい・・・。」

  スティーブ「・・・アイザック警部?」

  アイザックの声「スティーブか!?」

  スティーブ「ああ。」

  アイザックの声「馬鹿野郎!!今、何処にいるんだ!?昨日か
            ら行方知れずで心配したんだぞ!!」

  スティーブ「一昨日の夜、仕事が済んで帰宅する途中、何者か
         に命を狙われたんだ。」

  アイザックの声「なんだって!?それで大丈夫なのか!?」

  スティーブ「(笑って。)だから今電話してるんだろ?」

  アイザックの声「(ホッとしたように。)ならよかった・・・。」

  スティーブ「少し腕に掠り傷を負ったがね・・・。親切な娘に助け
         てもらったよ。」

  アイザックの声「娘?」

  スティーブ「ああ、今、その娘の家にいる・・・。」

  アイザックの声「それで、その何者かの顔は見たのか?」

  スティーブ「いや・・・。暗がりの路地で、行き成りだったから・・・。
         」
  
  アイザックの声「だから言ってあっただろ!!必ず出歩く時は、
            ボディガードを付けろって!!・・・命が助かった
            からよかったようなものの・・・。で、機密書類は
            無事なんだろうな?」

  スティーブ「肌身離さず持っているよ。あいつが捕まるまではね。
         」

  アイザックの声「そうか。兎に角、2、3日中にはクラウニーをお
            まえの護衛として、そこへやるからジェラルドを
            捕まえるまで、そこで大人しくしてろ!!いいな
            !?」
  
  スティーブ「了解。」

  アイザックの声「・・・それから、如何やら警察内部に内通者が
            いるらしいんだ。だからここへ気軽に電話はして
            くるな。」

  スティーブ「内通者・・・?一体誰が・・・?」

  アイザックの声「馬鹿!それが分かれば直ぐ様解決だ!」

  スティーブ「成る程ね・・・。」

  アイザックの声「で、どこにいるんだ?」

  スティーブ「アボンリー・・・」

  アイザックの声「アボンリー・・・?あの小説にでてくるアボンリー
            のことか?馬鹿野郎!あれは空想の村だろう
            が!!」

  スティーブ「キャベンディッシだよ。」

  アイザックの声「・・・キャベンディッシ村か・・・。えらく遠くまで逃
            げたんだな。綺麗な村じゃないか・・・。」

  スティーブ「ああ・・・。住んでる人間もね・・・。」

  アイザックの声「住んでる人間・・・?何、可笑しなこと言ってる
            んだよ!あ・・・誰か来たから切るぞ!!こっち
            のことは心配するな!!いいな!!」

         電話切れる。スティーブ電話をポケットへ
         仕舞う。スティーブ、スポットに浮かび上が
         り歌う。

         “如何したんだろう・・・
         美しい空の下で美しい空気に
         心まで洗われたのか・・・
         傷付いた腕の痛みも忘れさせる・・・
         あの優しい指使いが
         忘れられない・・・
         如何したんだろう・・・
         美しい村で出会った美しい者に
         心まで奪われてしまったのか・・・
         今までただ我武者羅に生きてきた
         恋愛すらゲームと同じ
         損得なしには進めない
         そう考えてきた 
         それに納得してきた・・・
         それは間違いだったのか・・・
         如何したんだろう・・・
         何かが心の中で変わりゆく・・・”

         フェード・アウト。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         紗幕開く。と、アナベルの家の前。
         小鳥の囀りが、遠くに聞こえる。
         下手より籠に野菜を入れて持ったアナベル、
         アヴェリーと話しながら登場。

  アヴェリー「ローラ小母さんに聞いたんだ・・・。君の所へ、見ず
         知らずの男が滞在してるって・・・。」
  アナベル「見ず知らずには違いないけど、とても紳士な方よ。何
        も心配いらないわ、アヴェリー。」
  アヴェリー「でも、如何して君ん家へ・・・?」
  アナベル「キティが怪我してたその人を、偶然見かけて家へお
        連れしたの。」
  アヴェリー「僕は心配だな・・・。いくら紳士な奴でも、若い姉妹だ
         けの所へ・・・。」
  アナベル「アヴェリー、余計なお喋りしてないで、早くローラ小母
        さんの所へ薬草を届けなけりゃ、またどやされるわよ。
        」
  アヴェリー「分かってるよ。けど、知ってるだろ?僕は君を愛して
         いるんだって・・・。一体何時になったら、プロポーズ
         を受けてもらえるのか、気になるだけさ。」
  アナベル「・・・だから言ってるでしょ・・・。私はまだ結婚をするつ
        もりはありません・・・。私のことは忘れて、もっと他に、
        いい人を見つけて下さい・・・。」
  アヴェリー「君以外になんて、考えられないよ・・・!」
  アナベル「・・・ごめんなさい・・・。」
  アヴェリー「・・・君を困らせるつもりはないんだ・・・。僕の方こそ
         ごめんよ・・・。けど、君を愛しているって気持ちは、
         本当なんだ・・・。」
  アナベル「・・・分かってる・・・。」
  アヴェリー「じゃあ行くよ・・・。」
  アナベル「さよなら・・・。」

