りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“レナード” ―全13場― 4

2012年09月01日 19時16分19秒 | 未発表脚本

           ――――― 第 8 場 ―――――

 

          カーテン開く。舞台は“nothing”

          店の中は大勢の客で賑わっている。

          歌手スザンヌ、客席を回りながら歌っている。

          そこへニックとジム、入口から入って来て、

          楽しそうにテーブルに着く。

          ウエイトレスの格好をしたフランシス、2人に

          近寄る。

 

  フランシス「いらっしゃいませ。何になさいますか?」

  ニック「えっと・・・(フランシスを見上げて。)あれ?見かけない

      顔だね。新入り?」

  フランシス「はい!」

  ニック「俺はニック。(ジムを指して。)こいつはジム。この店の

      常連なんだ。レナードさんの弟分ってとこかな・・・っても

      俺らが勝手にそう思い込んでるだけなんだけど。(笑う。

      )」

  ジム「よろしく!」

  フランシス「よろしくお願いします。(頭を下げる。)」

  ジム「何か君、他の店員と感じが違うね。」

  フランシス「そうですか?」

  ニック「えっとね・・・俺、今日はビール!」

  フランシス「はい。ジムさんは?」

  ニック「(笑って。)こいつに“さん”付けで呼んだのは、君が

      初めてだ。」

  ジム「何か可笑しな感じだな。(笑う。)俺もビール。」

  フランシス「はい、少々お待ち下さい。」

 

          フランシス、2人から離れてカウンターの

          B・Jに注文を伝えて、一寸脇へ寄る。

          入口よりジャネットとイザベラ入って来、

          カウンターの方へ。

 

  イザベラ「B・J!!ちょっと小耳に挟んだんだけど!!」

  B・J「いらっしゃい。どうしたんですか?偉く興奮してるみたい

     だけど。」

  イザベラ「違うわよ!!レナードが女を拾ったって!?」

  B・J「えーっ!?」

  ジャネット「うちに来てるお客の中に、ここの常連さんもいてね。

        その人達が言うには、“nothing”に入った、新しい

        女の子にレナードが入れ込んでるらしいって。」

  B・J「(笑って。)新入りは入ったけど、入れ込んでるってのは

     どうかなぁ。ちょっと違うような気がするけど・・・。確かに

     親身になってるみたいだけどさ。」

  イザベラ「何処!?その新入り!!何処にいるの!?」

  ジャネット「まあまあ、そんなに興奮しないで、イザベラ。」

  イザベラ「ママ!!私は今日までずーっとレナード一筋だった

       のよ!!それなのに、ついさっき知り合ったばかりの

       小娘に、レナードを持ってかれちゃ堪ったもんじゃない

       わ!!」

  B・J「いい子ですよ。(チラッとフランシスの方を向いて、目が

     合ったフランシスに奥へ入るように合図を送る。)」

  フランシス「(B・Jの合図が分からず、微笑みながら近寄る。)

        B・Jさん、ビールはまだでしょうか?」

  B・J「あ・・・ああ・・・OK・・・(仕舞ったと言う風な顔付きで。)」

  イザベラ「(チラッとフランシスを見て。)・・・あなたね・・・?」

  フランシス「はい?」

  イザベラ「この間入ったって言う新入りは・・・」

  フランシス「はい、私新入りです。よろしくお願いします。常連

        さんですか?」

  イザベラ「レナードとはどう言う関係!?」

  フランシス「・・・関係・・・?」

  イザベラ「恍けないでよ!!彼と付き合ってるの!?彼があな

       たにぞっこんだって聞いたけど!?」

  フランシス「・・・ぞっこん・・・ですか・・・?」

  B・J「あ・・・フランシス!!ビール持って行ってくれ!!(ビール

     を2本、フランシスに渡す。)」

  フランシス「はい!」

 

          フランシス、ビールを持ってニック達の

          方へ。B・J、フランシスに付いて行こうと

          したイザベラの腕を掴む。

 

  B・J「イザベラさん!!」

  イザベラ「何よ、B・J!!」

  B・J「彼女・・・そっとしといてやってくれませんか?」

  イザベラ「何、それ!?」

  B・J「彼女、ここに来るまで何か色々辛いことがあったらしく

     って・・・レナードさんは詳しいことは話してくれないけど。

     本当に悪い娘じゃないんですよ!働き者だし・・・。ちょ

     っと変わってるけど・・・。」

  ジャネット「変わってる・・・?」

  B・J「うん・・・何かお上品そうって言うか・・・」

  ジャネット「へぇ・・・」

  イザベラ「(溜め息を吐いて。)・・・癪にさわるけど・・・B・Jに

       免じて今日は大人しくしててあげるわ。けど、私は許し

       た訳じゃないんですからね!!」

  B・J「(ホッとして。)よかった・・・。ありがとうイザベラさん。」

  ジャネット「(嬉しそうにB・Jを見て。)惚れちゃったかな?」

  B・J「(慌てて。)惚れ・・・いやだな、ジャネットさん!!冗談キ

     ツイよ!!」

  イザベラ「それより今日レナードは?」

  B・J「ああ、ちょっとチャールズさんの所へ行ったんですよ。

     直ぐ戻ると思いますよ。」

  イザベル「一言くらい文句言ってやらなきゃね!!」

 

