新しい資本主義実現会議(議長:岸田首相)の第2回「三位一体労働市場改革分科会」が昨日(2023年11月16日)に開催された。
三位一体労働市場改革分科会(新しい資本主義実現会議)
新しい資本主義実現会議では、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入および成長分野への労働移動の円滑化という「三位一体の労働市場改革の指針」(2023年5月16日、新しい資本主義実現会議決定)および「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(2023年6月16日、閣議決定)を取りまとめている。
これらの指針などを踏まえて新しい資本主義実現会議の下に三位一体労働市場改革分科会が設置されたもので、三位一体労働市場改革分科会は職務給・ジョブ型人事の導入の参考とするため、導入企業の事例を整理し、指針を策定することとされている。
三位一体労働市場改革分科会の構成員名簿
<分科会長>
内閣官房副長官(衆)
<有識者構成員>
井口 譲二 ニッセイアセットマネジメント株式会社執行役員、運用本部副本部長、チーフ・コーポレートガバナンス・オフィサー
伊藤 邦雄 一橋大学 CFO 教育研究センター長
大浦 征也 パーソルイノベーション株式会社代表取締役社長
三瓶 裕喜 アストナリング・アドバイザー合同会社代表
柴田 彰 コーン・フェリー・ジャパン株式会社コンサルティング部門責任者
神保 政史 日本労働組合総連合会副会長、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会中央執行委員長
田中 順太郎 株式会社資生堂人財本部人財企画室室長
谷口 岩昭 中外製薬株式会社上席執行役員
中畑 英信 株式会社日立製作所 代表執行役 執行役専務 CHRO
平松 浩樹 富士通株式会社執行役員 EVP CHRO
水町 勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
山内 博雄 マーサージャパン株式会社組織・人事変革コンサルティング 部門代表
第1回 三位一体労働市場改革分科会議事要旨
2023年4月26日に開催された第1回「三位一体労働市場改革分科会」議事要旨が内閣官房公式サイトに公開されている。
その議事要旨によると、水町勇一郎教授(労働法学者)は「リスキリングによる能力向上支援。企業経営の支援から、個人の直接支援にシフトさせていこうという政策の方向性は妥当と考える」と発言したが、「今、雇用保険は、要は、雇用労働者が対象になっているが、今後、業務委託等でフリーランスの方々が増えていって、フリーランスの方々も、どうやって生産性を上げていくか、技能を高めていくかということが同じように重要になっていくので、その場合、雇用保険の教育訓練給付だけではなくて、求職者支援法に基づく職業訓練は、一般のフリーランスの方にも開かれた制度ではあるので、この接合を図りつつ、いろいろなタイプの方々に柔軟で多様な訓練のメニューを提供していくことを政策的に考えることが重要」と付け加えた。
また、水町教授は個々の企業の実態に応じた職務給の導入について「今後、専門的なスキルの相対的な重要性が日本では大きくなるとは思うが、併せて職務があまり狭くなり過ぎないようにして、変化に対応できるようにすることと、さらには、日本が本来強みとして持っていた組織力とかマネジメントも部分的にどう組み入れていくのか」「企業や労使がニーズやパーパスに合ったモデルを選択していくという選択肢を提示することが制度設計として重要」と発言。
そして、水町教授は成長分野への労働移動の円滑化について「現行制度では、雇用保険の失業給付について、自己都合離職、自分で辞めた人については、いわゆる2か月ないし3か月の給付制限がついている。会社都合離職にはない給付制限がついているが、制度創設時に、どのような認識があったかというと、自己都合で離職する人は、労働意思がないのではないかと推定される。働く意欲がないから辞めたのではないか。2か月間求職活動をして、それでも休職しているのであれば、働く意欲があったのではないかと認定して、2か月後からあげようという制度設計だったが、今はその当時と比較して、自己都合で離職したことで、労働意欲がないと皆さん認識しているかというところは、相対化してきていると思う。ただし、これを廃止してしまうと、モラルハザード、もらいたいから就職して、辞めて、就職してというリスクが生じる可能性があるので、その制度設計に当たっては、濫用的な給付を受けようとするケースをどうやって制度的に排除するかということに注意を払いながら、会社都合で辞めた人と自分の都合・意思で辞めた人が不利益に取り扱われない、相対的に、中立的に取り扱われるような制度設計をして、転職したからサンクション、不利益を受けることにならないように制度設計をする視点も重要」と述べている。
さらに、水町教授は同一労働同一賃金の徹底について「これは、職務給の具体的な制度設計にもつながっていくところだが、そこの中では、労働基準監督署による調査など、執行強化が言われている。執行強化ももちろん大切だが、中身をどうするか、さらに中身を明確化し、その周知を図っていくことが必要ではないか」と発言。
また「現在の同一労働同一賃金のガイドラインは、正社員といわゆる非正社員の間の比較で、非正規労働者の待遇改善のための法律であり、ガイドラインだと位置づけられているが、その考え方をさらに広く、要は正社員の給与制度、例えば職務限定であったり、勤務地限定で転勤がない人とか、残業なしで時間限定という働き方が無期フルタイムの働き方でも出てくるので、そういう働き方を例えば基本給とか手当でどのように考えることがリーズナブルかということも視野に入れながら検討していくことによって、職務給制度の具体的な中身について、制度的にサポートできるのではないか」と述べている。
資料「三位⼀体労働市場改⾰の論点案へのコメント」東京⼤学社会科学研究所 ⽔町 勇⼀郎(PDF)
第1回「三位一体労働市場改革分科会」議事要旨(PDF)
