りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

大人になったキャシー ―全5場―

2014年01月22日 23時58分16秒 | 未発表脚本




     〈 主な登場人物 〉


     キャシー  ・・・  本編の主人公。 
                  心に迷いを持つキャリアウーマン。

     ジョシュ  ・・・  キャシーの同僚。
                 キャシーに想いを寄せる。

     青年  ・・・  不思議の森に住む。
               キャシーの森のクルト。

     部長  ・・・  キャシーの森の長老。

     

     男  ・・・  キャシーの森の蜘蛛。

     花の妖精
     
     ウインド  ・・・  会社員。

     アース  ・・・  会社員。    


     その他



― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



         静かな音楽流れ、歌声段々大きく木霊するよう。


         コーラス“ここは不思議な森
               心に迷いがある者が
               自然と導かれし
               あなたの森”


              (幕が上がる。)


    ――――― 第 1 場 ――――― A

         舞台、フェード・インする。と、森の様子。
         中央、切り株に寄りかかるように、一人の
         女性(キャシー)眠っている。
 
  声(エコー)「キャシー・・・キャシー・・・」

  キャシー「う・・・ん・・・」

  声(エコー)「早く起きなさい・・・」

  キャシー「・・・ママ・・・後5分寝かせて・・・」

  声(エコー)「早くしないと仕事に遅刻するわよ・・・」

  キャシー「・・・目が開かない・・・」

  声(キャシー)「今日は大事な会議があるんでしょ・・・」

  キャシー「う・・・ん・・・会議・・・(驚いて飛び起きる。)会議!!
        そうよ!!今日は大事な会議があるんだったわ!!
        ・・・え・・・?(呆然と回りを見回す。)ここ・・・どこ・・・?
        私・・・一体・・・ううん・・・待ってよ・・・!昨夜は今日の
        会議の準備で遅くまで残業して・・・会社を出たところ
        でメアリから電話が・・・」

  メアリの声「先輩ー!お疲れ様でーす!今から飲みに来ません
         かー!皆いるんですよ!(女性の甲高い笑い声が、
         遠くで聞こえている。メアリ、その笑い声に。)もう煩
         いなぁ!静かにしてよ!今、キャシー先輩と電話し
         てるんだから!(遠くで“キャシー?”と聞き返す男性
         の声。)」

  キャシー「・・・ジョシュ・・・」

  メアリの声「先輩、今どこにいるんですかー?先ぱー・・・(電話
         の切れた音。)」

  キャシー「そうだわ・・・あの後、何だか自棄気味に・・・裏通りに
        あった、見慣れないショットバーに入って・・・(頭を抱
        えるように。)ううん・・・その後のことを思い出さないわ
        ・・・!でも・・・(回りを見回して。)こんな森に・・・来た
        覚えは・・・」

         音楽流れ、キャシー歌う。

        “ここはどこ・・・
         私はなぜここに・・・
         見たこともない場所で
         たった一人・・・”

         そこへ上手より一人の青年、キャシーを
         認め嬉しそうに走り登場。

  青年「キャシー!」
  キャシー「・・・え?(振り返り、青年を認める。)」
  青年「(キャシーに駆け寄る。)キャシー!!久しぶりだね!!
     (キャシーの肩に手をかける。)」
  キャシー「(後退りする。)だ・・・誰よ、あなた・・・」
  青年「え?僕だよ、キャシー!!」
  キャシー「“僕だよキャシー”って言われても・・・」
  青年「僕だよ、僕!!」
  キャシー「(怪訝な面持ちで青年を見る。)」
  青年「僕・・・僕のこと・・・忘れたのかい・・・?」
  キャシー「(首を傾げる。)」
  青年「なんだ・・・僕はてっきり久しぶりに僕に会いに来てくれた
     んだと・・・(溜め息を吐く。)まぁいいや・・・。兎に角、君は
     僕の目の前にいる!それだけで十分さ!それにしてもキ
     ャシー!随分久しぶりだね!(マジマジとキャシーを見る。
     )すっかり・・・レディだ・・・」
  キャシー「ここどこ・・・?」
  青年「なんだよ、折角僕が懐かしんでるって言うのに。」
  キャシー「今日は大切な会議があるのよ!!早く帰って仕事に
        行く仕度をしなきゃ遅刻しちゃうわ!あなた、私のこと
        知ってるんなら、私がどこから来たのか分かるでしょ
        ?帰る道を教えて頂戴!」
  青年「(笑う。)なんだか昔を思い出すなぁ・・・。昔、君がここへ
     やって来た時も、そうやって僕に詰め寄って来たっけ・・・。
     でもその時も言ったけど、僕は帰り道を知ってる訳じゃな
     いんだ。勿論、君がどうやって来たのかも分からない。」
  キャシー「どう言うこと・・・?」
  青年「君は君の考えでここへ来たんだ。だから戻る時も自分の
     頭で考えて、自分の力で帰り道を探さなければならない・・・
     と言うことだよ。」
  キャシー「そんな!私だってここがどこだか全く分からないわ。
        それにこんな森に来たいだなんて、私そんなことを考
        えたこともない・・・」
  青年「少し歩こうよ。そうすれば何か分かるかも知れないよ。」
  キャシー「歩く・・・?そんな暢気に・・・私、仕事が・・・」
  青年「でも焦ったって、君の世界へ戻る方法は分からないだろ
     ?」
  キャシー「私の・・・世界・・・?」
  青年「そうさ、君の世界・・・。僕の世界へようこそ、キャシー!」