          フランシス、ニック達にビールを渡して

          少し離れた所に立ち、楽しそうに皆の様子

          を見回している。

          音楽大きくなり、再びスザンヌ、リズムに

          乗って軽快に歌う。ニック、ジム、客の手

          を取り踊りだす。他の客もつられるように

          飛び出し踊る。残った客、手拍子する。

          フランシスも皆を見て手拍子する。

          そこへレナード、チャールズ登場。その様子

          に楽しそうに顔を見合わせて店の中へ。

          レナード、嬉しそうに手拍子しているフランシス

          を認め近寄り、手を取って踊りに誘う。

          チャールズ、カウンターへ。

          始めは躊躇っていたフランシス、レナードに

          誘われて嬉しそうに踊りに加わる。何時の

          間にか踊っていた他の者達、手拍子に回り

          レナードとフランシスの踊りになる。

          盛り上がってポーズ。皆、歓声を上げて

          拍手し、其々の場所へ戻る。

 

  フランシス「(息を弾ませて。)こんなに踊ったの、初めて!」

  レナード「(微笑んで。)本当に?」

  フランシス「(靴を見て。)あ・・・踵が・・・」

  レナード「大分、ボロだったからな。新しいの買ってやるよ。」

  フランシス「え・・・?」

 

          レナード、フランシスの背中を軽く押して

          カウンターの方へ行こうとすると、イザベラ

          2人に駆け寄る。

 

  イザベラ「レナード!!(思わずレナードに抱き付く。)」

  レナード「やあ、イザベラ。いらっしゃい。」

  イザベラ「(離れて。)よくも抜け抜けと、“いらっしゃい”だなん

       て!!」

  レナード「どうしたんだよ。」

 

          レナード、イザベラ、カウンターの方へ。

          フランシス一寸離れて2人に続く。

 

  イザベラ「ママも何とか言ってやってよ!(カウンターの椅子に

       座る。)」

  ジャネット「残念だけど今の2人の息の合った踊りを見せられ

        ちゃ、私は何も口出しできないなぁ。」

  イザベラ「ママ!!」

  ジャネット「レナード、新しい彼女紹介してよ。」

  レナード「彼女って・・・そんな・・・(心持ち照れたように。)」

  チャールズ「(レナードの肩に手を置いて。)こいつはモテる奴

         だから、今まで自分の方から言い寄ったことなんて

         ないんだ。」

  レナード「チャールズ!」

  チャールズ「(笑って。)それで口説き方が分からないんだよな

         ?」

  レナード「おまえな!!」

  ジャネット「まあ、結構初な所もあるのねぇ。(笑う。)」

  レナード「勝手に言ってろよ!フランシス!店の手伝いなんか

       いいから座ってろよ!」

 

          レナード、少し皆から離れて他の客と

          話しをする。

 

  イザベラ「面白くない!B・J、ウォッカ頂戴!!」

  B・J「えー、強いですよ。」

  イザベラ「いいの!!今日は酔っ払いたい気分なんだから。」

  チャールズ「(笑って。)荒れてるなぁ。」

  イザベラ「放っといてよ!!」

  ジャネット「(呆れたように立ち上がって。)全く・・・さぁ、イザベラ

        戻りましょう。」

  イザベラ「イヤよ!(カウンターに伏せる。)」

  ジャネット「あっそう・・・。でも今日は確か、レストランオーナー

        のダン・マグダモットの来る日じゃなかったかしら。」

  イザベラ「(顔を上げて。)そうよ!!今日はダンが来る日だわ

       !!(立ち上がって。)何してるのよママ!!早く帰ら

       なきゃ!!」

 

          イザベラ、慌てて入口から出て行く。

 

  ジャネット「(溜め息を吐いて。)お騒がせ様!」

 

          ジャネット出て行く。

 

  B・J「(笑って。)イザベラさんは何時も大騒ぎして帰って行く

     な。」

  チャールズ「あいつはあれが趣味みたいな奴だからな。」

  B・J「そうなんですか?(楽しそうに見ていたフランシスの方を

     向いて。)フランシス!何か飲むかい?」

  フランシス「はい。」

  B・J「OK。」

  チャールズ「君、大変なお嬢様だったんだ。」

  フランシス「お嬢様だなんて・・・」

  チャールズ「あ・・・別にからかった訳じゃないんだぜ。レナード

         から色々聞いてさ。微力ながら俺も手伝いをさせ

         て貰おうと思ってね。」

  フランシス「ご迷惑かけてすみません。(頭を下げる。)」

  チャールズ「いや・・・俺は仕事のついでだから・・・。けど、レナ

         ードは違うぜ。あいつは本気で君の力になりたい

         と思ってる。あいつなりの少々荒っぽい遣り方だけ

         ど・・・。また俺の心配の種が増えるって訳だ。」

  フランシス「ごめんなさい・・・」

  チャールズ「(微笑んで。)何も君のせいじゃないさ。あいつが

         自分から言いだしたんだ。俺にはそれが如何して

         だか分かるな・・・」

  B・J「(フランシスにコップを渡す。)はい。」

  フランシス「ありがとう。」

  チャールズ「オレンジジュース?」

  B・J「ええ。彼女用なんですよ。(笑う。)レナードさんがカクテル

     用じゃないのも買っておけって。」

  チャールズ「へぇ・・・(嬉しそうに。)」

 

 

 

 

 

       ――――― “レナード”5へつづく ―――――

 

 

 

 

 

 

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