アース、ニルス、腰を抜かしたように、這い
ながら下手方へ。
ロベルト「(少し怯えながら。)・・・僕は・・・嫌だ・・・」
アース「お・・・おい、ロベルト!!何言ってんだよ・・・。」
ロベルト「僕は、あなたにまだ教えてもらってないんだ、大切な
こと・・・!!だから帰れない!!」
マリアンヌ「私はあなたに教えることなんて、何もないわ・・・!!
私の大切な指輪を盗もうとするような人間に!!」
ニルス「・・・僕達・・・ゆ・・・指輪なんて・・・知らないよ・・・!!」
アース「ああ・・・!!」
ロベルト「・・・指輪・・・?」
マリアンヌ「私が恋人に貰った、命の次に大切にしてた指輪よ!
!」
ロベルト「・・・紫色に光る・・・回りには色とりどりの宝石を散りば
めた・・・指輪・・・?」
マリアンヌ「・・・何故・・・知ってるの・・・?やっぱりおまえが私の
指輪を!!」
一瞬、突風(マリアンヌの怒り)が吹き抜ける。
ニルス「ひっ!!ごめんなさい!!(頭を抱える。)」
アース「馬鹿!!」
ロベルト「違うよ!!」
マリアンヌ「じゃあ、どうして!!」
ロベルト「(肖像画の側へ。肖像画へ向かい、何かゴソゴソとし
ている。)・・・これでしょ?(マリアンヌの方へ差し出す。)
」
マリアンヌ、ゆっくりロベルトの側へ。差し出して
いた物を受け取る。
マリアンヌ「(今までの険しかった顔付が、一変して穏やかにな
り微笑む。)私の宝物だわ・・・。今まで100年以上も
探し続けてきた・・・。(指輪を、愛おしそうに包み込む
。)・・・そうだったわ・・・私が死んで、体が朽ち果てて
も、この指輪だけは永遠に、私の指で美しく輝いてい
て欲しいと、肖像画に埋め込んであったのよ・・・。何
故、忘れていたのかしら・・・。何故、こんなに大切な
指輪のことを・・・。」
ロベルト「・・・屹度、大切にし過ぎていたからだね・・・。」
ニルス「ああ!!僕もよくあるよ!クッキー買ってもらった時とか
・・・。大事にちょっとずつ食べようと思って、何処かへ仕
舞い込んで、結局何処へ仕舞ったか忘れちゃって・・・。
それで見つかった時にはカビだらけ・・・ってさ!!その
時はショックだよなぁ・・・。」
アース「馬鹿、煩いよ!!」
マリアンヌ「でも・・・どうして分かったの・・・?」
ロベルト「さっき、近寄って見た時、絵の割には妙にキラキラ光
る、本物のような指輪だと思って見てたんだ・・・。」
マリアンヌ「こんな側にあったなんて・・・。」
アース「そう言うの“灯台下暗し”・・・って言うんだぜ。(笑う。)」
マリアンヌ「あなたの美しい心が見つけたのね、屹度・・・。あな
たのように、澄んだ瞳なら最初から見えた筈・・・。私
の歪んだ心が、大切なものに雲を掛けたんだわ・・・。
今の私は、恋人を思っていた頃の純粋な心を失って
いたもの・・・。なくした宝物を守るのに必死で・・・。あ
りがとう・・・。(優しく微笑み、指輪をはめる。)」
音楽流れ、マリアンヌ歌う。
“潤いの森まではただの一本道・・・
真っ直ぐ行けば何時かは着ける・・・
何も行く手を阻むものはない
強い願いを持って進みなさい
そしたらそこは目指す森・・・”
マリアンヌ「これを差し上げるわ・・・。そこで屹度、役に立つ筈
よ・・・。(胸に付けていた、小さなブローチを外し、ロ
ベルトの方へ差し出す。)」
ロベルト「(ゆっくりマリアンヌに近寄り、それを受け取る。)・・・こ
れが・・・役に立つの・・・?」
マリアンヌ「(微笑んで頷く。)その森に住む、二つの心に気を付
けて・・・。」
ロベルト「二つの心・・・?(受け取ったものを見詰める。)・・・次
は、何が起こるんだろう・・・。」
アース、ニルス、ロベルトの両横から、それを
覗き込むように。
音楽盛り上がり。暗転。
――――― 第 6 場 ―――――
音楽流れる。
上手スポットに一人の妖精(リィ)、浮かび上がり
歌う。
“私が一番!
この森で一番可愛い!
この森で一番いい子!
誰もが認める私が一番!”
