りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“イルカのキューイ” ―全7場―

2013年03月20日 19時45分30秒 | 未発表脚本



   〈 主な登場人物 〉

   キューイ   ・・・   海の国に住むイルカ。アリアの友達。

   アリア   ・・・   海の国のお姫様。

   ルディ   ・・・   人間の島に住む少年。アリアの友達。

   村長   ・・・   人間の島の村長。

   海の国の王様。

   ウオレット   ・・・   アリアの爺や。

   ドーン   ・・・   海の国に住む魔法使いの老婆。

   島の婆さん   ・・・   島に住む老婆。

   ラダン   ・・・   島の住人。


   その他。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


         音楽流れ、幕が開く。

    ――――― 第 1 場 ―――――

         舞台は海の中。
         海の国のお姫様(アリア)髪をとかして
         出掛ける準備をしている。
         アリア、歌う。

         “さぁ 髪をとかしましょ
         さぁ 何着ましょ
         今日も行くわ海の外
         これまで遠慮がちに
         コソッと覗いた世界だけれど
         今は違うわ友達がいる
         お父様の許可もおりた
         温かく迎え入れてくれるわ
         今まで知り得なかった場所”

  アリア「さぁ、仕度が出来た!早くルディのところへ行きましょう
      !今日は年に一度の収穫祭だって言ってたわ。楽しみね
      ぇ・・・人間の人達のお祭りって、どんなのかしら!初めて
      よ、私!」

         そこへ上手よりイルカのキューイ、登場。

  キューイ「アリア!キューイ・・・」
  アリア「キューイ!私どう?」
  キューイ「え・・・?」
  アリア「可愛く見える?」
  キューイ「うん・・・どうして?キューイ・・・」
  アリア「私、今日初めて人間のお祭りに行くの!」
  キューイ「人間の・・・?キューイ・・・」
  アリア「そうよ!ルディが誘ってくれたの!」
  キューイ「・・・ルディが・・・?」
  アリア「ああ、楽しみだわ!そうだキューイ、私に何か用事?」
  キューイ「え・・・?あ・・・ううん・・・別に・・・キューイ・・・」
  アリア「そう?じゃあ私、行くわね!!」

         アリア、上手へ走り去る。

  キューイ「アリア・・・!僕・・・アリアと遊ぼうと・・・キューイ・・・」
  
         キューイ、歌う。

         “僕は海に住むもの・・・
         陸には上がれない・・・キューイ・・・
         青い空 心地良い風
         温かい砂地の感触
         そんなものとは無縁の生き物・・・
         僕はずっとこの場所で
         友達が帰るのをただ待つよ・・・
         僕には海から出る術がない
         だから君の背中を見送り続けるよ・・・
         僕のところへ戻るまで・・・キューイ・・・”

         その時、ウオレットの声が聞こえる。

  ウオレットの声「姫様ー!!姫様ー!!」

         そこへ下手より、ウオレット登場。

  ウオレット「姫様ー!!(キューイを認める。)あ、キューイ!姫
        様を見なかったか?」
  キューイ「ウオレットさん・・・アリアなら、今ルディのところへ行っ
       たよ・・・キューイ・・・」
  ウオレット「何?また姫様は人間の島へ遊びに行かれたのか?
        」
  キューイ「うん・・・キューイ・・・」
  ウオレット「全く・・・最近の姫様ときたら、いくら王様が人間と付
        き合うことを許されたからと言って、毎日毎日、朝から
        晩まで・・・」

         ウオレット、歌う。

         “生まれてから今日まで
         ずっとお側に仕えてきたが・・・”

      魚達(コーラス)“いたずら姫様
                おてんば姫様”

         “だが近頃 目に余る
         その行動の数々・・・”

      魚達(コーラス)“いたずら姫様
                おてんば姫様”

         “はてさて困った
         その内エライことにならぬがいいが・・・”

  ウオレット「はぁ・・・」
  
         ウオレット、下手方へ行きかける。

  キューイ「ウオレットさん!!キューイ・・・」
  ウオレット「どうした、キューイ?」
  キューイ「あの・・・ずっと前・・・海流の先の洞窟に・・・魔法使い
        のお婆さん魚が住んでるって、言ってなかった・・・?
        キューイ・・・」
  ウオレット「魔法使い・・・おお・・・ドーン婆さんのことか・・・?」
  キューイ「・・・ドーン婆さん・・・?」
  ウオレット「今はその洞窟で、占いをして暮らしておるようじゃが
        ・・・」
  キューイ「占い・・・」
  ウオレット「そうじゃ。だが、あの婆さんには近寄らん方がいいぞ
        。」
  キューイ「・・・何故・・・?キューイ・・・」
  ウオレット「あの婆さんは昔、ゴーザと共に悪いことをして、王様
        にこの海の城を追い出された、年寄り魚じゃ・・・。その
        占いにしても、あまりいい評判は聞かんからな・・・。な
        んでも願いを叶えてやるとかなんとか言って、海の魚
        を集めては何やら良からぬことを、企んでおるようじゃ
        ・・・」     
  キューイ「そうなんだ・・・ありがとう、ウオレットさん!!キューイ
        !!」

         キューイ、上手へ去る。

  ウオレット「あ・・・これ、キューイ!!急にどうしたんじゃ・・・ドー
        ンのことを聞いてくるなんて・・・。」

         紗幕、閉まる。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         紗幕前。
         音楽流れ、上手より島に住む人間の
         少年(ルディ)、下手よりアリア登場。

  アリア「ルディー!!」
  ルディ「あ、アリア!!早く!!早く!!祭が始まっちゃうよ!!
      」
  アリア「ええ!!」

         アリア、ルディ歌う。

         “今日は年に一度のお祭りだ
         誰もが楽しみ待ちに待った日だ
         さぁ出かけよう皆で手をつなぎ
         足踏み鳴らして踊り明かそう
         祭の日は長いんだ
         だから存分に楽しむんだ
         今日だけは!!”

  ルディ「さぁ、行こう!!」
  アリア「うん!!」

         ルディ、アリア、手をつないで上手へ
         走り去る。

    ――――― 第 2 場 ――――― B

         紗幕開く。と、島の祭会場。
         村人達、楽し気に歌い踊る。

     村人達“祭だ祭だ楽しもう!!
          誰でもおいで今日だけは!!
          仕事も休みだ楽しもう!!
          年に一度の楽しい日!!”

         そこへ上手よりルディ、アリア、嬉しそうに
         走り登場。

  アリア「わぁーっ!!皆、楽しそう!!」
  ルディ「うん!!」

         2人、手拍子して皆の様子を楽しそうに
         見ている。
         その時、踊りの輪から外れたルディの姉
         (ラナ)、村長、2人の側へ。

  ラナ「ルディ!」
  ルディ「姉さん!」
  アリア「こんにちは!」
  ラナ「アリア!いらっしゃい!」
  村長「おお、アリア。よく来たな。」
  アリア「村長さん!」
  村長「さぁ、今日は年に一度の祭だ。こうやって皆、一日中浮か
     れ、騒いで過ごすんじゃよ。アリアもたっぷり楽しんでおい
     で。」
  アリア「ありがとうございます、村長さん!」
  ラナ「ルディ!今日はちゃんと水筒を持って来たでしょうね?」
  ルディ「姉さん、勿論だよ!」
  ラナ「前のように、アリアの体に蓄えてある水が、なくなると大変
     よ。」
  ルディ「分かってるさ!」
  アリア「ルディ・・・」
  ルディ「さぁ、アリア!!踊ろう!!」
  アリア「ええ!!」

         ルディ、アリアの手を取り、踊りの輪に
         加わる。
         その時、上手より村人(ラダン)、慌てた
         様子で走り登場。

  ラダン「村長ー!!村長ー!!あ・・・村長!!」
  村長「ラダン、どうした?」
  ラダン「大変なんだ・・・!!」
  村長「大変・・・?」
  ラナ「ラダン、どうしたの?そんなに慌てて・・・」
  ラダン「あ・・・ラナ・・・いや・・・何・・・皆には関係ないことなんだ
      。すまない、驚かせて・・・」
  ラナ「そう・・・」
  ラダン「ああ・・・(作り笑いする。村長をチラッと見て。)村長・・・」
  村長「さぁ、ラナも楽しんで来なさい。」
  ラナ「はい、村長さん!」

         ラナ、踊りの輪に入る。
         ラダン、一寸下手端に寄る。村長、ラダンに
         続いて端へ寄る。
         (踊りの音楽小さくなる。人々、変わらず
         楽しそうに踊っている。)