         アヴェリー、下手へ去る。
         アナベル、その方を見ている。音楽流れ、
         アナベル歌う。
         途中、下手よりスティーブ、片手に薪を提げて
         登場。アナベルを認めると、側にあった岩の上
         へ腰を下ろし、微笑ましく見詰めている。

         “暖かな気持ちが優しく私を包んでいく・・・
         それは守られた確かなもの・・・?
         爽やかな微風が頬をそっと過ぎるのは・・・
         偶然見つけた幸せの予感・・・
         木々の緑が目に染みて
         涙が訳もなく溢れそうなのは
         心で感じた幸福の為・・・?
         待つ者を見つけた・・・
         今 そんな気がするの・・・
         それは遠い昔から憧れ夢見ていたもの・・・
         確かな確信は持たなくとも
         心の何処かで
         何時も願い思い描いていたもの・・・
         森に降り注ぐ光の雨が
         キラキラ輝く朝露のごとく・・・
         小鳥の囀りが
         私に少しの勇気をくれる・・・
         それは新たに誓った
         未来への希望の通り道・・・”

         アナベル、遠くを見遣る。

  スティーブ「(微笑んで。)ただいま。(立ち上がる。)」
  アナベル「(振り返って、スティーブを認める、驚いたように。)ス
        ティーブ・・・。おかえりなさい!(恥ずかしそうに。)やだ
        ・・・何時帰って来たの・・・?聞いてた・・・?」
  スティーブ「綺麗な歌声だな・・・って、うっとり聞き惚れてたんだ
         よ。」
  アナベル「・・・冗談ばっかり・・・。」
  スティーブ「本当さ・・・。(薪を見て。)何処へ置こうか?」
  アナベル「ありがとう!重かったでしょう?(スティーブに駆け寄
        り、薪を取る。)後は私が・・・(重そうに。)あなたは中
        で、お茶でも飲んで、休憩してて下さいな・・・。」
  スティーブ「(微笑んで、アナベルから薪を取る。)貸してごらん。
         片腕でも、君よりずっと力はあると思うよ。」
  アナベル「ごめんなさい・・・。」
  スティーブ「何処へ置く?」
  アナベル「(ある方を指して。)そこの角にでも、置いといて頂け
        ますか?」
  スティーブ「OK!(言われた所へ薪を持って行く。)」
  アナベル「ありがとう・・・。あなたが来てから、力仕事は全てあ
        なた任せで申し訳なくって・・・。」
  スティーブ「タダで置いてもらって、食事までさせてもらってる・・・
         。おまけに主治医までついて、傷の手当てまでして
         もらってるんだ。力仕事くらい、何てことないさ。こう
         見えても、学生の頃はアメフト部のキャプテンをやっ
         てて、腕力には自信がるんだ。」
  アナベル「まぁ・・・。でも主治医は大袈裟よ・・・。」
  スティーブ「大袈裟なものか。君は名医だよ。(微笑む。)それに
         どんどん用事を言いつけてくれた方が、美味しい食
         事を遠慮なく、腹一杯ご馳走になれるって寸法さ。(
         笑う。)」 
  アナベル「スティーブったら・・・。(クスクス笑う。)」
  スティーブ「それにしても、そんなに薬草の勉強をして、将来は
         店でも持つつもりなのかい?」
  アナベル「(首を振る。)私なんか・・・」
  スティーブ「アナベル・・・、そうやって“私なんか”・・・と、最初か
         ら諦めるのはよくないよ。謙虚なのもいいが、時には
         勇気を持つことも必要なんだ。」
  アナベル「・・・勇気・・・」
  スティーブ「そう、勇気だ。君の夢はなんだい・・・?」
  アナベル「・・・夢?」
  スティーブ「ずっとこんな田舎で・・・いや、確かにここは、命の洗
         濯をするには素晴らしい環境だと思うが・・・。もっと、
         都会に出て何か大きいことをやろう・・・なんて思った
         ことは・・・?」
  アナベル「・・・ありません・・・。私は生れてからずっと、ここで暮
        らしてきたの・・・。このキャベンディッシの中が私の世
        界・・・。あなたから見れば、本当にちっぽけな世界で
        しょうね・・・。あなたの言う勇気がなくて、飛び出したく
        ても飛び出せなかったのかも知れない・・・。けど・・・
        キティがいて・・・父や母の思い出の一杯詰まったこの
        村は、私にはどんな場所にも代え難い、心の平穏を与
        えてくれる場所なんです・・・。」
  スティーブ「・・・そうか・・・そんな場所の持てる君は幸せなんだ
         ね・・・。僕にも、そんな場所があれば・・・と思うよ・・・。
         」
  アナベル「・・・あなたの家は・・・?」
  スティーブ「僕は学生の頃から、ずっと一人暮らしさ・・・。生家に
         父母は健在だがね・・・。僕にとって、必ずしも居心地
         のいい場所ではなかったんだ・・・。一人で生活する
         には、十分過ぎる程の援助を宛がわれ・・・だが、心
         は何時も独りぼっちだったような気がするよ・・・。」
  アナベル「そう・・・。あなたが如何言う暮らしをしてきたのか、私
        には分からないけれど・・・。ここにいる間は、今まで得
        られなかったものを、感じてもらえたら嬉しいわ・・・。」
  スティーブ「・・・(微笑んで。)ありがとう、アナベル・・・。」

