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プロ野球で戦後初の三冠王に輝いた名キャッチャーで,監督としても日本一に3回輝いた野村克也(84歳)さんが11日,虚血性心不全のため亡くなった。現役時代には,元巨人の長嶋茂雄さん,王貞治さんと自らを比較し「王や長嶋がヒマワリなら,オレはひっそりと日本海に咲く月見草」とたとえた。
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〝生涯一捕手〟を座右の銘とした現役時代は,捕手として世界初の三冠王を獲得。通算本塁打数(657本),通算打点数(1988打点)は,ともに王貞治氏に次ぐ歴代2位を記録した。また,出場試合数は,選手として歴代2位(3017試合),監督しても歴代3位(3204試合)である。
プロ野球界で,野村克也さんほど著書の多い人物はいない。ジャンルは大きく2つに分かれる。1つは,プロ野球での経験と実績に基づく著書である。スター選手たちのエピソードから,組織論や人生論,さらには今年のNHK大河ドラマの主人公,明智光秀まで論じている。
もう1つのテーマは,3年前に先立たれた,妻の沙知代さんの思い出をつづった著作である。昨年3月に出た『ありがとうを言えなくて』(講談社)では,自身の生い立ちにも触れていた。
◆野村克也さんの著書
『敵は我に在り〈新装版〉上巻』(KKベストセラーズ)
『続・敵は我に在り反乱分子撃退の管理術』(KKベストセラーズ)
『ノムダス勝者の資格』(発行:ニッポン放送プロジェクト/発売:扶桑社)
『「功なき者」を活かす時代を超えた人材活用の極意』(筑紫哲也との共著/朝日新聞出版)
『野村ノートJ(小学館)
『野村の流儀人生の教えとなる257の言葉』(ぴあ)
『野村再生工場一一叱り方,褒め方,教え方』(発行:角川書店/発売:角川グループパブリッシング)
『負けに不思議の負けなし〈完全版〉上巻』(朝日新聞出版)
『野村のr眼」』(KKベストセラーズ)
『野村の実践「論語」』(小学館)
『野村ポヤキ語録-人を変える言葉,人を動かす言葉』(発行:角川書店/発売:角川グループパブリッシング)
『考える野球』(発行:角川マーケテイング/発売:角川グループパブリッシング)
『私が野球から学んだ人生で最も大切な101のこと』(海竜社)
『人生を勝利に導く金言」(致知出版社)
『そなえ-35歳までに学んでおくべきこと』(大和書房)
『野村克也の人生論この一球」(海竜社)
『ノムラの教え弱者の戦略99の名言』(講談社)
『負けかたの極意』(講談社)
『リーダー論-覚悟を持って道を示せ』(大和書房)
『人生に打ち勝つ野村のボヤキ』(三笠書房)
『野生の教育論-闘争心と教養をどう磨くか』(ダイヤモンド社)
『野村克也の「菜根謂」』(宝島社)
『理は変革の中に在り』(KKベストセラーズ)
『なぜか結果を出す人の理由』(集英社)
『リ-ダーのための「人を見抜く力」』(詩想社)
『「小事」が大事を生む」』(扶桑社)
数多い野村さんの著書のうち,『思考を変えれば人生は劇的に変わる 野村の金言』セブン&アイ出版 (2016) から,示唆と含蓄に富む〝名言・語録〟をピックアップして,ご紹介する。
◆すべては自己を知ることからはじまる
(p8~p9)
人は誰でも,それぞれに特徴や長所がある。にもかかわらず,人生がうまくいかないのは,その特徴や長所に気づいていないか,または,それを活かす術を知らないからだ。そうだとしたら,実にもったいないことである。
「自分を知らない者は,ほかのことを理解きるわけがない。自分を知る人がものを知る人だ」。
これは,吉田兼好が書いた『徒然草』に出てくる一節である。押し広げて解釈すると,「己を知らない人間が大成する道理がない」ということであろう。
つまり,人生をより良いものにするためには,自己を知ることがスタートになるということである。己を知れば,自分がほかの人より秀でている部分に気づくことができ,それを活かすために自分に足りないこと,身につけなければいけないことを正しく認識できるようになる。
そうやって自分の課題がわかったら,それを補い,克服するための方法論を必死に考える。
人生とは,その繰り返しなのである。
◆野球は考えてからプレーする
p58
サッカーは走りながら考える。その点,野球 はじっと考えてからプレーするスポーツである。間のスポーツである野球には,次のプレ,次のボールに対して,〝考える″〝備える″とい う時間が与えられている。そのあいだに考え抜いて,成功する確率の高い一投一打を選び出せばいい。
つまり,この考える野球を突き詰めていけば,相手がどんなに手強くても勝機は訪れるということになる。野球もビジネスも同じで,要はどう頭を使うかに尽きるのだ。
◆失敗と書いて,せいちょう(成長)と読む
p116
大切なのは,成功に浮かれることではなく,失敗を見つめることだ。山を登るのは大変だが,下るのはあっという間。
転げ落ちないためには,下るきっかけになった失敗を糧にすることが必要不可欠である。「なぜ?」と疑問を持ち,理由を突き詰め,分析し,対策を講じる。そうやって次につなげることで,また山を登る。失敗や負けは,人を成長させてくれるのだ。
失敗し,負けたからこそ,自分のやり方に疑問を抱くことができ,それを正そうと考えることができる。気合いや根性だけでは乗り越えられない壁にぶつかるからこそ,短所や弱点を克服しなければならないと素直に受け止められるようになる。成功や勝利からは,学べないことである。
そして,「どうすればいいのか」「なにが足りないのか」を考え,具体策として「これならどうだ」と何度も試行錯誤するなかで,人間は成長し,本当の実力を身につけていくものだ。
だからこそ,わたしは常々こう言っている。「失敗と書いて,せいちょう(成長)と読む」と。
(この稿・続く)