「ねえ、哲也、できたんでしょ、オーダー料金3000円ね」
「どうしてわかったの?」
「哲也、哲也はいつも青なんだね」
「そうみたいだよ、どうやら青が好きみたい」
香織の姿をみると、いつもと同じ、
白のYシャツとジーンズ、スニーカー、なのにいつもと違う感じがした。
「待っててくれたんでしょ、眠そうだし、お酒の匂いしないし」
香織はいつも、哲也のことみててくれたんだ。
「哲也、今日は帰れ、学校の課題もあるんだろ、
一睡もしてないと良いものも描けないぞ、あとは大丈夫だから」
店長と他の店員さんに言われ、店を離れた。
違ったところは、香織が来ても店員さんも笑顔で挨拶を交わしていて、
どうやら「クレーマー」のニックネームはなくなっていたようだ。
「哲也、遊ぼうよ」
二人で歩いていく、
新宿の街を歩きながら前へ前へと歩き日比谷公園にたどりついた。
「これでいいのかなー」
哲也は香織に2連リングを渡したのだが、つまらない顔をしながら返された。
「指輪、指にはめてくれないの?」
哲也に言われても、困ったしぐさをする哲也のことを見て香織は大笑いした。
「ねえ、私達ってどんな関係なんだろうね」
哲也は、からかってるのか?と思った。
しょうがなく、出された指に指輪をはめた。
よく考えると、なれなれしくなってきたなって思うようになってきた。
香織と会うときは、彼女のペースで、その日を過ごした。
二人でベンチに座り、お互いのことを話した。
香織は両親には育てられず、施設で育ち、
両親の愛情なんて知らない、何も知りたくもない、
周り全ての人間が面白くないという。
「幸せって言葉、大嫌い!」
哲也の小さい頃は両親と弟と暮らしてきたが、
考えてみると「愛情?」感じたことなかった。
あまりにも自由すぎて、この自由が僕にとって両親の愛情だったのかな。
「哲也と会うと気分が変るんだよね、いつも変らず、会いたいときに、
そこにはいつも哲也がいるような、そんな気がするの、おかしい?」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます