――――― 第 5 場 ―――――
カーテン開く。
(中央に一つのベンチ、後ろ向きに
置かれてある。)
下手方にナナ、しゃがみこんで地面に
落書きでもしているように遊んでいる。
そこへ上手よりエドワード、ローラ、マーク
話しながら登場。
エドワード「(背伸びをして。)さぁ、非番だ非番・・・!疲れたなぁ
・・・!」
ローラ「食事でもして帰らない?」
マーク「そうだね。」
エドワード「俺、行くとこがあるからパス。」
ローラ「どこ行くの?」
エドワード「ホーム・・・」
マーク「・・ランスロット孤児院・・・」
ローラ「あら、一昨日も行ってなかったかしら?」
エドワード「子ども達と約束があるんだ。飛行機作りが途中にな
ってるから、直ぐにまた行ってやるって・・・」
マーク「律儀な話しだ・・・」
エドワード「なんとでも。」
ローラ「そうね、弟や妹達との約束なら守らないとね。じゃあ私
達も真っ直ぐ帰りましょうか・・・」
エドワード「(下手方のナナを認め。)あれ・・・ナナ?ナナじゃな
いか。」
ナナ「(エドワードを認め、立ち上がる。)お兄ちゃん!」
エドワード「どうしたんだ、こんなとこで・・・」
ナナ「院長先生のお買い物に付いて来たの・・・。」
その時、非常ベルの音が鳴り響き、
叫び声が聞こえる。下手より片手に
鞄、片手に銃を持ち、慌てた様子で
ペリー、走りながら登場。
声「銀行強盗だー!!」
ペリー、ナナにぶつかり転ぶ。と、鞄の
中から札束が零れ落ちる。
その時、ベンチに寝転がっていたデビル、
起き上がり皆の様子を見ている。
(皆にデビルの姿は見えていない。)
ペリー「馬鹿野郎!!何、呆っとつっ立ってんだ!!(慌てて散
らばった金を、掻き集めるように。)」
エドワード「(隠し持っていた銃を取り出し、ペリーに向かって構
える。)警察だ!!銃を捨てて、そのまま大人しくこっ
ちへ来るんだ!!」
ペリー「(驚いたように。)・・・警察!?」
エドワード「さぁ、早くこっちへ来い!!」
ローラ「エド・・・!」
ペリー「・・・っくしょう・・・畜生!!」
驚いた様子でペリーを横で見ていたナナに
気付いたペリー、思わず人質にする。
ナナ「キャアッ!!」
エドワード「ナナ!!」
ペリー「(ナナの方へ銃口を向ける。)こいつを殺したくないなら、
おまえ達がその手に持った銃を捨てるんだ!!」
エドワード「馬鹿やろ・・・」
マーク「(小声で。)非常ベルは鳴ってるんだ・・・応援が来るまで
待とう・・・!!無闇矢鱈と犯人を挑発すると、あの子ども
が危険だ!!」
エドワード「そんな暇はない!!(ゆっくりとペリーの方へ近付き
ながら。)・・・ナナを離せ・・・」
ペリー「・・・駄目だ・・・俺はどうしても金がいるんだ・・・捕まる訳
にはいかない・・・だからこいつを人質に逃げてやる!!」
デビル、立ち上がりペリーの側へ。
ペリーの回りをゆっくり回り、その
様子を見ている。
デビル「・・・いいぞ・・・やれやれ・・・」
ナナ「・・・お兄ちゃん・・・」
エドワード「ナナ!絶対に逃げ通せないんだ!!今ならまだ、罪
も軽くて済む!!」
デビル、エドワードに気付き近寄る。
デビル「おや・・・?また会ったな・・・(エドワードを覗き込み、ニ
ヤリと微笑む。)・・・死んだらどうなるか・・・まだ知りたい
か・・・?」
ペリー「・・・だけど・・・だけど・・・捕まったらおしまいだ!!・・・俺
は殺されてしまうんだ・・・!!」
デビル「(ペリーの側へ。)そうそう・・・殺らなければ殺られるん
だ・・・」
ペリー「・・・殺らなければ・・・殺られる・・・」
ローラ「でもその子は関係ないわ!!」
ペリー「なら、おまえが代わりに人質になるか!?」
エドワード「なんだと・・・!?」
ローラ「・・・いいわ・・・」
マーク「ローラ!!」
ローラ「(エドワードとマークに向いて。)大丈夫!私の方がナナ
より都合がいいでしょ?」
ペリー「いいだろ・・・じゃあゆっくり手を上げてこっちへ来い!!
