日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」をめぐり、全国児童養護施設協議会や熊本市の慈恵病院から抗議,さらには内容の見直しを求められた問題が,世間の関心と注目を集めた。この問題と較べると地味ではあるが,村上春樹氏の小説に対するその舞台となった地元の抗議の動きは,考えさせられるものがある。
“芸術や芸能における表現の自由と社会常識”に関連して,村上春樹氏の短編小説「ドライブ・マイ・カー」に不適切な表現があるとして、北海道中頓別町の町議が問題視しての抗議,それを受けて「内容を変える」との見解を発表した村上氏の対応。一連の動きとその顛末を,以下に示す。
◇ 問題となった表現--「中頓別町(なかとんべつちょう)では,たばこのポイ捨てが普通のこと・・・・」
新聞報道によると,作家の村上春樹氏が月刊誌「文芸春秋」の2013年12月号に発表した短編小説で、北海道中頓別(なかとんべつ)町ではたばこのポイ捨 てが「普通のこと」と表現したのは事実に反するとして,同町の町議有志が文芸春秋に真意を尋ねる質問状を近く送る。町議は「町にとって屈辱的な内容。見過ごせな い」と話している。
町議有志は「町の9割が森林で防火意識が高く、車からのたばこのポイ捨てが『普通』というのはありえない」などとしている。 村上氏の小説では、「羊をめぐる冒険」で中頓別町に近い美深町がモデルとされる「十二滝町」が舞台となったほか、「ダンス・ダンス・ダンス」「ノルウェ イの森」などでも札幌や旭川といった北海道の街が繰り返し登場する。
◆ 村上春樹氏の対応 --指摘された町名を変更する意向
月刊誌文藝春秋昨年12月号に発表した短編小説「ドライブ・マイ・カー」で,“北海道中頓別(なかとんべつ)町ではたばこのポイ捨てが「普通のこと」”と表現し物議をかもしたことなどを受け,村上氏が7日、文藝春秋を通じてマスコミ各社にファクスで見解を発表。単行本化の際には、指摘された町名を変更する意向を明かした。
【以下村上氏の見解全文】
「僕は北海道という土地が好きで、これまでに何度も訪れています。小説の舞台としても何度か使わせていただきましたし、サロマ湖ウルトラ・マラソンも走りました。ですから僕としてはあくまで親近感をもって今回の小説を書いたつもりなのですが、その結果として、そこに住んでおられる人々を不快な気持ちにさせたとしたら、それは僕にとってまことに心苦しいことであり、残念なことです。中頓別町という名前の響きが昔から好きで、今回小説の中で使わせていただいたのですが、これ以上のご迷惑をかけないよう、単行本にする時には別の名前に変えたいと思っています」
◆文藝春秋の見解-作者の表現を尊重し支持
文藝春秋は同日、町議からの質問が届いていないことを説明した上で、「『ドライブ・マイ・カー』は小説作品であり、文藝春秋は作者の表現を尊重し支持します」との見解を示した。
◇中頓別町
北海道旭川市の北約130キロ、南宗谷地方にある人口約1900人の山間の町。明治期は砂金の採取で栄えた。人口はピークの1950年には約7600だったが、林業の衰退やJR天北線の廃止(1989年)などで急速に過疎化が進んでいる。
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「明日、ママがいない」めぐり,日本テレビが全養協へ文書で回答-
児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」をめぐり、全国児童養護施設協議会や熊本市の慈恵病院からの抗議,さらには内容の見 直しを求められた問題。当初は内容の見直し,謝罪はしないとしていた日本テレビが,「施設の子どもたちが傷ついたりした事実があるならば、重く受け止め、 子どもたちにお詫(わ)び申し上げます」などと文書で回答した。
⇒⇒ 日本テレビ ⇒ 全国児童養護施設協議会に回答 http://www.ntv.co.jp/oshirase/20140205.html
新聞報道によると,児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」をめぐり、全国児童養護施設協議会から内容の見直しを求められている問題で日本テレビ http://www.ntv.co.jp/ は4日, 制作局長らが同協議会を訪れ,「施設の子どもたちが傷ついたりした事実があるならば、重く受け止め、子どもたちにお詫(わ)び申し上げます」などと文書で回答した。 同協議会と全国里親会、熊本市の慈恵病院 http://jikei-hp.or.jp/ の3者が5日,東京都内で記者会見し明らかにした。
日本テレビは,施設の現状について取材不足との指摘には対しては,「表現上留意すべき点などをより慎重に確認しておく必要があった」と認めた。ただし、子 役が「ポスト」のあだ名で呼ばれるなど問題と指摘された点を改善するかについては「これまで以上に子供たちに配慮し,誤解を生まないよう細心の注意を払 う」と記すにとどまった。
全国児童養護施設協議会の藤野興一会長は,「我々の要望を理解し、内容が改善されると受け止めた。今後の放映 を見守りたい」と述べた。加えて,「傷ついた子供に、この文書では謝罪はすまない。公共の場で謝罪してほしいとお願いした。また、あまりにも社会的養護に ついて理解が不足している。理解を深めるようにお願いした」と語った。
会見に同席した慈恵病院側は,放送倫理・番組向上機構(BPO) http://www.bpo.gr.jp/ に審議の申し立てを行っているが,今後もあり得る社会的弱者の番組に生かしてほしいと,申し立ては取り下げないという。
日本テレビ総合広報部は「ご指摘を改めて真摯に受け止め,引き続き細心の注意を払いながら番組制作に努める」とコメントした。 これまで抗議に対して日本テレビは,放送中止や謝罪には応じない考えを熊本市の慈恵病院側に伝えていた。また,日テレの大久保好男社長は,1月20日の定例記者会見で,「最後まで見ていただければ、私たちの意図が理解していただける」,として放送は継続する意向を明らかにしていた。
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日本テレビ ⇒ 全国児童養護施設協議会への回答文の抜粋 (執行役員 制作局長名 2月4日付け)
本ドラマは、子どもたちが厳しい境遇に立ち向かいながら、前向きに愛情をつかむ姿を描くことをテーマに企画されたもので、そのことは、本ドラマを見続けて いただければ必ずやご理解いただけるものと考えております。また制作にあたっては、児童養護施設の施設長を経験された専門家に監修をお願いするなどの配慮 をいたしておりました。
しかしながら、貴協議会が1月29日付書状等においてご指摘されるように、本ドラマを視聴した施設の子どもたちが傷つい たり、同書状別紙の実態アンケートに記載されたような事実が存在するのであるならば、もとより本ドラマの意図するところではありませんが、そのような結果 について重く受けとめるとともに、衷心より子どもたちにお詫び申し上げます。
さらに、貴協議会から事前に児童養護施設を取り巻く環境などの実情を詳細に伺い、表現上留意すべき点などをより慎重に確認しておく必要があったと認識しております。
本ドラマにおきましては、貴協議会からのご指摘も踏まえ、これまで以上に子どもたちに配慮してまいります。具体的かつ詳細な点につきましては、ドラマとい う性質上、ご説明することはご容赦頂きたく存じます。ご指摘頂いた点については重く受け止め、すでに主体的に番組制作に活かしております。
元来、弊社の本ドラマ制作のテーマは最初に述べさせていただいたとおりであります。貴協議会のご活動と、方向性において異なるものではないと考えておりま す。ストーリーは、当初の構想に従って展開致します。また、細部において誤解を生むようなことがないよう、細心の注意を払ってまいる所存ですので、改めて このドラマを最後までご覧になって頂きたく存じます。
出典: http://www.ntv.co.jp/oshirase/20140205.html
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