         アナベルを優しく見詰めるスティーブ。
         恥ずかしそうに下を向くアナベル。
         その時、キティのアナベルを呼ぶ声が
         聞こえる。

  キティの声「お姉さん!!ちょっと手伝って!!」

  アナベル「(声の方を見て。)直ぐ行くわ!!(スティーブに微笑
        んで。)私は、キティが素敵なパートナーを見つけて、
        私のことを必要ないと思うようになった時・・・(思いを
        馳せ、言葉が止まる。)」
  スティーブ「・・・思うようになった時・・・?」
  アナベル「・・・なんでもない・・・!ゆっくりしてて下さいね!」

         アナベル上手へ走り去る。スティーブ、
         その方を見詰めている。
         音楽で紗幕閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         紗幕前。
         下手より、手に持っていた上着に素早く
         腕を通しながら、足早にクラウニー登場。
         続いて、クラウニーを追い掛けるように、
         シャロン登場。

  シャロン「待って!!待ってったら、クラウニー!!」
  クラウニー「俺は今、忙しいんだ。後にしてくれないか。」
  シャロン「ねえ、スティーブの居所が分かったんでしょ!?今か
       らそこへ行くんでしょ!?」
  クラウニー「(立ち止まって、溜め息を吐く。)全く・・・。相変わら
         ず君は情報が早いな・・・。」
  シャロン「やっぱり!!大体私に黙って、スティーブの所へ会い
       に行くなんて出来っこないのよ!!さあ、早く彼に会い
       に行きましょう!!(上手方へスタスタと。)」
  スティーブ「おい、シャロン!!あいつの居所は飽く迄、極秘な
        んだ!そんな所へ町の情報局のような君を、連れて
        行けると思うのか?」
  シャロン「(立ち止まって振り返る。)大丈夫!!私だって馬鹿じ
       ゃないのよ!言っていいことと悪いことの区別くらいつ
       くわよ!」   
  クラウニー「・・・本当かね・・・?(疑わしそうに。)」
  シャロン「さ!!スティーブは何処にいるの!?早く行きましょう
       !!」

         シャロン、さっさと上手へ去る。クラウニー、
         呆れたように溜め息を吐いて、シャロンに
         続いて去る。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