  村長「どうしたんだ・・・ラダン・・・?」
  ラダン「村長・・・それが海が荒れて・・・嵐が来そうなんだ・・・」
  村長「嵐・・・?島の婆さんの話しじゃ、ここ暫くは天気の崩れは
     なく、穏やかな日々が続くと言っていたが・・・?」
  ラダン「そうなんだが・・・実は・・・」
  村長「どうした・・・?」
  ラダン「南の丘の祠の鎖が・・・」
  村長「鎖がどうしたんだ・・・!?」
  ラダン「・・・誰かに切られた・・・」
  村長「何だと!?あの海からの悪者を寄せ付けない為に、島の
     婆さんが島に張った結界の鎖がか・・・!?」
  ラダン「(頷く。)」
  村長「何てことだ・・・。まぁ・・・今は海の国の者と我々人間は、
     また昔のように仲良く共存するようになったのだから・・・海
     からの悪者と言っても、そんな者はおらんとは思うが・・・」
  ラダン「けど・・・ゴーザのこともあったし・・・」
  村長「そうだな・・・まぁ少しの間、用心して海に見張りの者を立
     ててくれ。(舞台の方を見て。)今日のところは年に一度の
     祭で、島民達も浮かれておる・・・。そっとして、存分に楽し
     ませてやることにしよう。」
  ラダン「はい・・・」

         村長、ラダン、下手へ去る。
         入れ代わるように一人の少年(キューイ)、
         楽しそうな人々の様子を見ながら、ゆっくり
         登場。
         アリア残して、いつの間にか踊っていた
         人々、上手下手へ其々去る。
         キューイ、アリアを見詰める。
         アリア、自分を見詰めるキューイに気付き、
         近寄る。

  アリア「こんにちは・・・私はアリア!あなた・・・誰?この島の人
      ・・・?どこかで・・・会った?」
  キューイ「う・・・うん・・・ね・・・ねぇ、アリア・・・!僕・・・キ・・・」
  アリア「・・・何?」

         その時、下手よりルディの声が聞こえる。

  ルディの声「アリアー!!」

  アリア「ルディ・・・?」

         そこへ下手よりルディ、走り登場。
         (ルディの登場と共に、キューイ消える
         ように去る。)

  ルディ「アリアー!どうしたんだい?」
  アリア「あ、ルディ!この子、島の・・・(振り返る。)」
  ルディ「この子・・・?」
  アリア「・・・あら・・・今、ここに男の子が・・・変ね・・・」
  ルディ「男の子って・・・」
  アリア「今までここにいたのよ!この島で見かけたことがない子
      だったわ・・・」
  ルディ「ふうん・・・誰だろう・・・。それよりアリア!向こうで食事が
      始まるよ!」
  アリア「本当?」
  ルディ「うん!」
  アリア「私、人間の食べ物って、どんなのか凄く興味があったの
      !(笑う。)」
  ルディ「早く行こう!」
  アリア「ええ!」

         アリア、ルディ下手へ走り去る。
         入れ代わるように上手よりキューイ、
         下手方を見詰めながら、ゆっくり登場。

  キューイ「アリア・・・」

         音楽流れ、キューイ歌う。(紗幕閉まる。)

         “僕は・・・海に住む者・・・
         陸には上がれない・・・
         だけど・・・どうしても僕は・・・
         君の側へ来たかったんだ・・・
         だから・・・”

  キューイ「アリア・・・キューイ・・・」

         暗転。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         紗幕開く。と、海の中。
         (魔法使い“ドーン”の住む洞窟。)
         音楽流れ、ドーン歌う。

         “ああ何故こんな場所にいる
         ああ何故私は動けない
         誰も悪くはない筈さ
         本能のまま行動しただけ
         誰も私を責められはしない
         なのにあいつは偉そうに
         私の自由を奪いやがった
         そんな馬鹿な話しはないさ
         いつか必ず仕返ししてやる
         この手でおまえの
         息の根止めてやる!!”

