佇む猫 (2) Dr.ロミと助手のアオの物語

気位の高いロシアンブルー(Dr.ロミ)と、野良出身で粗野な茶白(助手のアオ)の日常。主に擬人化日記。

(回想)魔物猫と守り神猫について 1

2018年08月20日 | 猫・擬人化日記
のり丸の読んでいる本に、茶色の細い紐がついているものがある。
「スピン」というもので、本に直接くっついている「しおり」らしいのじゃが、ウチはこれが大好きじゃ。
スピンがウチの目の前でブラブラ、チロチロと動いとるのをみると、飛びつかずにはいられない。


【揺れるスピンをキャッチすることに集中していると目玉が寄る】

「うわぁあっ!」
本に集中して油断していたのり丸は、クワっと口を開けて、目をむき出しにしているウチの顔を至近距離で見てしまい、驚きを隠せない。
「すんげ~牙!口が耳まで裂けている!」

しげしげとウチの顔を眺めながら、
「般若みたいな顔…というより完全に魔物の顔だな」
と、失礼なことを言いたい放題。


【光と影のマジックで、不気味に写った一枚】


(さて、前回の話の続きじゃがの…)

同じマンションの5階に「猫ババア」は住んどるらしい。
ウチがここに初めて連れて来られたその日に、エントランスで「猫ババア」に会った。
「猫ババア」はウチを見つけて、駆け寄ってきた。

「あんら~、あんら~、その中に入っているのは、ワンちゃん?猫ちゃん?」

60代ぐらいで、身に着けているのは膝上丈の長いTシャツだけ。
明らかにノーブラで、素足だった。
もつれたロングヘアにも、Tシャツにも、食べかすのようなものや、動物の毛やら、様々な付着物があった。
一見すると、何か大変な出来事があって「一時的に錯乱している人」に見えないこともなかった。

実際は、ただ「なりふり構わず、猫にすべての愛情を注いで生きている人」だったのじゃが…。


「ね~ぇ、その中にいるのはワンちゃん?猫ちゃん?どっちなのよ?」
「猫ババア」は、ウチの入っているキャリーが気になってしかたがないようじゃった。

「猫っス」と、のり丸が答えると、「猫ババア」の顔はパッと輝き、童女のようになった。
そして、すっとしゃがんで、チョチョチョチョ…と舌を鳴らしながらキャリーの中をのぞき込んだ。

「あんら~チョチョチョチョ…いいコちゃんね…チョチョチョ…お顔を見せて~お顔を見せてちょ~だい」

その後、のり丸に語りはじめた…。

===概略===

「旦那を家(一軒家)に残して、19歳と18歳の猫ちゃんと暮らすために、あたしはわざわざここを借りているの。
このマンションで猫ちゃんを飼っているのは、あたしが知っている限り、お宅を入れて5件だけ…ワンちゃんを飼っているお宅の方が多いかしら。

マンションの外にいる猫ちゃんのことも、ほとんど把握しているの。
ここの1階には『ほら、あそこらへん』(と、指しながら)、朝の5時に赤トラちゃんが来るわ。

フフっあたしはねぇ、S町の『猫ババア(笑)』なのよ。

外猫ちゃんは耳の所に印があってね…ほら、あなた『さくら猫』を知っているかしら?
ちゃんと避妊、去勢をしていて、地域と共存している猫ちゃんよ。
赤トラちゃんは、もう8年も通ってきているの、とってもいいコよ。
赤トラちゃんは朝の5時よ、忘れないでね。

猫ちゃんは土地の守り神よ。
猫ちゃんはその土地と家を守っているの、ホントよ、そういう役割があるの。
S町は守り神の猫ちゃんがたくさんいるの、だからみんな外猫ちゃんを大切にしているの。

あなたも今日から家に変なものが入って来なくなるわ、だって猫ちゃんが全部追い払ってくれるのよ。
…ね、そうよねぇ、猫~ちゃぁん…チョチョチョチョ」


何、何、「守り神」ってウチのこと?

のり丸はといえば、口をあんぐり開けて突っ立っておった。


そんな一度会っただけの「猫ババア」を思い出し、「動物病院のことを聞いてみよう」と思ったのり丸じゃ。
「動物病院の情報」がよほど欲しかったようじゃの。

幸か不幸か、あれっきり「猫ババア」に会うことはなかったのじゃ。
「猫ババア」には会わなかったが、のり丸は偶然にも「動物病院の情報」を持った人たちと交流ができて、結果的に良い動物病院に巡り合えたけどの。



-----閑話休題、「猫が土地や家の守り神か、どうか」という話しじゃが…。

人間は、
「猫には『地縛霊』みたいなもんを跳ねのける力があり、更に土地の穢れを落とす『役割』がある」
と、思っとるんか?

それについてのウチの見解は……ま、それは次回の。


じゃあ、またの。