ローズ「(一瞬、呆然とジェフを見詰める。嬉しそうに微笑んで。)
・・・その昔・・・遠い遠いお伽の国に、ある女の子がお父
さんとお母さんと仲良く暮らしていました・・・。おうちは決
して裕福ではなく、一つのパンを3人で分けるような食事
しかできませんでしたが、いつも笑い声に満ち溢れ、それ
はそれは小さな家から、その愛情が食み出さんばかりの
温かい家庭で、女の子はとても幸せに暮らしていました。
ある年の12月・・・秋の精に、雪が降ると、冬の精が現れ
自分は消えてしまうからと、雪を降らせる力を持ったサン
タクロースは、秋の精にその力を封印されてしまい、その
年は雪に恵まれませんでした。毎年、雪を楽しみにしてい
た女の子は、いつも外に出ては空を見上げ、雪はどうし
たのだろう・・・クリスマスには降ってくれるかしら・・・と考
えていました。雪が降らないままのクリスマスイブの日・・・
いつものように郵便配達に出たお父さんは、村の雑貨屋
さんで、一握りの雪の結晶のような金平糖を、女の子へ
のクリスマスプレゼントに買い求め、もう暗くなった帰り道
を、我が家へと急ぎました。しかし岐路を急ぎ過ぎた為に
、お父さんはうっかり足を滑らせて、崖から落ちて死んで
しまったのです。女の子とお母さんは、お父さんが亡くなっ
たことは知らないで、この日の為にいつもはパン一切れ
で我慢して用意した、クリスマスのささやかなご馳走を前
に、いつまでも、いつまでもお父さんの帰りを待ちました。
天国へ行く途中、お父さんは空からそんな2人の様子を
知り、なんとかして2人に力強く生きる勇気を与えたいと
考えました。そこでお父さんは神様に最後に2人と一分
間だけ、お別れを言う時間を貰えるようにお願いをして、
2人の前へ現れました。お父さんは涙に暮れる2人を前
に、優しく微笑んで、いつまでもいつまでも2人を彼方から
見守っているから、悲しまなくてもいいんだよ・・・心はいつ
も3人一緒だと言い残し、光に包まれました。そうして天国
へ行ったお父さんは、女の子にクリスマスプレゼントを渡
すのを忘れていたことに気付き、女の子のもとへ届けたい
と握っていた金平糖を、空からばら撒きました。その時、
それを見ていたサンタクロースは、全身全霊の思いと願
いを込めて、秋の精の封印を解き放し、やっと雪を降らせ
ることができたのです。それを見た女の子は、涙で濡れ
ていた瞳を拭い、思わず両手を広げ天を仰ぎました。す
ると、トナカイに乗ったサンタクロースが、女の子の前へ
現われ“お父さんからのプレゼントだよ”と、金平糖を手
渡してくれたのです。雪と金平糖の思いがけないプレゼ
ントを貰った女の子は、空に向かって叫びました。“メリ
ークリスマス!!”そして女の子は心に固く誓ったのです。
もう泣かないからね・・・おしまい・・・。」 ※
ジェフ「(思わず拍手する。)いい話しだね・・・。サンタクロースの
贈り物か・・・。(空を見上げて。)雪・・・降るといいな・・・。」
そこへ下手よりスザンヌ、誰かを捜すように
登場。ジェフを認め駆け寄る。
スザンヌ「ジェフ!!こんなところにいたの!?皆捜してたわよ
、会議が始められないって!!」
ジェフ「仕舞った・・・」
スザンヌ「(ローズを認め、怪訝そうに。)誰だか知らないけど、
ジェフにこんなところで油売らせないでよね!!」
ローズ「ごめんなさい・・・」
ジェフ「よせよ、スザンヌ!!俺が勝手に息抜きしてただけなん
