長老「なんじゃ・・・まだ普通の石を集めとるのか?」
キャシー「え・・・?」
長老「花の妖精に貰った石は、まだそのままかな?」
キャシー「そのまま・・・って・・・(ポケットから石を出し、触ったり
翳したりして見る。)・・・そう言えば・・・貰った時に比べ
ると、なんだかほんの少しだけキラキラして見える・・・
。」
長老「それは持つ者によって、どうにでも変わる魔法の石じゃ。」
キャシー「魔法の石・・・?じゃあ私がその辺に転がってる石を、
5つ集めたって同じことじゃない。」
長老「(首を振る。)いいや・・・、この石は5人の妖精の手を通し
て、おまえが貰い受けなければ、本当に意味のないただの
石ころじゃ。」
キャシー「どうして変わるの!?時間が経てば輝いてくるの!?
」
クルト「花の妖精が言ってたじゃないか。キャシーが冷たい心な
ら、いつまでたっても冷たい石だって・・・!!」
キャシー「いつまでも冷たい心なら・・・冷たい石・・・」
長老「(声を出して笑う。)さぁ、年寄りは家へ帰って、一眠りしよ
うかのぉ・・・」
キャシー「待ってよ!!私がどう変われば、この石は本当に願
いの叶う魔法の石に変わるの!?」
長老「さあのぉ・・・しかし現に花の妖精に貰った石は、ほんの少
しでも輝いてきたんじゃろう?それはおまえさんの中で、少
しだけ何かが変わったってことじゃよ・・・。自分で考えてご
らん・・・。」
キャシー「私の中で・・・。一体何が変わったって言うの!?」
長老、ゆっくり上手へ去る。
キャシー「待って!!待ってよ!!もう・・・これじゃあ、たとえ5
つの石が集まったって、私が変わらなければ願いは叶
わないってことじゃない・・・」
クルト「屹度、5つ集まれば答えが見つかるようになっているん
だよ!一つ一つ・・・花の妖精に貰った石のようにさ!」
キャシー「(石を見て。)そうかしら・・・」
クルト「行こう!キャシー!」
クルト、明るく歌う。途中、キャシーも
加わり、元気よく歌う。
2人、スポット。
“行こう!
分からない答え知る為に
行こう!
分からない答え聞く為に
屹度 見つかる
5つの石が答えを知ってる
願いを叶える
5つの石が何でも分かる筈
だから行こう!行こう!
次の妖精が待つ森のどこかへ”
2人、手をつないで下手へ走り去る。
フェード・アウト。
――――― 第 4 場 ―――――
水の滴が垂れる音。美しい音楽が流れる。
フェード・インする。と、洞窟の泉。
中央、座った美しい泉の精、長い髪を
梳かしながらゆったりと歌う。
“水の流れがささめいて
水の滴が肌を滑る
美しい光 揺らめいて
私を照らすのいつまでも・・・
泉が溢れ
私を称えるいつまでも・・・”
下手客席よりクルト、続いて周りをキョロ
キョロ見回しながら、キャシー登場。
クルト「さぁ、ここが泉の精の住む洞窟だよ。」
キャシー「それで何処にいるの?泉の精って・・・」
クルト「(周りを見回して。)えっと・・・泉の精!!泉の精!!」
泉の精「・・・誰?私の優雅な午後の一時を邪魔するのは・・・」
クルト「(舞台上の泉の精を認め。)泉の精!!」
クルト、キャシー、上手より舞台上へ。
泉の精「クルト・・・また欲深い人間のご案内?さぁ今度はどんな
くだらない願い事を叶える為に、私は心穏やかな時を妨
げられたのかしら・・・?(ゆっくり立ち上がる。)」
キャシー「偉そうね!くだらない願い事を叶える為に態々来たん
じゃないわ!」
クルト「キャシー!」
泉の精「(呆れたように。)まぁ・・・人間の望みなんて、皆、所詮
くだらない望みに決まってるわ・・・。車が欲しいとか・・・
家が欲しいとか・・・そうそう、お金が欲しい・・・なんて言
うのもいたわね・・・。人間の頭の中は、物欲のことで一
杯・・・。」
泉の精、歌う。
“他に考えることがないのかしら・・・?
あれが欲しいこれが欲しい
その前にもっと他に望みはないの・・・?
願いはないの・・・?