  ドーン「ああ、本当に忌々しい・・・!!海の王め・・・ゴーザと一
      緒に私まで海の城を追放するなんて!!おまけにこんな
      洞穴から出るなだなんて!!一体私が何をしたって言う
      んだ!!本当に・・・」

         そこへ一匹の召使クラゲ、上手より
         登場。

  クラゲ「ドーン様・・・」
  ドーン「なんだ?」
  クラゲ「お客様です。」
  ドーン「客?魚か?」
  クラゲ「いえ・・・イルカです。」
  ドーン「イルカ・・・?イルカとはまた珍しい・・・。まぁいい、呼んで
      来い・・・。」
  クラゲ「はい。」

         召使クラゲ、一旦上手へ去る。

  ドーン「(大きな団扇を取り出し。)いよいよ、この魚のヒレをもぎ
      取って作ったヒレ団扇も、今来たイルカの一ヒレを貼り付
      ければ、いよいよ完成だ。(笑う。)このヒレ団扇が出来上
      がれば、大風を起こし海を嵐とし、海の世界を海の城共
      々目茶苦茶に壊してやる!!(笑う。)」











    ――――― “イルカのキューイ”2へつづく ―――――






































“イルカのキューイ” ―全7場― 2

2013年03月20日 19時44分56秒 | 未発表脚本



         そこへキューイ、幾分不安気に、回りを
         見回しながらゆっくり登場。
         (ドーン、中央テーブルにつく。)

  ドーン「・・・何か用か・・・?」
  キューイ「あの・・・ドーン婆さんですか・・・?」
  ドーン「いかにも・・・私はドーンだが・・・」
  キューイ「僕はイルカのキューイ・・・あの・・・ドーン婆さんは、僕
       達、海の国の者の願いを何でも叶えてくれる、魔法使い
       なんでしょ・・・?キューイ・・・」
  ドーン「確かに・・・それが私の生業ではあるが・・・それが何か
      ・・・?」
  キューイ「僕・・・お婆さんにお願いがあって・・・!!キューイ・・・
        」
  ドーン「願い・・・?タダでは聞かんぞ。それでもよければ、おまえ
      は私の客だ。何でも願いを言うてみるがいい。」
  キューイ「あの・・・僕・・・お金は持ってなくて・・・キューイ・・・」
  ドーン「金などいらんわ。」
  キューイ「え・・・?」
  ドーン「金などいらんと言っておるんじゃ。」
  キューイ「じゃあ何を・・・キューイ・・・」
  ドーン「・・・ヒレじゃ・・・」
  キューイ「・・・ヒレ・・・?」
  ドーン「そうヒレじゃ・・・」
  キューイ「ヒレって・・・キューイ・・・」
  ドーン「おまえのその両胸についておるヒレ・・・そのヒレを、願い
      を叶える為のお代として、私が貰い受ける。」
  キューイ「ヒレを・・・(胸ビレを見る。)このヒレがなくなったら僕
       ・・・キューイ・・・」
  ドーン「なぁに、ヒレと言っても片方だけだ。片方のヒレがなくな
      ったとしても、おまえにはもう片方のヒレが残っておるでは
      ないか・・・。なら、海の国で生活するのに、何の不自由も
      ないのじゃあないか・・・?」
  キューイ「・・・でも・・・キューイ・・・」
  ドーン「先ずは“願い”とやらを、試しに言ってみるがいい・・・」
  キューイ「僕・・・僕・・・人間の島へ行きたいんだ・・・キューイ・・・
        」
  ドーン「人間の島・・・?」
  キューイ「うん・・・僕・・・どうしても人間になりたいんだ・・・キュー
       イ・・・人間になって・・・人間の島へ行きたいんだ・・・!!
       キューイ・・・」
  ドーン「ほう・・・おまえの願いは珍しい願いだな・・・。おまえはそ
      の姿が気に入らんのか?」
  キューイ「違うんだ、キューイ!僕はイルカの姿が嫌なんじゃな
       いんだ・・・僕は・・・僕は陸へ上がりたいだけなんだ・・・!
       キューイ・・・」
  ドーン「(ニヤリと微笑む。)ならば・・・おまえの願い、叶えてやろ
      う・・・」
  キューイ「・・・え・・・?」
  