だ!!じゃあローズ、また今度ゆっくり話そう!!」
ジェフ、下手へ走り去る。
スザンヌ、ローズを睨み、ジェフに続いて
去る。
ローズ、2人が出て行った方を見ている。
スポットに浮かび上がる。(カーテン閉まる。)
ローズ、呟くように歌う。
“何故かしら・・・
心にポッカリ穴が開いたよう・・・
風のように連れ去った
あなたを思って心が痛い・・・
何故かしら・・・
こんな思いは初めてで・・・
ただとても切なくて
あなたがいなくなった今・・・
あなたにとても会いたくて・・・
ついさっきまで側にいた
あなたの温もりが
とてもとても懐かしい・・・
遠い昔に会ったような
そんな思いが溢れかえる・・・
もしかしたら
これが恋なのかしら・・・
これが愛なのかしら・・・
もしかしたら
あなたに恋したのかしら・・・
あなたを愛したのかしら・・・”
フェード・アウト。
――――― 第 5 場 ―――――
フェード・インする。(カーテン開く。)と、
中央よりに一つのベンチ。下手より、
スザンヌ、ニック、話しながら登場。
上手方へ。
スザンヌ「一体誰なのかしら、あの女!!“また今度ゆっくり話
そう”だなんて!!この間のクラス会で彼氏が一緒じ
ゃなかったのは、結局私一人!!けど、どんな男だっ
て誰一人ジェフに勝る人はいなかったって言うのに!
!あの時、ジェフが一緒に来てくれさえしていれば、私
は皆から羨望の眼差しで見られたのは、間違いなかっ
たのよ!!」
ニック「(スザンヌの話しは上の空のように、一枚の写真を胸に
抱き。)愛しい愛しい君は、僕の者!」
スザンヌ「(振り返ってニックを見る。)ちょっと聞いてるの、お兄
さん!!」
ニック「え・・・?ああ、聞いてるよ。おまえがまたジェフに振られ
たって話しだろ?」
スザンヌ「違うわよ!!あの“ローズ”とかって言う女のこと!!
」
ニック「“ローズ”?僕のローズと同じ名前だとは許せないな。」
スザンヌ「(ニックの持っていた写真を取り上げて。)どのローズ
よ!!」
ニック「やめろよ、スザンヌ!!」
スザンヌ「(写真を見て。)・・・この女・・・この女が私の言ってた
ローズよ!!」
ニック「・・・嘘だ・・・」
スザンヌ「本当よ!!(写真をニックへ差し出す。)」
ニック「ローズは付き合ってる人はいないって・・・」
スザンヌ「一体何時の話ししてるの、兄さん!!確かにあの時
ジェフとその女は親しげだったのよ!!」
ニック「そんな・・・」
スザンヌ「お兄さんが愚図愚図してるから、横取りされるのよ!
!」
ニック「どうしよう、スザンヌ・・・!!」
スザンヌ「どうしようなんて言ってないで、さっさと行動あるのみ
よ!!」
スザンヌ、ニックに訴えるように歌う。
“本当に好きなら奪いなさい!!
恋は駆け引き
情けは無用
愚図愚図してたら捕まらない!!”
ニック「だけど・・・」
“だけどなんて言ってると
何時まで経っても今のまま
ずっと不安で心配で
その内相手は
指の間を擦り抜ける!!”
ニック「そうか!」
スザンヌ「そうよ!男なら強引に行かなくちゃ!!私だって、ジ
ェフのこと諦めたりしないんだから!!」
ニック「そうとなれば、善は急げ!!」
スザンヌ「(大きく頷く。)」
スザンヌ、ニック、上手へ急ぎ足で去る。
入れ代わるように、下手よりジェフとジョーイ、
話しながら登場。
ジョーイ「チョコレート、ありがとう!!すっごく美味かったよ!!
