佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

(回想)魔物猫と守り神猫について 2

2018年08月26日 | 猫・擬人化日記
窓から外界を眺める。
身体の中を風が吹き抜け、風の声を聴く。
遠い海原から運ばれてきた湿った空気のにおいを嗅ぎ、目を細めて感覚を研ぎ澄ます。
 
毎日、人工的な建物の一室から、全世界を感じとる。
…ウチの日常とはそんなものじゃ。
 

【玄関横の部屋の窓にも脱走防止フェンスがある】
 

人間は自然の摂理から離れて複雑になり、いつしか本質から離れた状態になっとる。
オートメーション化が進む社会の中で、ますます本質から遠ざかっとるの。
 
きっと本質から離れとるから、「本質」でありたいと願うんじゃろう。
きっと本質から離れとるから、自然のエネルギーに触れて「人間界で付着した『穢れ』みたいなもの」を落とそうとするんじゃろう。
 
動物は目の前の環境に反応し、ただ本質であり続ける。
ウチの場合は、ただ猫であり続ける。
 
人間社会に組み込まれた「動物」は皆、人工的な環境の中で「本質」であり続ける。
そういう存在に触れた時、人間はいろんな反応をする。
その反応によって、我々猫族は「魔物猫」にされてみたり、「守り神猫」にされてみたり…。
 
ただそれだけのことなんじゃ。
 
 

【人口的な空間の中に住んでいる人間:天満宮】
 
 
…のり丸も、そうじゃ。
「自分が猫みたいだから、猫を飼ってしまったのか」などと言っておるが、(顔も猫に似とらんし)猫の気質というものを都合よく解釈しとるだけじゃ。
 
人間は「人工的な社会」の中で幾層もの仮面を張り付けて生活しているうちに、仮面の下に何があったのか、おそらく忘れてしまったのじゃろうな。
 

【日々発展していく文明社会:梅田】
 
 
これまでの歴史の中で、他者のつけている仮面と、自分のつけている仮面を比較し合うようなゲームをやりすぎたのかもしれんの。
戦ってレベル上げて、課金したり、アイテムをゲットしたり、
盲信したり、疑いすぎたり、混乱したり、その想像力によって新たな心配を次々と作り出し、
他の人間のエネルギーを奪ったり、逆にエネルギーを盗まれたりしとるうちに、訳がわからなくなってしまったのじゃ。
 
何が本質だったのか…。
 
 
さて。
=====5月31日=====
 

【日帰りの避妊手術】
 
 
午前11時に「手術室」に入り、当日の午後6時には自宅に戻った。
動物病院で「今晩が肝心ですよ」と獣医に言われて、のり丸はひどく動揺していた。
 
午後8時には自力でトイレに行き、尿をした。
半日分の量だから、勢いよく音がした。
しかし手足は冷たく、食欲もなく、その後はずっと横たわっていた。
 
そんなウチの前で、のり丸は何度も何度も土下座をしていた。
のり丸自身も、なぜ自分がそんなことをしているのか、よくわかってなかったようじゃの。
まるで、御神木の前で祈りをささげているように、ウチの前でうずくまっておったのじゃ。
 


【お尻部分はちゃんと開いている】
 

【10日間この状態…猫相も悪くなる】
 
 
シンプルなことじゃ。
のり丸は「邪心のない」むき出しの純粋さに憧れておったから、ウチと暮らすことにした。
 
その選択をしたことで、多元宇宙的には「ウチがおる人生」と「ウチのおらん人生」にのり丸の人生は枝分かれした。
 
「ウチがおる人生」では、のり丸は仕事場で、ひとりぼっちで家にいるウチのことを考えて、帰宅の頃にはソワソワしとる。
「ウチがおらん人生」にいるのり丸は、「今日はどこで外食しようか」とぼんやりと考えとるだけじゃろう。
 
ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音がすると、ウチはサッと隠れる。
 ロミーっ、ロミーっと呼ぶ声が聞こえると、ウチは扉から顔を出して「んナ」と控え目な返事をしながら、そっとのり丸に近寄っていく。
 
たぶん、のり丸はそんな日常がずっと続くことを願っとる。
 
時々、祈りにも似たような感情を込めて、ウチのことをじっと見つめておるからの……。
 
 【相変わらず、手ブレ画像】
 
 
じゃあ、またの。