         (紗幕閉まる。)

    ――――― 第 1 場 ――――― B

         音楽流れる。

      コーラス“不思議な森
            心の森
            誰もが一度は訪れる
            心に潜む
            不思議な森”

         キャシー、歌う。

        “私の世界 あなたの世界
         どこかでつながる不思議な森
         来たいと思った訳じゃない
         目覚めれば突然現れた
         不思議な森・・・”

         青年、歌う。

        “前を向いて
         後ろを見ないで
         昔のように心のままに
         自分の道を歩こうよ
         僕はいつも
         君の横にいるから”

  キャシー「(呆然と青年を見詰める。)あなた・・・」
  青年「さぁ、キャシー!僕が案内するよ!」
  キャシー「・・・案内・・・?」
  青年「行こう!(キャシーの手を引っ張る。)」
  キャシー「あ・・・え・・・?ちょっと!」

         2人、下手へ去る。
         
    ――――― 第 2 場 ―――――

         紗幕開く。 
         上手より一人の男、ヨロヨロと登場。
         中央座り込む。

  男「あー・・・腹減ったなぁ・・・。昨日からなぁんも食うてへん・・・。
    もうフラフラや・・・。ずーっと昔にしょうもない、花の妖精とくだ
    らん約束してもうて、花の蜜しか食えんようになってもうたん
    や。それがここんとこ、雨が降らへんから、その唯一のわい
    の食料が全部枯れてしもうた・・・。あー・・・なんちゅうこっちゃ
    ・・・腹減ったでホンマ!(ゴロンと大の字に寝転がる。)」
  
         その時、下手より青年登場。続いてキャシー、
         回りを見回しながらゆっくり登場。

  キャシー「ねぇ・・・ここは・・・?」
  青年「思い出さない?」
  キャシー「ええ・・・何も・・・」
  青年「昔に来たことがあるんだよ。」
  キャシー「(蜘蛛の巣に引っ掛かる。)キャアッ!何?」
  男「やった!!(飛び起きる。)何か引っ掛かりよった!!って
    ・・・意味ないわ・・・生きてるもんは食うたらあかんねんやっ
    た・・・。」
  キャシー「もう!(蜘蛛の巣を払いながら。)蜘蛛の巣だらけなの
        ね、この森・・・」
  青年「大丈夫?」
  男「蜘蛛の巣だらけで悪かったな・・・あ・・・れ・・・?おまえ確か
    ・・・自分勝手な餓鬼やないか!」
  キャシー「自分勝手?自分勝手って私の一体どこが・・・!」
  男「なんや、もう自分のしたこと忘れてもうたんかい!エライ薄
    情なやっちゃな。そこの青い鳥のこと見殺しにしようとした・・・
    (キャシーの後ろの青年を覗き見て。)ありゃ?おまえ・・・な
    んや、人間になったんかい?」
  キャシー「え・・・?(青年を見る。)」
  青年「(ニコニコ微笑む。)」
  男「それよりなぁ、おまえ!何か食いもん持ってへんか?」
  キャシー「食べ物・・・?」
  男「ああ。この辺の花が全部枯れてしもて、わい昨日から何も
    食うてへんねん・・・」
  青年「君、ずっと昔にした花の妖精との約束、守ってたんだ。」
  男「アホ!当たり前やないか!わいも男や!男がいっぺん約束
    したことは、何があっても破らへん!!」
  青年「へぇ・・・」
  キャシー「花の・・・(何か考え込むように。)何だろう・・・何か・・・
        私・・・」
  青年「どうかしたの?」
  キャシー「あ・・・いいえ・・・」
  男「なぁ、わいがこんな腹減ってんのは、半分はおまえらのせい
    でもあるんやで!せやから何か食いもん・・・」