         ドーン、後方棚より一つの小瓶を取り出し、
         キューイの前へ差し出す。

  キューイ「これは・・・キューイ・・・」
  ドーン「この中の薬を飲めば、おまえの望む人間に忽ちなれる
      ・・・。」
  キューイ「人間に・・・」
  ドーン「ああ・・・。呉呉も言っといてやる・・・一口だけ飲むんだぞ
      ・・・。いっぺんに全部飲み干すと、二度とイルカの姿には
      戻れなくなる・・・。私の作る薬は、どれもこれも強力だか
      らな・・・。(笑う。)」
  キューイ「・・・そうなんだ・・・」
  ドーン「だが・・・一口だけ飲めば、好きな時にだけ人間の姿にな
      れるのだ・・・。」
  キューイ「・・・けど・・・この薬を貰えば・・・僕のヒレ・・・なくなるん
        だよね・・・キューイ・・・」
  ドーン「本来ならば、どんな願いも片ヒレと交換なんだが・・・特
      別におまえだけ・・・違うものを代金としてやってもいいぞ
      ・・・」
  キューイ「違うもの・・・?」
  ドーン「ああ・・・。」
  キューイ「本当に・・・?」
  ドーン「(頷く。)」
  キューイ「それは何・・・?僕が用意出来るものなの・・・?キュー
        イ・・・」
  ドーン「ものではない・・・」
  キューイ「・・・え・・・」
  ドーン「なぁに、難しいことではない・・・。人間となり、島へ上がっ
      た時に・・・ちょっとしたことをしてくれればいいんだ・・・」
  キューイ「ちょっとしたことって・・・キューイ・・・」
  ドーン「ああ・・・ちょっとしたことだ・・・」
  キューイ「・・・それは・・・どんなこと・・・?」
  ドーン「島の南方の丘の上に・・・小さな祠がある・・・」
  キューイ「祠・・・?」
  ドーン「そうだ・・・。その祠に巻いてある鎖を、この・・・(後方棚
      からハサミを取り、キューイの方へ差し出す。)ハサミを使
      って切ってくるのだ・・・」
  キューイ「・・・(ハサミを受け取る。)このハサミで・・・キューイ・・・
        」        
  ドーン「ああ・・・。そうすれば、おまえはこの薬を使って、いくらで
      も好きな時に人間の姿となり、島へ上がることができるぞ
      。」
  キューイ「・・・分かった・・・分かったよ、キューイ!!僕、お婆さ
       んの言う通りにする・・・!!」
  ドーン「それでは直ぐにこの薬を一口飲み、人間の島へ行け・・・
      。丁度今日は年に一度の島の祭の日だ。島民達は騒ぎ
      浮かれて、容易に祠に近寄ることが出来るであろう・・・。」
  キューイ「うん・・・」
  ドーン「それと・・・よいか?このことは誰にも・・・決して誰にも言
      うではないぞ。特に・・・海の王にはな・・・」
  キューイ「・・・どうして・・・?」
  ドーン「おまえの望みが叶ったのだから、それでいいではないか
      !!誰に言い触らすことがあろう!!」
  キューイ「・・・お婆さん・・・う・・・うん・・・」

         フェード・アウト。

  ドーンの声「(笑う。)結界さえとければ・・・海の国だけでなく、人
         間の島諸共この手で始末してやる!!(笑う。)」

    ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。
         下手よりウオレット、上手より王、登場。

  王「ウオレット!アリアは帰って来たか?」
  ウオレット「王様・・・それがまだ・・・」
  王「いくら人間と共存することになったからと言って、アリアはこ
    のところ海の上へ行き過ぎる感があるようだ。飽く迄アリアに
    は海の国の者だと言う自覚を持たせないと駄目だぞ、ウオレ
    ット。」
  ウオレット「はぁ・・・」

         音楽流れ、王、ウオレット歌う。

     ウオレット“少し前までこのじいを
            甘え頼りにして来たのに
            いつの間にやら海の外
            興味が尽きぬお姫様”

         王“甘やかさずにきた筈だ
           夢中になると見境なく
           走り出す呆れた娘
           程々に・・・
           いつも言い続けて来たことだ”

  王「しかし・・・今回は・・・」

         王“我々は海の者
           陸で暮らす術はない
           油断をすれば飲まれるぞ
           水がなければ命はない”

  ウオレット「命が・・・」

         その時、下手より家臣魚、登場。

  家臣魚「王様!」
  王「どうした?」
  家臣魚「何やら海が荒れてきたようです!」
  王「・・・何?」

         頭を下げ、家臣魚下手へ去る。

  ウオレット「王様・・・海が荒れてきたとは・・・嵐でも来るんでしょ
        うか・・・」
  王「・・・うむ・・・今朝は嵐など来る気配もない、穏やかな空模様
    であったが・・・。まぁ、だが用心に越したことはないな・・・。ウ
    オレット、人間の島へアリアを迎えに行ってくれ。海が荒れる
    前に・・・」
  ウオレット「分かりました。」

