20年の初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって,これまでごく普通にできていたことが当たり前ではなくなり,葬儀のあり方や理想の逝き方にも変化が見られます。
また,自動車業界に象徴されるように,百年に一度ともいうイノベーションによって,過去100年間とはまったく違う構造変化への移行により,既存の知識や技術が通じない時代を迎えました。
こうした激変の時代にあって,"老人の価値はどこにあるか?" と問われる所であり,価値がなければ切り捨てられかねません。まさに,「老兵は死なず,ただ消え去るのみ。」(ダグラス・マッカーサー)の状況です。
社会構造や産業構造の激変期にあって,佐藤愛子さんは,自著『こんな生き方もある』(角川新書)で,「姥捨山」の老婆の"灰で縄をなう"の昔話を例に,老人の価値を説いています。まさに,我が意を得たり,言い得て妙であります。
◆ 老人の価値 ◆
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『こんな生き方もある』(31ページ)
今の世の中は無駄なもの、即効性のないものは切り捨てられて行く世の中だ。老人の価値はどこにあるか? と聞いた人がいた。あたかも価値があれば認め、価値がなければ切り捨てようと気構えているかのように。(中略)
老人の価値は若者よりも沢山の人生を生きていることだと私は思う。失敗した人生も成功した人生も頑固な人生も、怠け者の人生も、それなりに生きて来た実績を抱えている。
「石の上に縄を置いて端から燃やせばよい」
おぼすて山に隠された老婆の、答を聞いてみても何でもないこの智恵、何でもないその智恵は長い人生を生きてきたということの中から生まれて来る。後から生きて行く者はその智恵を引き出して自分の人生の肥しにするべきではないだろうか。
◆ 「姥捨山」老婆の知恵 "灰で縄をなう" ◆
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『こんな生き方もある』(25ページ~26ページ)
一人の若者が老婆を背負って山道を登って行く。(中略)年を取った親は山奥へ捨てよという国の掟に従って今、彼は老婆を捨てに行くところなのである。しかし親孝行な彼は老母を捨てることが出来ない。国の掟に叛いて山奥の一軒家にそっと母を隠す。
そのうちに国に困ったことが起きた。隣国から難問が持ち込まれ、それに答えることが出来なければ国は滅ぼされるのである。その難問の一つは灰で縄をなってくれという注文である。国中の智恵老学者が集まって考えたが誰も灰で縄をなうことは出来ない。そのとき若者はひそかに山奥の老母を訪ねてそのことを相談した。すると老母は答えた。
「石の上に縄を置いてそれを端から燃やせばよい」
若者はそれによって灰の縄を作り、国は危難を免がれ、「殿さまはほうびに若者の年とったお母さんを家へ連れて帰ることをお許しになりました」。
◆佐藤愛子さんの言に我が意を得て 78歳呑兵衛じいさんの戯言!!◆
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「俺の価値は若者よりも沢山の人生を生きていることなのです。失敗を重ねた頑固者,生来の怠け者でありますが,それなりに生きて来ました。大いに出しゃばって,社会の役に立とうと思います。ものわかりのいい爺さんになろうとは全く思っていません」
--多分,うるさいだけの頑固ジジイと,いやがられるでしょう。いやがられてもかまわない。そんなこと考えたら生きていけません。」---
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