リィ、フェード・アウトするのと同時に、下手スポット
にもう一人の妖精(ルゥ)浮かび上がり、歌う。
“私が一番!
この森で一番綺麗!
この森で一番優しい!
誰もが褒めるわ私が一番!”
舞台、明るくなると、森の風景。
ルゥ、鼻歌を歌い、楽しそうにスキップしながら
上手方へ行く。と、何か落ちているものに気付き、
それを拾う。
ルゥ「何かしら・・・。まぁ!!綺麗な宝石・・・!!こんな綺麗な
宝石は、ここら中探し回っても見つからないわ!!私が見
つけたんだもの、私のものよね!!リィに自慢してやろう
・・・!!(拾ったものを、自分の胸元に付ける。)」
ルゥ、上手方へ行きかける。と、上手より
ロベルト、アース、ニルス、回りを見回しながら
ゆっくり登場。
ルゥ、3人を認め立ち止まる。
ルゥ「・・・あなた達誰・・・?」
ロベルト「・・・こんにちは・・・僕達・・・」
ルゥ「何しに来たの?」
アース「ここが“潤いの森”か?」
ロベルト「僕達、この森を抜けた所にある、砂漠に用があるんだ
。」
ルゥ「残念ね。あなた達の行く道は、元来た道よ。(上手方を指
差す。)さぁ、出てって!!」
アース「ばっか・・・俺達、今(上手方を指して。)あっちから来た
ばかりだぜ?」
ニルス「うん・・・。」
ルゥ「ここは通れないの!」
ロベルト「通れないって・・・。」
ルゥ「ここは、ただの人間が来る場所じゃないってこと!!」
ロベルト「でも、僕達どうしても砂漠に行かなけりゃいけないんだ
。」
ルゥ「どうしても行きたければ、地球をぐるっと回って、反対側か
ら行けばいいのよ。(笑う。)」
アース「黙って聞いてりゃ・・・!おい!こんな奴の言うことなん
か放っといて、とっとと抜けようぜ!」
ルゥ「(両手を広げて。)駄目よ!!通さないわ!!ここは私の
森なの!!」
その時、リィの声が聞こえる。
リィの声「誰の森ですって!?」
下手より、リィ登場。
3人、リィとルゥを驚いたように見比べる。
ルゥ「リィ!」
ニルス「そっくりだ・・・。双子かな・・・?」
ロベルト「うん・・・。」
リィ「さっきから聞いていれば“あなたの森”だの、自分は全てに
おいて一番だの・・・。全く・・・我が儘よねぇ・・・。」
ルゥ「まぁ!失礼ね。それはあなたも同じことじゃない!」
リィ「私が何時そんなことを言ったかしら。(笑う。)」
ルゥ「私が聞いてなかったと思って?」
リィ「(ルゥの胸元の宝石に気付いて、驚いたように。)これ・・・私
のブローチじゃない!!」
ルゥ「違うわよ。私が今さっきそこで拾ったの!だから私のもの
!」
リィ「違うわ!!落としたのは私!!だから私のものに決まって
るじゃない!!返しなさいよ!!」
リィ、ルゥ、お互い相手に掴み掛かる。
アース「お・・・おい!!やめろよ!!(2人の間に割って入ろう
とする。)」
リィ、ルゥ「邪魔よ!!(アースを押し退ける。)」
アース「わあっ!!(尻餅を付く。)」
ロベルト「アース!」
アース「おっかねぇ・・・」
ロベルト「君達・・・君達!!喧嘩はよくないよ!!君達姉妹だろ
!?仲良くしなきゃ!!」
リィ、ルゥ「煩いわね!!」
ロベルト「怒るより、許した方が心が優しくなるよ!」
リィ「こんな泥棒を許せって言うの!?」
ルゥ「誰が泥棒ですって!!」
リィ「私の宝石を盗んだじゃない!!」
ルゥ「拾ったのよ!!盗んだなんて人聞きの悪い!!」
ロベルト「・・・宝石・・・?(何か思い出したように。)そうだ・・・!!