         その時、どこからか声が聞こえる。

  声「どうしたの?」

  男「ん?」
  キャシー「え・・・?」

         そこへ上手より、一人の女性(花の妖精)
         登場。         

  男「おお!花の妖精やあらへんか!」
  花の妖精「どうかしたの?蜘蛛さん。」
  キャシー「・・・蜘蛛・・・?」
  男「ちょっと見てえや!この枯れた花畑!!」
  花の妖精「まぁ・・・一体どうしたの?」
  男「ここんとこ、いっこも雨降らへんから、ミルミルこんな状態に
   なってもぉたんや!おまえとしょうもない約束してもぉたさかい
   、わいは花の蜜しか食え言うのにこの有様や!このままやっ
   たら、わい飢え死にしてしまうわ!」
  花の妖精「あら・・・偉かったわね、蜘蛛さん。ここに住む私の可
        愛い生き物たちに、手を出さないでくれてありがとう。」
  男「礼なんかいらんから、早よなんとかしてくれ!」
  花の妖精「そうだったわね。じゃあ、特別にこの先にある、私の
        花園へあなたをご招待するわ。」
  男「え?」
  花の妖精「そこはどんなに日照りが続いて雨が降らなくても、枯
        れない花で溢れ返っているわ。」
  男「ホンマか!?」
  花の妖精「ええ。」
  男「わぁーっ、やったーっ!!ほな早速!!(上手方へ行きかけ
    て、何かに気付いたように。)おっと!!キャシー、またな!」

         男、手を上げ上手へ走り去る。

  花の妖精「賑やかな蜘蛛さんだこと。(笑う。キャシーたちを見
        て。)こんにちは。(キャシーに気付いたように。)あら?
        あなた・・・キャシー!!キャシーじゃない!」
  キャシー「私・・・?」
  花の妖精「まぁ、どうしたの?キャシー!あんなに苦労して石を
        集めて、自分の世界へ帰って行ったのに、また戻って
        来るなんて。(笑う。)」
  キャシー「石を集めて・・・?」
  花の妖精「なぁに?今度は私の何が欲しいのかしら。」
  キャシー「私は別に何も・・・」
  青年「花の妖精、キャシーは昔のことを覚えていないんだよ。」
  花の妖精「覚えてない?」
  青年「(頷く。)」
  花の妖精「あら・・・そう、残念ね。でもあなたのことを聞きたいわ
        !見たところ、随分“大人”に成長したようだけれど・・・
        今の大人になったあなたは、何を大切に思っているの
        かしら?」
  キャシー「大切に・・・?」
  花の妖精「ええ!是非これからの参考に、教えて頂きたいわ。」
  キャシー「大切にしているものなんて・・・」
  花の妖精「あるでしょ?あるわね?あるに決まっているわ!だっ
        て昔、あんなに沢山捲くし立てて、私に教えてくれた
        あなただもの!大人になった今だって屹度ある筈よ!
        それも飛び切り素敵な、大切にしているものが!」
  キャシー「そんな・・・大切に・・・そんなものが・・・ある筈・・・ない
        ・・・」

         舞台上、キャシー以外時間が止まったよう。
         後方段上スポットに、一人の女性浮かび
         上がる。

  女性「先輩ー!そんなに働いてどうするんですかー?仕事なん
     て程ほどに頑張らないと!自分の楽しみの時間うぃ削って
     まで仕事に没頭するなんて、そんなの勿体無いですよ!」
  キャシー「・・・でも・・・」
  女性「先輩はお金が大切なんですよねー。」
  キャシー「違う・・・・違うわ・・・」
  女性「私、今度のバレンタインにジョシュに告白しようと思うんで
     す!あ、知ってますよ、ジョシュがキャシー先輩に好意を寄
     ていることは。でも先輩、ジョシュに返事してないですよね。
     だから先輩は恋より仕事が大切なのかなって!私、ジョシ
     ュに告白してもいいですよねー、先輩!」

         後方段上上手スポット、フェード・アウト。
         入れ代わるように後方段上下手スポットに
         一人の男性、浮かび上がる。












 ――――― “大人になったキャシー”2へつづく ―――――

















― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



   (どら余談^^;)

   今年は一杯作品を書こうと思います(^^)v
   久しぶりに“書きたい”思いに駆り立てられるような感覚
   です"^_^"

   半分は必要に迫られてですが・・・ハハハ・・・^_^;






   1月13日(月)
  
   明日は新作の初台詞練習です"^_^"

   頑張ります♪








      (おまけ^^;)


      
          「僕だ~れだ?」


 
               


             
      
  
      ♪こたえ♪

      2月の保育園公演作品の主人公、
      チュー吉くんでした(^^)v



  
      ただ今、この作品の人形作りと編集作業に忙殺
      される日々であります・・・(>_<)
      また公演が終われば、お話も公開していく予定です。