         音楽で紗幕開く。と、森の風景。
         スティーブ、アナベル、キティ、話しながら
         上手奥よりゆっくり登場。

  スティーブ「本当にここは綺麗な所だね。幼い頃、無理矢理母に
        読んで聞かされた“小説”が、その当時は興味がなく、
        熱心に読んでくれた母の言葉を、上の空で聞いていた
        んだ・・・。だけど、好きになれなかったその物語の、風
        景描写だけは、何故か今も鮮明に覚えている・・・。そ
        れが正に、今自分が立っているこの場所なんだ・・・。」
  アナベル「気に入った・・・?」
  スティーブ「ああ・・・勿論・・・。」
  キティ「見て!お花がこんなに咲いてるわ!!少し摘んで帰っ
      て、部屋に飾りましょうよ!!」
  アナベル「そうね。(微笑む。)」

         キティ、2人から一寸離れた所へ、後ろ向き
         に座り込んで花を摘んでいるように。

  スティーブ「そうだ、アナベル・・・。この間言い掛けた、キティが
         君を必要ないと思うようになった時・・・その後に続く
         言葉は・・・?」
  
         アナベル、一時考えるようにキティを見詰める。

  アナベル「それは・・・」
  スティーブ「君があの後、何を言おうとしたのか気になってね・・・
         。」
  アナベル「・・・やりたいことがあるの・・・。」
  スティーブ「・・・やりたいこと?」
  アナベル「(微笑んで頷く。)」
  スティーブ「それは今は出来ないことなのかい?」
  アナベル「今は・・・キティのことを一番に考えたいの・・・。」
  スティーブ「例えば、今直ぐに君が愛する人を見つけて、結婚し
         たとしても、キティは屹度、そのことを心底喜んで、祝
         福してくれると思うけど・・・。」
  アナベル「・・・分かってる・・・。でも私は・・・キティの幸せが私の
        幸せだと思ってる・・・。」
  スティーブ「アナベル・・・。君がキティの幸せを願う気持ちはよく
         分かる。けど、君は君だよ・・・。キティの母親じゃない
         ・・・。それに今まで十分、その役目は果たしてきたん
         じゃないかな?この間・・・今の言葉を飲み込んだ君
         の瞳が、一瞬遠くを見たような気がしたんだ・・・。何
         か自分だけの心の中に、秘めた誓いのようなものを
         感じて・・・。それで君が何の思いに縛られているの
         か聞きたかったんだ・・・。」
  アナベル「それは誤解よ、スティーブ・・・。私は何にも縛られてな
        んかいないわ・・・。これは私の心からの願いよ・・・。」
  スティーブ「アナベル・・・。君がキティの幸せが自分の幸せだと
         思っているように、キティもまた、君の幸せは自分の
         幸せだと思っているに違いないだろう・・・。だから、お
         互いが其々幸せにならなければいけないんだ・・・。」

         スティーブ、アナベルに訴えるように、アナベル
         の手を取り歌う。
         途中、キティ気付いて振り返り、嬉しそうに
         微笑み、一時2人を見ている。
         (キティ、下手へ去る。)

         “幸せを見つけよう・・・
         誰の為でもない自分の為に・・・
         幸せになりたくはないのか?
         自分自身がより輝けるように・・・
         幸せは自分の手で掴むもの・・・
         その気になれば
         いつでも幸せはこの手の中に・・・
         自分が幸せになって初めて
         相手の幸せを思い願えるもの・・・
         幸せを見つけよう
         誰の為でもない自分の為に・・・”











    ――――― “スティーブ・ドガー”3へつづく ―――――










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    (どら余談^^;)

    私が学生の頃、私の母が本の虫で、よく昔読んで面白かっ
    たと聞かされた本を、私も読んでみたりしてた影響で、昔な
    がらの作品の言葉使いがとても好きで、この頃の私の作品
    では、古めかしい言葉表現を好んで使用しているが、よく分
    かりますね・・・^_^;

 

   
       (おまけフォト^^;)

       


      いかにも病院のベッドの上です・・・的な写真で失礼
      します^^;

      春公演作品の主人公“ジュリー”ちゃんを、病院で
      付き添い中に作ってみました♥
      ・・・が、写真を撮る場所がなく、途中経過のものが
      全くありません(>_<)せめて仕上がり状態だけでも
      見て頂こうと、子どもを横に寄らせ、ベッドの上で一枚
      ・・・撮影してみました^^;
      分かり難いかも知れませんが、結構手の込んだ仕上
      がりになっています(^^)



              

       無茶苦茶画像が良くないので、小さ~くした写真
       をご覧下さい<(_ _)>
       これは、ジュリーちゃんをベッド横の椅子に座らせ、
       撮った一枚です^_^;
        




















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