心に余裕をもたないの・・・?
あくせく働くのは何の為?”
キャシー、呼応するように歌う。
“それだけじゃないわ
美しいものを見て感動することもあるわ
美しい絵に綺麗な音楽
心動かされる時だってある”
クルト、歌う2人の間をウロウロしている。
泉の精「けれどここに来た人間は、少なくともあなたの言うよう
な心ある人間だと、私には思えないけど・・・。あなただ
ってそう・・・今までのあなたから、そんな言葉が出るの
が不思議・・・。(笑う。)」
キャシー「そりゃ!!・・・確かに私は絵も音楽も好きじゃないわ
・・・。だけど、他の人は!!」
泉の精「他の人はどうだと言うの・・・?そうね・・・あなたが今ま
でに、一番感動したことを聞かせて頂戴・・・。そうすれ
ば、私の石をあなたに差し上げるわ・・・。それとも感動
したことなんてないのかしら?(微笑む。)」
キャシー「あるわ!!あるわよ・・・感動したことくらい・・・。えっと
・・・テストで100点とった時!!それから・・・去年の
クリスマスケーキが一昨年のより大きかった時・・・!!
それから・・・それから・・・」 ※
泉の精「(笑って。)精々あなたの感動ってそんなもの・・・。」
キャシー「違うわよ!!もっとあるわ!!えっと・・・(考える。)動
物園で初めて白熊を見た時・・・朝、目覚ましなしで起
きれた時・・・髪型が1度で決まった時!ハンバーガー
のピクルスが1枚余分に入ってた時・・・。さぁ、もういい
でしょ!!一体、いくつの感動を私に言わせるつもり!
?早く、石を頂戴!!」
泉の精「どうしようかしら・・・」
キャシー「感動したことを話せば石をくれるって約束したわ!!」
泉の精「だって・・・今まで私に聞かせてくれた話しは“感動”とは
言わないわ・・・。あなたは私の質問にちゃんと答えてな
いもの・・・。石はあげられないわ・・・。」
キャシー「酷いわ!!私が何故、願いを叶える石を欲しいか知
りもしないくせに、唯一私が元の世界へ戻れるかも知
れない、願いの石をあなたは私にくれないなんて!!
」
泉の精「じゃあ、ちゃんと答えて。感動したことを・・・。何故そん
なに元の世界へ帰りたいの・・・?ここにいればパパや
ママに叱られることもない・・・妹たちの面倒を見なくて
もいい・・・勿論、学校や宿題もないわ・・・。ここにいれば
石なんて必要ないのよ・・・。」
キャシー「パパやママが叱るのは、私がいけないことをしたから
!妹たちの面倒を見るのは、私が頼りにされてるから
!勉強するのは自分の為だわ!!」 ※2
泉の精「まぁ・・・それならあなたの感動を聞かせてもらわないと
・・・。」
優しい音楽流れる。
キャシー「感動したこと・・・」
泉の精「どんなに考えたって、あなたは今まで心動かされるよう
な出来事に、出会ったことがないのよ・・・。」
キャシー「そんなことないわ!!(目を閉じる。)感動したこと・・・
そうだわ・・・この間のお誕生日に家族で行った、高原
旅行・・・。その時に見た星空・・・。今まであんな美しい
星空を見たことがあったかしら・・・。横にはパパとママ
・・・妹たちもいて・・・とても幸せな気持ちだった・・・。
溢れ返るような感情じゃなかったかも知れないわ・・・。
けど、あれは確かに美しい星空に感動したのよ・・・。
家族、皆で一緒にいられる幸せを実感したわ・・・。(目
を開ける。)口には出さなかったけど・・・。(思い出すよ
うに。)帰りたい・・・帰りたいの!!パパやママ、妹た
ちのいる世界に!!だから私は石が欲しいの!!」
キャシー、歌う。
“側にいる時には分からなかった・・・
何が幸せか・・・
いつでも会える時にはそれが当たり前・・・
いつも心が氷みたいにカチンカチン・・・
離れて初めて
会えなくなって初めて
分かることもあるわ・・・
そんな気持ちに戸惑って
この胸の痛みは一体何・・・?”
