佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

(回想)最初は四畳半の猫部屋から

2018年08月06日 | 猫・擬人化日記
今年の4月18日、ウチは「のり丸」という人間の家に連れて来られたんじゃけど…なんせ、知らん場所じゃし、怖いのなんの……で、ハードキャリーの奥深くで丸くなって、用心深く周囲の様子を伺っとった。

「今日からここが我が家だよ」
と、のり丸は弾んだ口調で言いながらキャリーの扉を開けたけど、そこでノコノコと出るようなウチじゃない。
耳をイカのように真一文字にして、更にジリジリと奥へ奥へと後ずさった。

のり丸は頭を抱えとった。
「…あぁ。やっぱりか。警戒心強すぎるタイプか。まさかの高難易度の猫か…」
…心の声は口からダダ漏れだったけどの。


-----ここに来る前、ペットショップのオーナーが、のり丸にこんなことを言うとったわ。

「このコは2日間ぐらいは何も食べないかもしれません。この店に来た時も、丸2日間は何も口にしませんでしたし」
「それに最初の何日かはキャリーから出てこないかもしれませんよ…」

-----ウチはペットショップを転々とするたびに激しいストレスに襲われて、2日間は何も食べれんかった。
(猫が24時間以上絶食すると肝臓を悪くするらしく、若くしてウチの肝臓の数値が怪しいのも、そのせいじゃね)


(ンあ?何?)
いきなりキャリーの中をデカイ顔がのぞいとった。
ウチは恐怖で目を見開き、震えながらのり丸を見上げた。
のり丸はウチの目をジィっと見ながら、カメラのスローシャッターのようにゆっくりと瞬きをした。

「…目を閉じる…ゆっくり開ける…目を閉じる…ゆっくり開ける…猫の瞬きに合わせる…これが猫の警戒心を解くコツや」
のり丸はなんやブツクサ呟きながら、ひたすらゆっくりと大袈裟な瞬きをしとった。

「絶対に無理にキャリーから引き出してはならない…猫が出てくるのを根気よく待つ…猫が出てきても自分から近寄らない…」
どうやら「辛抱強く待て」と、自分自身に言い聞かせているようじゃったのぅ。


のり丸の家に来て、最初の1日目はそんな感じのスタートじゃった。
4畳半の部屋を猫部屋とし、トイレ・エサ・水の3点セットはキャリーのすぐ前に用意された。
扉は締められ、その日はそれっきり、のり丸が猫部屋に入ってくることはなかった。
どうやら一晩、ウチをそっとしておくことにしたようじゃ。

翌朝、のり丸は猫部屋に入ってきた。
ウチは座卓の下におったが、すたこらさっさとキャリーの中に移動した。

「おおぅ、食べとる!ちゃんと食べとる!トイレもしとる!よかったぁ~!安心したぁ~!」
のり丸は大はしゃぎしとった。

「今から仕事に行ってくるよ。ひとりぼっちで置いていくのは心配だけど、大丈夫だからね、怖くないからね」
のり丸の「猫なで声」がやけに気味が悪く、再びウチはキャリーの奥深くに縮こまった。

その日の晩から、のり丸は猫部屋に訪ねてきた。
3時間ぐらい居座って、わざとらしくウチを無視して、本を読んだり、スマホを見たりしとった。

2日目、ウチはキャリーからそっと出て、のり丸の前をスーっと歩くも、のり丸は知らんぷりじゃ。

3日目、ウチはのり丸の1メートル先の所でお腹を見せてゴロンする、のり丸は「えぇ?もうゴロン?早っ!」と目を丸くしながらも、震える声で「ありがとう、ありがとう」と言いながら感激に浸っとった。
ウチのお腹を触りたい右手を左手で制御しながらグッと我慢しとったな。

4日目、ウチはうつ伏せで寝とるのり丸の背中をフミフミしてみる。
じゃが、ウチはのり丸のことがまだ怖いから、高速で「フミフミフミフミ…」と素早くして、サッと逃げる。
のり丸はうつ伏せのままガッツポーズしながら、「やったーっ、やったーっ」と悶えまくっとったの。

実際のところ、ウチがのり丸と仲良くなるスピードは、のり丸の予想を超えてはるかに早かったんじゃ。


1週間、経った頃かの。
ウチは初めて声を発した。
それまではサイレントを決め込んどった。

「これがロシアンブルーの真骨頂か。なんて静かなんだ。ボイスレスキャットというのは本当だったな」
あまりのウチの静かさに「目からウロコ」とか言いながら、のり丸は随分と感心しとったようじゃ。

そんな折、ウチは突然「割れ鐘」のような声で叫びはじめた。
「ンなぁ~お!わぉ~~ん!ンなぁ~~~なおぉ~~~ん」
と、これまでのウチから想像できんくらいの大声でのぉ。

ま、ゆうたら発情期じゃ。
まだ完全にのり丸との信頼関係が築けていない段階で、発情期が先に来てしもうたんじゃ。

それからというもの、昼夜問わず、ウチは叫びまくった。
もちろん隣家に届くように、マンション中に響き渡るようにの。

「オス共ーっ!オス共ーっ!ウチはここじゃーっ!こらぁーオスっ!はよ来いや!オース!オース!」
と、あらん限りの声で2週間も叫びまくったけぇ、のり丸もたまらんかったじゃろうね。



次回からウチの発情期の様子と、ウチが受けた避妊手術について話していく予定じゃ。

しばらく「過去」は早送りにするけ、ざっくり駆け抜けていく感じになると思うけんど。

なんで早送りかって?
それは「現在」に言いたいことが山盛りあるからじゃ。



じゃぁ、またの。