」
エドワード「ローラ・・・!!」
ローラ「(エドワードをチラッと見て微笑む。)・・・信じてる・・・(ゆ
っくり手を上げ、ペリーの方へ。)」
マーク「エド!!」
デビル「(ペリーの耳元で。)警察の女なんか足で纏いだ・・・直
ぐに裏切られるぜ・・・。ほら・・・今も背中に銃を隠し持っ
ている・・・」
ペリー「銃・・・?」
デビル「殺っちまえ・・・でなきゃ、その銃でおまえが殺られるん
だ・・・」
ペリー「・・・殺られる・・・」
デビル「殺れ・・・」
ペリー「殺られる・・・」
デビル「殺れ!!」
ペリー、側に来たローラに向かって
発砲する。
ローラ、倒れ込む。
ナナ「キャアッ!!」
エド「ローラ!!」
エド、素早くペリーに走り寄り、銃を
取り上げ取り押さえる。
マーク、ローラに走り寄り抱き起こす。
デビル、声を上げて笑う。
マーク「ローラ・・・ローラ・・・」
ナナ、犯人を押さえたまま呆然と
ローラを見詰めるエドワードに縋る。
暗転。
――――― 第 6 場 ―――――
下手スポットに放心状態のエドワード、
浮かび上がる。
エドワード「・・・何故・・・死んだ・・・何故・・・おまえが死ななけれ
ばならない・・・そんなくだらない理由が・・・どこにあ
ると言うんだ・・・何故・・・俺は・・・(涙を堪えるように
下を向く。)」
上手スポットにローラ、浮かび上がる。
ローラ「エド・・・私はあなたを信じてる・・・」
エドワード「(顔を上げ。)ローラ・・・!!」
ローラ「そりゃ・・・無茶なところもあるけれど・・・あなたはいつで
も私を守ってくれるわ・・・」
エドワード「・・・俺が・・・?」
ローラ「だから何も心配してないわ・・・」
エドワード「・・・おまえを・・・守りきれなかったのに・・・」
ローラ「そうでしょ?」
エドワード「ローラ・・・」
ローラ「・・・信じてるわ・・・」
ローラ、フェード・アウト。同時に中央
スポットにマーク、浮かび上がる。
マーク「・・・ローラが死んだのは貴様のせいだ・・・あの時・・・ロ
ーラを黙って行かせた・・・彼女は言った筈だ・・・おまえを
信じていると・・・なのに・・・」
エドワード「・・・分かってる・・・全部・・・俺の無鉄砲のせいだ・・・
」
マーク「今更反省して・・・ローラが帰ってくるのか!?彼女が
もう一度、僕に微笑みかけると言うのか!?」
エドワード「・・・マーク・・・」
マーク「・・・今更後悔しても・・・もうローラは帰って来ない・・・」
エドワード「・・・俺が・・・」
エドワード、フェード・アウトする。
音楽流れ、マーク歌う。
“そこに春がある・・・
それだけでよかった・・・
暖かな温もりに触れることは
出来なくても・・・
感じるだけでよかったのに・・・
夢見た一時が
叶わなくても
僕はそれで満足だった・・・
君が・・・
そこにいるだけで・・・”
マーク「(絞り出すように。)なのに・・・何故・・・」
舞台明るくなる。と、中央に全身黒いマント
に身を包んだ占いの老婆、テーブルの前
に座っている。
マーク、気に止めず、下手方へゆっくり
行きかける。
老婆「・・・今のおまえさんの心は、深く沈んだ・・・暗黒の海の底
のようじゃ・・・」
マーク、一瞬振り返るが、再び知らん顔
して歩き始める。
老婆「・・・そこの青年・・・占いはどうじゃ・・・?」
マーク「・・・結構だ・・・」
老婆「自分の未来を知りたくないか・・・?今のこの苦境を乗り越
える方法を知りたくないか・・・?わしには見えないものは
何もない・・・。おまえさんを幸せへと導いてやろうじゃない
か・・・。」
マーク「・・・幸せへ導くだと・・・?」
老婆「ああ・・・(立ち上がり、マークの側へ。)」
マーク「あんたがどんな偉い占い師か祈祷師か・・・はたまた悪
魔か天使か知らないが・・・!!・・・俺を幸せへ導くことな
どできっこない・・・死んだ人間を生き返らせることが出来
ない限り・・・今の俺が幸せに感じることなど・・・有り得は
しない・・・!!」
老婆「・・・幸せの代償はなんじゃ・・・?」
マーク「なんだって・・・あんたの欲しいものをくれてやる!!俺
の命だって!!・・・本当にそんなことが出来るのなら・・・
」
マーク、再び下手方へ行きかける。
老婆「今の言葉を忘れるな・・・。おまえにいいものをやろう・・・。
」
マーク「(立ち止まり振り返る。)」
老婆「(テーブルの下から、一つの小さな鉢植えを取り出し、マ
ークの方へ差し出す。)ほら・・・遠慮はするな・・・(無理矢
理マークへ、鉢植えを手渡す。)」
マーク「・・・こんな枯れた花のつぼみなんか・・・!」
老婆「それをただの花のつぼみと思うんじゃないぞ・・・。そのつ
ぼみは、“命のつぼみ”じゃ・・・」
マーク「・・・命のつぼみ・・・?」
老婆「ああ・・・今直ぐその幸せの元へ行き、その者の血を1滴