キャシー「私はここの人間じゃない・・・。帰らなけりゃいけないの
よ・・・。パパやママが心配してるわ・・・。屹度、私のこ
とを捜し回ってる・・・。早く元気な顔を見せてあげなき
ゃ!!」
泉の精「・・・そうね・・・(キャシーの手を取って、自分が持ってい
た石を渡す。)・・・約束の石・・・。少し分かったわ・・・人
間の感動がどう言うものか・・・。さっき色々、あなたが言
ったことも・・・私にはつまらないことでも、あなたには本
当に一つ一つ感動するような出来事だったのかもね・・・
。感動の大きさは其々違っても・・・。」
キャシー「(嬉しそうに微笑んで石を見る。)ありがとう!!」
クルト「キャシー・・・」
泉の精「・・・早く5つの石が集まるといいわね・・・。(微笑む。)さ
ようなら・・・」
泉の精、手を振りながら、優雅に上手へ
去る。
キャシー「ありがとう!!(泉の精の後姿に、大きく手を振る。)」
キャシー、クルト残してフェード・アウト。
――――― 第 5 場 ―――――
クルト「(嬉しそうに。)よかったね、キャシー!!」
キャシー「うん!!(不思議そうに、クルトの顔を見詰める。)何
故そんな嬉しそうな顔をするの・・・?」
クルト「どうして?君は嬉しくないのかい?」
キャシー「嬉しいわ!!だって私が自分の為に集めてる石の4
つ目が手に入って、嬉しくない訳がないじゃない!!
けど、関係のないあなたは、何故そんな嬉しそうな顔
をするの・・・?」
クルト「友達の願いが、もう直ぐ叶うからに決まってるだろ?」
キャシー「・・・友達・・・?」
クルト「うん!僕たち、もう友達じゃないか!!」
キャシー「(呆然とクルトを見詰める。)・・・クルト・・・」
クルト「やっと、ちゃんと名前を呼んでくれた!」
キャシー、仕舞ったと言った顔をする。
クルトキャシー、変なこと聞くんだな。(笑う。)」
キャシー「だって・・・友達なんて・・・友達なんて皆口ばっかり!
!・・・クルト・・・本当に嬉しそうに笑うんだもの・・・」
クルト「(微笑む。)さぁ、キャシー!残るはいよいよ最後の一つ
だ!!」
キャシー「(頷く。ポケットから出した袋に、石を入れながら。)も
う直ぐ帰れるのね、私!!さぁ一体、木の精はどこに
いるの!?」
クルト「(ニコニコしてキャシーを見詰めたまま。)・・・えっと・・・ど
こにいるって・・・?」
キャシー「ええ!!こんなに木が沢山ある森の中だもの、直ぐ
に会えそうだけど!!(笑う。)」
クルト「・・・それが・・・」
キャシー「それが?」
クルト「僕も、木の精にだけは未だ嘗て、お目にかかったことが
ないんだ・・・」
キャシー「えーっ!!会ったことがないって、どう言うこと!?あ
なた、ここにずっと住んでるんでしょ!?5人の妖精は
この森の守り神だって、あなたが言ったんじゃない!!
」
クルト「そうだけど・・・木の精だけは、いつも姿を見せないから
・・・」
キャシー「本当に木の精なんているの!?」
クルト「勿論さ!!森の一番奥深くの、樹齢何百年もの大木に
宿る精霊だって、聞いたことがあるけど・・・」
キャシー「長老が一番長生きしてるんじゃないの?」
クルト「そうだ、長老に聞いてみよう!!長老!!長老!!」
クルト、長老を呼びながら捜し回るように
キョロキョロする。
――――― “キャシーの森(原作)”4へつづく ―――――
※ この“感動したこと”、人形劇脚本とは内容が若干
変わっていると思います^^;・・・こちらの方が勿論、
先に書いているので、人形劇の方が変わったのです
が、キャシーさん、何に一体感動したと言っていたか、
ピクルス云々くらいしか記憶ありませんでした~^_^;
※2、舞台のキャシーさんは妹たちのいるお姉さん、人形
劇のキャシーさんは弟たちのいるお姉さんでしたね^^;
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(どら余談・・・(T_T))
以前、皆さんにも写真をご覧頂いた、3年近く我が家の家族
として同居していたロボロフスキーハムスターのロボちゃん
が亡くなってしまいました・・・;_;
ついこの間まで元気に走り回っていたのに・・・とっても・・・
淋しいです・・・(;_;)
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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