(ポケットからマリアンヌに貰った宝石を取り出し、リィと
ルゥの間に差し出す。)これ・・・!!これでよかったら、
君達にあげるよ!!だから、そんな風に喧嘩しないで・・
・。」
リィ、ルゥ「・・・え?(ロベルトが差し出した宝石に驚いたように。)
まぁ、これは・・・!!」
ルゥ「同じものよ!!見て!!(自分の胸元の宝石と、ロベルト
の差し出した宝石を見比べる。)」
リィ「本当!!これで2つ揃ったわ!!」
ルゥ「(宝石を取って、リィの胸元に付ける。)ほら・・・これで一緒
だわ!!」
リィ「同じね!!」
ルゥ「(ロベルトに。)これ、貰っていいのね?」
ロベルト「うん!!」
リィ、ルゥ、顔を見合わせて笑う。
ロベルト「・・・僕達、この森を通ってもいい?」
リィ「勿論よ!」
ルゥ「当たり前じゃない!」
アース「やった!」
リィ「砂漠に用があるなんて、白い花を探しに行くの?」
ルゥ「花は直ぐ見つかる筈よ。」
ロベルト「本当?」
リィ「ただ、大概持ち帰る前に、花は枯れちゃって願いを叶える
ことが出来ないの。」
ルゥ「だって、その花を手にしてから、たった一日しか咲いてな
いもの。ここに来るのと同じ道程を、また帰らなきゃならな
いのよ。」
リィ「どんなに急いだって、普通は無理よね。」
ルゥ「あら、一時も休まないで、走り詰めなら分からないわよ。」
ニルス「僕は駄目だよ・・・。」
ロベルト「間に合うなら、僕は走り詰めだって何だって構わない
!!」
リィ、ルゥ「まぁ!(笑う。)」
リィ「精々頑張って頂戴。」
ルゥ「応援してるわ。」
ロベルト「行こう!!」
アース「おう!」
ニルス「うん!」
3人、下手方へ行きかける。
リィ、ルゥ「待って!」
3人、立ち止まり振り返る。
ロベルト「何?」
リィ「お礼を忘れていたわ。」
ロベルト「・・・お礼なんて・・・」
ルゥ「(ポケットから一握りの光る砂を取り出し、差し出す。)これ
をあげるわ・・・。」
ロベルト「それは・・・?」
リィ「屹度、砂漠で役に立つ筈よ。」
ロベルト「(両手を差し出し、その砂を受け取る。)光る・・・砂・・・
?」
アース「こんなのが、如何して砂漠で役に立つんだよ。(笑う。)」
ルゥ「何も知らないのね。」
ロベルト「(砂を見て。)綺麗だね・・・。ありがとう!君達と出会っ
た記念に、大切に持っておくよ!」
リィ、ルゥ、顔を見合わせてクスクス笑う。
リィ「その砂は、いけない心を正しくしてくれるわ・・・。」
ロベルト「・・・いけない心・・・?」
ルゥ「ええ。しっかりね!」
リィ、ルゥ、手を振りながら上手へ去る。
音楽流れ、3人スポットに浮かび上がり歌う。
“さぁ いよいよ砂漠だ
目指す場所!!
さぁ いよいよ見えたぞ
白い花!!
手に入れる為にここまで来た
時間がなくてもやらなくちゃ
必ず叶う願いの花を
屹度手にする為に来た
さぁ 行くぞ砂漠だ
目的地!!
さぁ 着いたぞ踏み込む
未知の砂!!”
ロベルト、下手へ走り去る。
アース「あっ!!待てよ!!」
ニルス「待ってよ!!」
アース、ニルス、ロベルトの後を追うように
下手へ走り去る。暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
音楽流れ、上手スポットにフリード
浮かび上がり歌う。
“ここは俺様の住む都・・・
人は死の場所と言うれど
ここは俺様だけの家・・・
たとえ扉を叩いても
決して入っちゃいけないぜ・・・
二度と出られなくなること請け合い・・・
俺様の手に落ちるんだ・・・”
フリード、声を上げ笑う。
舞台薄明るくなると、中央後方に白い花が
一輪咲いている。
フリード、その前にゴロンと後ろを向いて
横になる。
一時置いて下手より、ロベルト、アース、
ニルス登場。
アース「あっついなぁ・・・。」
ニルス「うん・・・。(汗を拭う。)」
ロベルト「(上を見て。)だって、太陽があんなに近いよ・・・。」
アース「それで?その白い花は一体何処にあるんだ?あいつ
らの話しじゃ、直ぐ見つかるようなこと言ってたよな・・・
?」
ロベルト「(回りを見回して。後方の白い花を認め、嬉しそうな顔
をするが、その前に横になっているフリードに気付き、
怪訝な面持ちになる。)あ・・・!!あそこに・・・!!」
アース、ニルス、ロベルトの指差す方を見る。
ニルス「本当だ!!」
アース「・・・誰だ?あの花の前で寝そべってる変な野郎・・・。」
ロベルト「ねぇ、君!!僕達、その花が欲しいんだ・・・。だから・・
・。」
フリード、ゴロンと向き直り、前方を向く。