         ウオレット、下手へ去る。

  王「しかしこの時期、急に嵐の様相だなどと・・・何か嫌な予感が
    するのは・・・取り越し苦労であってくれれば良いのだが・・・。
    」

         王、考えているように上手へ去る。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         カーテン開く。と、人間の島。
         俄かに風の音が強く、辺りは薄暗く嵐の前
         のよう。
         (南の丘に立つ、祠の前。)
         村長とラダン、切れた鎖を手に話している。

  村長「なんてことだ・・・こんなに太く頑丈な鎖が・・・いとも簡単に
     切断されただなどと・・・。一体誰が・・・」
  ラダン「(鎖を見て。)これはちょっとやそっとじゃ切れない鎖なん
      ですよね・・・村長・・・」
  村長「ああ・・・。結界の祈りが入る、神の鎖だからな・・・。普通
     の斧や鎌では、こんなにスッパリとは切れまい・・・」
  ラダン「一体何で切り離したんでしょう・・・」
  村長「この鎖がこんな風に切り口の綺麗な切れ方をすると言う
     のは・・・あまり考えたくはないが・・・何か人間の力以外の
     ・・・良からぬ魔力か何かがかかったものを、使って切った
     としか思えない・・・」
  ラダン「魔力のかかったもの・・・って一体・・・」
  村長「それはわしにも分からないが・・・」

         カミナリの音が聞こえてくる。(段々大きく。)

  村長「(空を見上げて。)何やらこの空の様子も気になるところだ
     からな・・・」

         その時、下手より杖をついた老婆(島の
         婆さん。)ゆっくり登場。

  老婆「村長・・・」
  村長「(老婆を認める。)おお、婆さんじゃあないか・・・」
  老婆「(ラダンが持っている鎖に気付き。)矢張り・・・」
  村長「え・・・?」
  老婆「矢張り・・・鎖が切れておったか・・・」
  ラダン「どうして分かったんだ?」
  老婆「この空と海の様子を見れば一目瞭然じゃ・・・。こんな様子
     はただ事ではないじゃろう・・・」
  ラダン「お婆さん!!この鎖、何とかならないんですか?」
  老婆「(鎖を手に取り。)こんな風に魔力で切られた鎖はもう、元
     には戻らん・・・。新しい結界の鎖とて、そう直ぐには用意は
     出来ん・・・」
  村長「どれくらいで新しい鎖は用意出来るんだ、婆さん・・・」
  老婆「魔力を封じ込める程の力を秘めた、結界の鎖を作るには
     ・・・少なくとも一ヶ月はかかるじゃろう・・・」
  ラダン「一ヶ月・・・」
  老婆「一ヶ月も待てんのじゃないか・・・?」
  村長「確かに・・・だが今は、海の国の者達と我々人間は仲良く
     ・・・」
  老婆「馬鹿者!この鎖を魔力のかかったハサミで切断したのは
     、友好的な海の者ではないに決まっておろう!!第一、こ
     の鎖は悪の心を持つ海の者を、島の中へ入れない為のも
     の・・・。最初から友好的な海の者には、何の効き目もない
     わ・・・。あのゴーザとて、洞穴から島の方へは出て来れん
     かったろう・・・?」
  ラダン「なる程・・・」
  村長「・・・では・・・一体誰が・・・」
  老婆「ゴーザ・・・」
  ラダン「え!?カニの姿に代えられた筈の島の主だったゴーザ
      が、また復活したのかい?」
  老婆「違う!人の話しを最後まで聞かんか!ゴーザではない・・・
     !ゴーザと共に、海の王に海の国を追放された、もう一人
     の海の海獣・・・ドーンじゃ・・・。」
  村長「・・・ドーン・・・?」
  老婆「その昔・・・2人は同じようにいつも一緒に悪いことばかり
     しておった為に、海の王の怒りをかい、2人共、海の国を追
     放されたんじゃ・・・。そうしてその一人・・・ゴーザは人間の
     島へとやって来て、我々を長年苦しめた島の主となり、今
     まで島に君臨しておったのじゃ。そしてもう一人・・・同じよう
     に追放されたドーンは・・・」
  ラダン「ドーンは・・・?」
  村長「どうしたのだ・・・?」
  老婆「海の外れ・・・どんな魚達も恐ろしくて寄り付かないような
     海の外れの・・・洞窟の中でひっそりと・・・暮らしておったよ
     うじゃ・・・。」
  ラダン「海の外れ・・・」
  村長「でもそのドーンが何故・・・?」
  老婆「さぁ・・・わしにもそこまではよく分からんが・・・何やら怪し
     げな魔術を会得し、魚達の願いを叶える魔法使いとして・・・
     暮らしておったようじゃが・・・あのドーンのことじゃ・・・ただ
     で魚達の願いを叶えてやっておったとも考えられん・・・。何
     か良からぬことを企んで・・・そして今こうしてこの島の結界
     の鎖を切るような真似をしでかしたんじゃろう・・・。」
  村長「良からぬこと・・・?」
  老婆「そう・・・良からぬことじゃ・・・。但し今はまだドーン自身が
     自ら動いておる訳じゃあなさそうじゃぞ・・・」
  村長「え・・・?」
  老婆「のぉ・・・そこにおる少年・・・」      ※
  ラダン「少年・・・?」