新しい資本主義実現会議 分科会等開催状況(内閣官房公式サイト)
三位一体労働市場改革分科会(新しい資本主義実現会議)
新しい資本主義実現会議では、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入および成長分野への労働移動の円滑化という「三位一体の労働市場改革の指針」(2023年5月16日、新しい資本主義実現会議決定)および「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」(2023年6月16日、閣議決定)を取りまとめている。
これらの指針などを踏まえて新しい資本主義実現会議の下に三位一体労働市場改革分科会が設置されたもので、三位一体労働市場改革分科会は職務給・ジョブ型人事の導入の参考とするため、導入企業の事例を整理し、指針を策定することとされている。
三位一体労働市場改革分科会の構成員名簿
<分科会長>
内閣官房副長官(衆)
<有識者構成員>
井口 譲二 ニッセイアセットマネジメント株式会社執行役員、運用本部副本部長、チーフ・コーポレートガバナンス・オフィサー
伊藤 邦雄 一橋大学 CFO 教育研究センター長
大浦 征也 パーソルイノベーション株式会社代表取締役社長
三瓶 裕喜 アストナリング・アドバイザー合同会社代表
柴田 彰 コーン・フェリー・ジャパン株式会社コンサルティング部門責任者
神保 政史 日本労働組合総連合会副会長、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会中央執行委員長
田中 順太郎 株式会社資生堂人財本部人財企画室室長
谷口 岩昭 中外製薬株式会社上席執行役員
中畑 英信 株式会社日立製作所 代表執行役 執行役専務 CHRO
平松 浩樹 富士通株式会社執行役員 EVP CHRO
水町 勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
山内 博雄 マーサージャパン株式会社組織・人事変革コンサルティング 部門代表
第1回 三位一体労働市場改革分科会議事要旨
2023年4月26日に開催された第1回「三位一体労働市場改革分科会」議事要旨が内閣官房公式サイトに公開されている。
その議事要旨によると、水町勇一郎教授(労働法学者)は「リスキリングによる能力向上支援。企業経営の支援から、個人の直接支援にシフトさせていこうという政策の方向性は妥当と考える」と発言したが、「今、雇用保険は、要は、雇用労働者が対象になっているが、今後、業務委託等でフリーランスの方々が増えていって、フリーランスの方々も、どうやって生産性を上げていくか、技能を高めていくかということが同じように重要になっていくので、その場合、雇用保険の教育訓練給付だけではなくて、求職者支援法に基づく職業訓練は、一般のフリーランスの方にも開かれた制度ではあるので、この接合を図りつつ、いろいろなタイプの方々に柔軟で多様な訓練のメニューを提供していくことを政策的に考えることが重要」と付け加えた。
また、水町教授は個々の企業の実態に応じた職務給の導入について「今後、専門的なスキルの相対的な重要性が日本では大きくなるとは思うが、併せて職務があまり狭くなり過ぎないようにして、変化に対応できるようにすることと、さらには、日本が本来強みとして持っていた組織力とかマネジメントも部分的にどう組み入れていくのか」「企業や労使がニーズやパーパスに合ったモデルを選択していくという選択肢を提示することが制度設計として重要」と発言。
そして、水町教授は成長分野への労働移動の円滑化について「現行制度では、雇用保険の失業給付について、自己都合離職、自分で辞めた人については、いわゆる2か月ないし3か月の給付制限がついている。会社都合離職にはない給付制限がついているが、制度創設時に、どのような認識があったかというと、自己都合で離職する人は、労働意思がないのではないかと推定される。働く意欲がないから辞めたのではないか。2か月間求職活動をして、それでも休職しているのであれば、働く意欲があったのではないかと認定して、2か月後からあげようという制度設計だったが、今はその当時と比較して、自己都合で離職したことで、労働意欲がないと皆さん認識しているかというところは、相対化してきていると思う。ただし、これを廃止してしまうと、モラルハザード、もらいたいから就職して、辞めて、就職してというリスクが生じる可能性があるので、その制度設計に当たっては、濫用的な給付を受けようとするケースをどうやって制度的に排除するかということに注意を払いながら、会社都合で辞めた人と自分の都合・意思で辞めた人が不利益に取り扱われない、相対的に、中立的に取り扱われるような制度設計をして、転職したからサンクション、不利益を受けることにならないように制度設計をする視点も重要」と述べている。
さらに、水町教授は同一労働同一賃金の徹底について「これは、職務給の具体的な制度設計にもつながっていくところだが、そこの中では、労働基準監督署による調査など、執行強化が言われている。執行強化ももちろん大切だが、中身をどうするか、さらに中身を明確化し、その周知を図っていくことが必要ではないか」と発言。
また「現在の同一労働同一賃金のガイドラインは、正社員といわゆる非正社員の間の比較で、非正規労働者の待遇改善のための法律であり、ガイドラインだと位置づけられているが、その考え方をさらに広く、要は正社員の給与制度、例えば職務限定であったり、勤務地限定で転勤がない人とか、残業なしで時間限定という働き方が無期フルタイムの働き方でも出てくるので、そういう働き方を例えば基本給とか手当でどのように考えることがリーズナブルかということも視野に入れながら検討していくことによって、職務給制度の具体的な中身について、制度的にサポートできるのではないか」と述べている。
資料「三位⼀体労働市場改⾰の論点案へのコメント」東京⼤学社会科学研究所 ⽔町 勇⼀郎(PDF)
第1回「三位一体労働市場改革分科会」議事要旨(PDF)
新しい資本主義実現会議 分科会等開催状況(内閣官房公式サイト)