フリード、ニヤリと微笑み3人を見詰める。
ニルス「あ!!」
ロベルト「・・・おまえは・・・」
アース「またおまえか!!俺らはな!!おまえのせいで・・・」
ロベルト「(アースを制するように。)僕らは、その花が欲しいん
だ。だから退いてくれ・・・。」
フリード、起き上がり胡坐をかいて座る。
フリード「・・・この花か・・・。嫌だ!!やらねぇ!!」
アース「何、ふざけたこと言ってんだ!!(フリードの方へ飛び
掛かろうとする。)」
フリード「(アースを睨み付け、顎で投げるような仕種をすると、
アース、それと同じように飛び動き、転ぶ。)」
アース「わあっ!!いってぇ・・・」
ロベルト「アース!!(駆け寄る。)何するんだ!!」
ニルス、慌てて2人の側へ。
フリード「(声を上げて笑う。)やめとけ、やめとけ・・・。人間の力
で、俺様に敵うと思っているのか?」
ロベルト「・・・ああ!!思っているとも!!おまえが、その花を
寄越さないって言うんなら、僕は力尽くでも、その花を手
に入れる!!」
ロベルト、フリードに掛かろうとするが、アースと
同じように放り投げられる。
ロベルト「わっ!!(よろめいて膝を付く。)」
アース、ニルス「ロベルト!!」
フリード、声を上げて笑う。
アース「畜生!!」
ニルス「その花を寄越せ!!」
ロベルト「(ゆっくり立ち上がり。)僕には・・・僕にはその花が、如
何しても必要なんだ!!」
フリード、ゆっくり立ち上がる。
フリード「面倒臭い餓鬼どもだな・・・。花はやらないって言ってん
だ・・・。さっさと・・・帰りな!!」
ロベルト「嫌だ!!(フリードを見据える。)」
フリード「いくら頑張ったところで、あの魂はもう直ぐ俺様のもの
だ!!(笑う。)」
ロベルト「・・・そんなこと、させるものか!!」
フリード「ついでに・・・(3人をマジマジ見て。)おまえ達の魂も、
頂くとするか・・・。」
フリード、腰にさしていた剣を抜き、3人の方へ
向かって差し出し構える。
アース「ロベルト!」
ニルス「(アースの陰に隠れるように。)い・・・嫌だよ・・・そんな
・・・僕・・・」
ロベルト「(アース、ニルスの前へ立ち、両手を広げる。)そんな
・・・そんな酷いことはさせない!!」
アース「ロベルト!!」
フリード「ほう・・・。おまえが一番に俺様の餌食になるって言うの
か・・・?いい度胸だ!!それじゃあお望み通り・・・!!
(剣を振り上げる。)」
アース「(慌ててロベルトを押し退ける。)ロベルト、危ない!!」
フリードの振り下ろした剣が、アースの腕を
掠る。
アース「わあっ!!(腕を押さえ、倒れる。)」
ロベルト「アース!!」
ニルス「アース!!」
フリード「あああ・・・余計なことするから、しくじったじゃないか・・・
。」
ロベルト「大丈夫!?アース!!」
アース「ああ・・・心配すんなって・・・。何ともないよ、こんな掠り
傷・・・。いっ・・・(痛みに顔を歪める。)」
ニルス「血・・・血が出てるよ・・・」
フリード「どうして人間って奴は、相手の為に自分を犠牲にでき
たりするのかねぇ・・・。」
ロベルト「・・・おまえには分からない・・・。」
フリード「ん?」
ロベルト「・・・僕らは心を持っているんだ・・・。大切な者の為に
は何だってできるってこと!!心のないおまえに分かる
筈ないんだ!!」
フリード「ふうん・・・。分からねぇ・・・分かりたくもないさ!!(花
を捥ぎ取り投げ捨てる。)」
ロベルト「あっ!!」
ニルス「花が!!」
フリード「(ニヤリと笑う。)ほら・・・時計は回り出したぜ・・・。」
――――― “ロベルトの旅”完結編へつづく ―――――
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談^^;)
グーグル版“ワールド”に、“未来の海へ”の一部動画を
投稿しましたので、またご覧ください(^^)
本当は、“面白い嵐”の場面をご覧頂きたかったのですが、
手元にその時のテープが残っていませんでした(>_<)
変わりに、優海ちゃんが“面白い手”の動きをしている、
はじめの方の場面で我慢下さい^^;
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/performance.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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