         その時、祠の後ろからハサミを手に持った
         キューイ、登場。

  キューイ「ごめんなさい!!僕・・・まさかこの鎖がそんな風にこ
        の島を守ってる鎖だなんて知らなくて・・・キューイ!!
        」
  老婆「そなたは・・・」
  キューイ「僕は海の国に住むイルカのキューイ・・・」
  村長「イルカ・・・?」
  ラダン「どう見たってイルカには見えないけど・・・」
  老婆「ドーンの薬で、人間の姿にしてもらったか・・・?」
  キューイ「うん・・・その代金の代わりに・・・この祠の鎖を切って
       こいって・・・だから僕・・・」
  老婆「代金・・・?では他の魚達からは、金を取るのか?」
  キューイ「(首を振る。)ううん・・・他の魚達からは片ヒレを・・・願
       いを叶える代金として、自分が貰い受けるんだって・・・
       そう言ってた・・・。」
  ラダン「片ヒレ・・・?」
  老婆「・・・なる程・・・分かったぞ・・・」
  村長「婆さん・・・?」
  老婆「ドーンは魚達からもぎ取ったヒレを集め、団扇を作ってお
     るんじゃ・・・。」
  キューイ「・・・団扇・・・」
  老婆「そうしてその団扇を使って大風をおこし、結界のなくなっ
     たこの島諸共、海を目茶苦茶にするつもりじゃ。」
  村長「何だって・・・!?」
  老婆「昔から、魚達のヒレには摩訶不思議な力が宿っていると
     言われておったんじゃ・・・。そのヒレの力は強大で、数が集
     まればどんなことでも出来る、計り知れない力を蓄えた・・・
     何かが出来ると・・・」
  キューイ「そうなの・・・?」
  老婆「この空の様子だと・・・その団扇はまだ未完成の筈じゃ・・・
     。先ずはこのキューイに鎖を切らせ、それから・・・。団扇が
     完成すれば手に負えん!!何とかしてその団扇をドーンの
     手から取り上げねばならんぞ!!」
  村長「だがどうやって・・・」
  老婆「一先ず、海の王と話しをせねば!!我々人間が、ドーン
     のいる海の中へ入ることは出来んのじゃから・・・。」
  キューイ「僕が・・・!!僕にもお手伝いさせて下さい!!だって
       ・・・僕がこの鎖を・・・だから!!」
  老婆「キューイ・・・うむ・・・これからしようとすることは海の中で
     のこと。そなたの力が必要不可欠じゃ。頼んだぞ。」
  キューイ「はい!!」

         音楽流れキューイ、スポットに浮かび上がり
         歌う。

         “僕が・・・責任を取らなくちゃ
         いくら・・・知らなかったことだとしても
         僕は・・・僕がしたことを
         少しだけ・・・怖いけど
         勇気を出すんだ
         僕は海の国に住む・・・
         イルカのキューイなんだ・・・”

  キューイ「アリア・・・」

         フェード・アウト。






    




   ――――― “イルカのキューイ”3へつづく ―――――












    ※ この台詞、どこかで聞き覚えがありませんか~・・・?

  

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    (どら余談^^;)

    書き終わったので、全7場となりました~(^-^)

    暫くの間、第7回公演作品書きに入りたいと思います♪
    そちらが仕上がれば、またブログ用作品と、今度は
    少し短編の小さい作品の手持ちを何本か増やしたいので、
    その作品書きも並行して出来れば・・・と、考えています♥
    その合間に編集・・・人形作りと・・・
    何だか文字にして書いてみると・・・忙しそうですね・・・
    へへへ・・・(^^;