・・・花のつぼみに吸わせるんじゃ・・・。そうすれば忽ち命
の花は息を吹き返し、見事な花を咲かせるであろう・・・。そ
うしてその花の咲いている間、その人間はいつまでも生き
続けるのじゃ・・・。花が枯れたり傷つかない限り・・・永遠に
な・・・」
マーク「・・・まさか・・・」
老婆「試してみるがいい・・・どうせ死んだ命じゃろ・・・?」
マーク「・・・本当に・・・死んだ人間が・・・生き返る・・・?嘘だ・・・
そんな・・・」
老婆「・・・その代わり・・・命の代償は・・・他の誰かの命だ・・・」
マーク「・・・え・・・?」
老婆「何もそんな驚いた顔をせんでもいいじゃろう・・・。死んだ
者が生き返るのじゃ・・・その代わりに生きている者が死ぬ
・・・ただそれだけのことじゃ・・・」
マーク「・・・そんな・・・代わりに誰かの命を・・・(呆然とつぼみを
見詰める。)」
老婆「誰でもいいんだよ・・・3日以内に誰かが死ねばいいんだ
・・・(マークの背後へ。今まで被っていた頭巾を取る。と、デ
ビル、ニヤリと微笑む。)この世の中、突然いなくなっても、
困らない人間は大勢いるだろ・・・?・・・身寄りのない孤児
とか・・・」
マーク、スポットに浮かび上がる。
マーク「・・・身寄りのない孤児・・・そんな・・・たとえ身寄りがなく
ても・・・!!(振り返る。と、老婆の姿はない。)・・・婆さん
・・・?婆さん!?(怪訝そうに回りを見回す。手に持って
いた苗木に気付き、呆然と見詰める。)・・・命の・・・花・・・
?まさか・・・」
暗転。
――――― 第 7 場 ―――――
音楽流れ、舞台明るくなる。(警察署内の
様子。)
下手よりエドワード、歌いながら登場。
“空に輝く星のように
手に入らない美しいもの
手を伸ばしても
決して届かない・・・
永遠の思い出よ・・・
つい今まで側にいた
懐かしい香り
突然に駆け上った
空の彼方に・・・”
エドワード「・・・いなくなって・・・初めて知る想い・・・会えなくなっ
て・・・やっと気付いた自分の心・・・(溜め息を吐く。)
」
その時、下手よりローラ登場。
ローラ「おはよう、エド!!」
エドワード「おはよ・・・う・・・(驚いてローラを見る。)」
ローラ「珍しいぞ!遅刻しないで出勤なんて!(笑う。)」
エドワード「・・・ローラ・・・」
ローラ「・・・どうしたの?そんな幽霊でも見たような顔して・・・。
私・・・どこか変・・・?」
エドワード「ローラ・・・おまえ・・・死んだんじゃ・・・」
ローラ「いやね!何、寝惚けたこと言ってるのよ!私はこうして
生きてるわよ!勝手に人のことを殺さないでよね!!」
エドワード「・・・嘘だ・・・いや・・・待てよ・・・だが・・・(ローラに近
寄り、ローラの肩に恐々手を置く。)・・・温かい・・・生
てる・・・生きてるんだ・・・!!」
ローラ「だから言ってるじゃ・・・」
エドワード「(思わずローラを抱き締める。)生きてたんだローラ
!!よかった・・・!!よかった・・・」
ローラ「エド・・・」
エドワード「(ローラを離す。)ごめん・・・なんか俺・・・悪い夢でも
見てたみたいだ・・・」
ローラ「・・・変な人ね。」
エドワード「でも、どうして・・・」
その時、下手よりマーク登場。
エドワード「(マークを認め、駆け寄る。)マーク!!ローラが生き
てたんだ!!」
マーク「・・・え・・・?」
エドワード「驚いただろ!?あの時、死んだものと・・・!!だけ
ど今、こうして生きてここにいるんだ!!」
マーク「・・・本当に・・・ローラ・・・?」
ローラ「マークもエドも、さっきから変なことばっかり!」
エドワード「・・・けど、ローラ・・・怪我は・・・?あの時、確かに銃
で撃たれた筈・・・」
ローラ「・・・銃・・・?」
マーク「・・・い・・・いいじゃないか!そんなこと!!こうしてロー
ラが生きてたんだ!!それだけで!!」
エドワード「・・・あ・・・ああ・・・」
マーク「(ローラに。)それより・・・何か・・・変わったことは・・・?」
ローラ「変わったこと・・・?変わったことって・・・」
マーク「いや・・・いいんだ。別に何ともなけりゃ・・・!!」
ローラ「・・・そう言えば今朝、目が覚めた時・・・(左手首を見せ
て。)ここに花の形をしたアザが・・・」
マーク「花の形・・・!?」
エドワード「どれ?(ローラの手を取り見る。)本当だ・・・丸で花
模様・・・。また寝相が悪くて、寝てる間に、どこかに
ぶつけたんじゃないか?」
ローラ「失礼ね!!」
エドワード、ローラ笑い合う。横でマーク、
複雑な面持ちでローラの様子を見ている。
そこへ下手より、小さな花束を持ったナナ
登場。
――――― “エドワード”3へつづく ―――――
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