面接はなく、名刺に書かれた名前の人からの紹介で、
哲也を探したというのだ。
名刺に書かれた名前をみると、全く知らない人物であった。
あるプロダクションのマネージャーで、
ある企業で適した人財を探していたところ、
哲也の名前があがったというのだ。
哲也は、この際、どうでも良いかと思い、
社会の流れにのり、2日後からの出社となった。
会社に出社して哲也は驚いたことがあった。
高校生の時、デザイン事務所でアルバイトしていた時の人達がいたのだ。
「やあ、元気してた?」
「また、一緒に仕事が出来て嬉しいよ」
哲也に、笑顔で声をかけてくる。
「どうしてここに、みんながいるんですか?」
哲也は、不思議に思いきいてみた。
当時の事務所は、ある企業と合併し、新会社設立になったという。
「お前さんをしたっていた人がいてね、探すのに苦労してたらしいよ」
「そうそう、もう一緒に仕事は出来なくなったけどね」
哲也はいったい誰が、自分の事を探してたのだろうと思った。
「相変わらずだね、その格好は、昔と変わらないんだな。」
初日から、いつも通りのスタイルで、そう、
青色のシャツにジーンズ、スニーカーの姿である。
出社すると、そのスタイルに対しては何も触れられなく、
そこでは、広告、企画、宣伝、出版などの仕事で、
まぁーそれなりにこなしていった。
一年が過ぎると、もう一人前にみられ、
企画、撮影、プレゼンなどの仕事をしていた。
そんな時に、香織に再会した。
哲也がこの会社に勤めている事を知っていたのだ。
何かと色々あったが、哲也がここにいるのは、
香織が所属するプロダクションの、
マネージャーの紹介であったということである。
日程表をみると、その日は撮影の仕事で、
香織の所属するプロダクションのモデルの撮影であった。
哲也は目を疑った。
目の前にいるのあの香織の姿である。
ただ、呆然としていたところ、マネージャーから声をかけられた。
あの彼女とは、どういう関係かとね。
哲也は答えることができなかった。
「あの時と一緒だ」
アクセサリー店のバイトで、香織のオーダーで、
やってみたかった、アクセサリ制作、香織はチャンスをくれた。
今回の就職は、
香織が、またチャンスを与えてくれたのだと思った。
数ヵ月後、香織は、プロダクションを辞め、結婚したという。
哲也は、香織と占い師に会い、朝まで一緒だった事を思い出す。
一夜を歩き回り、二人で陽の出を見た後の帰りの電車の中。
哲也は、あの時のように幸せを願い、祈った。
その後の哲也は妻子を持った。
妻は、哲也の思い出の半分を共有してくれた。
もし、香織と出逢っていなければ、
こんな幸せの生活はなかったと思う哲也だった。
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