俺、あんなの食べたことないや・・・。」
ジェフ「そうか、良かったな。」
ジョーイ「それが姉ちゃんと一緒に食べようと思って、そう言った
ら姉ちゃん、甘いもの嫌いなんだってさ。長いこと隣に住
んでたけど、知らなかったなぁ・・・。」
ジェフ「(何か思い出したように微笑む。)おまえとローズって・・・
本当の姉弟以上にお互いを大切に思っているのがよく分
かったよ・・・。」
ジョーイ「え?俺はどうか分かんないけど、姉ちゃんは俺にはす
っごく優しいんだ・・・。よく父ちゃんに締め出されて泣い
てる時、姉ちゃんは何時も一緒にいてくれたんだ・・・。
雨の時でも、雪が降って寒くて凍えそうな時でも・・・。姉
ちゃんが初めて働きに出て、給料貰った時も、一杯ご馳
走してもらったんだぜ!あの頃の俺は、ろくすっぽ食べ
させてもらってなかったから、すっごく嬉しかった・・・。俺
、姉ちゃんの為だったら何だってする!!そう決めてる
んだ!」
ジェフ「・・・そうか・・・」
ジョーイ「俺、姉ちゃんの彼氏になる奴は、ちょっとやそっとの奴
じゃ許さないんだ!姉ちゃんを心から大切にしてくれて、
愛してくれる奴・・・。そう言う奴が現れない限り、俺が姉
ちゃん守って行く!!(チラッとジェフを見て。)そう思っ
て頑張ってくのも、もうちょっとの間かな・・・?(急に真面
目な顔付きになって。)兄ちゃん・・・この間、靴磨きに一
緒に来た、兄ちゃんの隣にいた男の人・・・兄ちゃんの友
達かい・・・?」
ジェフ「ああ、フレッドなら学生時代から苦楽を共にしてきた親友
さ。」
ジョーイ「・・・そうか・・・」
ジェフ「あいつが何か・・・?」
ジョーイ「・・・兄ちゃんにとって、大切な人なんだ・・・。そんな人
のこと、俺がどうこう言うのはどうかと思うんだけど・・・」
ジェフ「・・・どうした?」
ジョーイ「・・・俺・・・見たんだ・・・」
ジェフ「見たって・・・何を・・・?」
ジョーイ「覚えてるだろ・・・?ここで初めて俺が兄ちゃんと出会
った時のこと・・・」
ジェフ「ああ・・・」
ジョーイ「俺・・・あの夜、殺人を目撃したんだ!!それで追われ
てた・・・」
ジェフ「・・・何だって・・・?」
ジョーイ「たまたまあの日に限って、裏通りを抜けて帰ろうとした
ら偶然・・・。何人かいた黒尽くめの男達の中に・・・間違
いない・・・あの時の人がいたんだ!!」
ジェフ「まさか・・・」
ジョーイ「本当なんだ!!俺、頭悪いけど目だけは確かなんだ
!!信じてくれよ、兄ちゃん!!俺、嘘は言わない・・・
!!兄ちゃんの友達なら悪い人じゃないかも知れない
・・・。だからひょっとしたら見間違いかも知れないし、た
またま居合わせただけかも知れない・・・。けど、俺あい
つらに顔見られてるんだ!!何時かきっと殺される!!
だからその前に・・・!!」
ジェフ「おい!!落ち着けよ・・・。分かったよ。おまえがそこまで
言うんだ・・・。他人の空似だってこともあるだろう。一度、
確かめてみるから心配するな。いいな?」
ジョーイ「・・・うん・・・」
ジェフ、ジョーイ、何か話している風に。
その時、上手より何か揉めているように、
ニック、ローズ登場。
ニック「(ローズに纏わり付くように。)ねぇ、いいだろ?これから
僕ん家に来てくれよ。」
ローズ「困ります・・・あの・・・」
ニック「そんなこと言わずに、店に行くまでまだもう少し時間があ
るじゃない!折角、ローズの為に美味しいクッキー焼いた
んだ!」
ローズ「でも・・・」
ニック「(思わずローズの腕を掴んで引っ張るように。)ねぇ、お
いでよ!!」
ローズ「離して・・・」
ジョーイ、ローズに気付き、驚いて駆け寄る。
ジョーイ「姉ちゃん!!」
ジェフ、気付いてジョーイに続く。
ジョーイ、ニックに殴りかかり、
2人喧嘩になる。
ローズ「ジョーイ!!」
ニック「この餓鬼!!」
ジョーイ「姉ちゃんに何すんだ!!」
ジェフ「(慌てて2人に駆け寄り、止めに入る。)やめろ!!やめ
るんだ!!」
2人、ジェフの制止に離れて、息も
荒々しく睨み合う。
ジョーイ「兄ちゃん、放っといてくれよ!!こいつは一度叩きの
めしてやんなきゃならないんだ!!」
ニック「偉そうに!!」
ジョーイ「なんだと!!」
ジェフ「(ジョーイを押さえて。)やめろ、ジョーイ!!」
ニック「糞う・・・もう少しだったのに、余計なところへ出て来やが
って・・・!!」
ジョーイ「何がもう少しなんだよ!!」
ニック「関係ないね!!」
ジェフ「(ニックに向いて。)おまえも子ども相手に恥ずかしくない
のか?」
ニック「全然!!(何か気付いたように。)ははぁ・・・、おまえが
ジェフだな・・・?おまえが代わりにやるか!!(ジェフに
殴りかかる。)」
ジェフ、サッと避け、ニックの腕を掴む。
ニック「いててて・・・」
ジェフ「怪我しないうちにやめるんだな。」
ニック「離せ・・・!!離しやがれ!!」
ジェフ「(ニックの腕を離して。)自慢じゃないが、俺は柔道3段
空手3段なんだ。(ニヤリとして指を鳴らすように。)」
ニック「(呆然とジェフを見詰める。後退りしながら。)え・・・3・・・
あ・・・いや・・・(作り笑いして。)・・・冗談だろ・・・いやだな
・・・(大分離れて。)畜生!!覚えとけ!!馬鹿野郎!!
」
ニック、上手へ走り去る。
ジェフ「・・・子どもみたいな奴だな・・・。」
ジョーイ「・・・凄い・・・兄ちゃん・・・柔道空手3段って・・・」
ジェフ「ばーか、冗談だよ。腕力に自信なくはないけど、柔道空
手なんてやったこともないさ。(笑う。)」
ジョーイ「・・・なーんだ・・・。(思わず笑う。ハッとしてローズを見
る。)姉ちゃん、大丈夫だったか!?」
ローズ「(頷く。声を上擦らせて。)・・・ありがと・・・」
ジョーイ「姉ちゃん・・・?」
ジェフ「ローズ?」
ローズ「・・・大丈夫・・・(言い聞かせるように。)大丈夫・・・(思わ
ず泣き出す。)」
ジョーイ「姉ちゃん!?(慌てて。)」
ジェフ「(優しく微笑んで、ローズをそっと抱き寄せる。)もう、大
丈夫だから・・・。」
ローズ、一瞬驚いた面持ちをするが、
安心したように微笑む。
――――― “ジェフ・カート”4へつづく ―――――
※ すみません~・・・(>_<)
ものすごーく読み難いですよね~(-_-;)
私も書き写しながら、今どこら辺を書いてるのか何回も
分からなくなりました~^_^;
後で読み直してみて、抜けている言葉があったことに
気付いて入れなおしたのですが・・・大変でした(@_@)
― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪
(おまけフォト^^;)
ちょっとピンボケぎみですが・・・^_^;
11月の記念公演チラシ(失敗^^;)です(^^)v
必要に迫られて慌てて作った為、字体が変換され
ていたことに気付かず印刷してしまいました"^_^"
失敗ですが、折角なのでご覧下さい(*^_^*)
成功は、そのうち“公演お知らせ”のページにて・・・。
http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
http://ritorupain.blogspot.com/
http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
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