日本電産株式会社http://www.nidec.com/ja-JP/の代表取締役社長の永守重信氏は、一代で日本電産をコンピュータのHDDを駆動させるスピンドルモーターの製造にかけては世界シェア70%を誇る巨大企業に育てあげた。常に前向きで積極的な考え方を説く、突出した独自の経営哲学の持ち主としても知られる。1944年京都府生まれ。
職業訓練大学校を卒業した永守重信氏は、1973年に日本電産株式会社を設立した。氏は海外に活路を求め,単身アメリカに渡り、大口取引先を開拓した。アメリカに続いてアジア、ヨーロッパへも販路を広げた。
永守氏は、また経営再建の名手としても知られる。不振にあえぐ企業20社以上の再建を手掛け、それらすべての再生を果たしている。
「自分のポストを脅かす部下を育てろ」
わたしは基本的に成長論者である。企業は存在するかぎり、常に成長し続けなければならない。成長なしに企業の活性化は、図れないと考えている。
これは、いまの日本の状況を見ればよくわかるはずだ。経済成長が止まる、あるいは後退しはじめると、企業はこぞって生産量を調整する。当然余剰人員が生まれて、失業者が増える。消費はますます落ち込んで、経済はさらに低迷する。この悪循環が繰り返されると、やがて国は滅びてしまう。最近の例ではソ連が崩壊し、ロシアに生まれ変わるなど、これまでの世界の歴史はこうしたことの繰り返しの連続であった。
企業も成長が持続しなければつぶれてしまうか、現状維持が精一杯でバイタリティーも活力も感じられない企業として細々と事業を続けるしかない。
身近なところでいえば、会社の成長が止まると新入社員が迎えられなくなる。そうすると、その前の年に入社した社員は、いつまでも下っば社員であることを余儀なくされる。これではいつまでたってもチャンスは巡ってこないし、やりがいのある仕事にチャレンジすることもできない。
このことは、自分の所属している部門やグループにも当てはまる。部門の業績をあげられなければ部下も増えず、上にも行けない。やがて、職場全体に沈滞ムードが漂い、全員が仕事への情熱、熱意、執念を失ってしまう。
では、どうすれば業績があげられるのかといえば、部下をしっかりと育てることだ。たとえば、現在のポストが係長なら、自分の部下を係長に育てる。課長であれば、係長を課長にする。そうすれば業績は自然に伸びていく。そんなことをすると自分の立場はどうなるのかと考える人は、組織のことがまるでわかっていない人だ。
結論から先にいうと、係長を育てられる人は課長になる資格があるし、部下を課長にできる人は次長や部長になる力があるという証明なのである。
逆にいえば、部下を係長に育てることができなければ、自分がいつまでも係長をやらないといけない。また、係長を課長にできないような人間に、次長や部長の席を任せることなどできるはずがないのである。
こう考えていくと、自分のポストは自分で決められることがわかるはずだ。「会社はオレの実力をわかっていない」とグチをこぼすより、部下を動かし、育てることに専念すべきである。
* 『 「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる 』 永守重信 三笠書房
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