働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)いつから?

2023年04月29日 | ブログ管理者ノート
フリーランス保護法でなく特定受託事業者?保護法
読売新聞(オンライン)はフリーランス保護法が参院本会議で可決、成立…来年秋までに施行といった見出しの記事(2023年4月28日配信)の中には「予定組織に雇われず個人として働くフリーランスを保護する「フリーランス・事業者間取引適正化法」は28日の参院本会議で可決、成立した。業務を委託する企業側に報酬額の明示などを義務づけ、立場の弱いフリーランスが不利益を被らないようにする。来年秋までに施行される予定だ」と記載されている。

「フリーランス・事業者間取引適正化法」と言われているが、昨日(2023年4月28日)成立したフリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」であって、そこにはフリーランスと言う文字は見当たらない。

これは、2021年秋に岸田文雄首相が「フリーランスの方々が安心して働ける環境を整備する」と表明して動き出したフリーランス保護法(フリーランス保護新法)だったが、自民党内から異論が出たため法案名から「フリーランス」という言葉を外されたためだ。だからフリーランス保護法、または「フリーランス・事業者間取引適正化法」が成立と報じると、誤解を生じるかもしれない。ただし、内閣官房サイトに公開されている「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の概要には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案 (フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要」と記載されているので、それに従ったで毛かもしれないが........。

*2021年11月8日に首相官邸において開催された「新しい資本主義実現会議」(第2回)の資料が翌日(11月9日)公表されたが、その資料によると、「新しい資本主義実現会議」緊急提言(案)には「フリーランス保護のための新法を早期に国会に提出する」と記載されている。だが、2021年12月6日に行われた岸田文雄首相所信表明演説では、「フリーランス保護新法」だけでなく「フリーランス」について全くふれられなかった。

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)いつから?
フリーランス保護法ではなくフリーランス・事業者間取引適正化法、さらに正確には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(提出時法案)には、「この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」、また「政府は、この法律の施行後3年を目途として、この法律の規定の施行の状況を勘案し、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とも記載されている。

読売新聞は「来年秋までに施行される予定だ」と報じたが、正確には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の施行日は公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日」となる。

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)概要
フリーランス保護法ではなくフリーランス・事業者間取引適正化法、さらに正確には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の概要は、内閣官房のサイトに公開されている。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案 (フリーランス・事業者間取引適正化等法案)の概要
<趣旨>
我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境 の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として、特定受託事業者に業務委託を する事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずる。
<概要>
1.対象となる当事者・取引の定義
(1)「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。
(2)「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者 をいう。
(3)「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。
(4)「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用す るものをいう。
※ 「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。
2.特定受託事業者に係る取引の適正化
(1)特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又 は電磁的方法により明示しなければならないものとする。 ※ 従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様とする。
(2)特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければなら ないものとする。(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)
(3)特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、①〜⑤の行為をしてはなら ないものとし、⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないものとする。
① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
3.特定受託業務従事者の就業環境の整備
(1)広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保 たなければならないものとする。
(2)特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業 務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないものとする。
(3)特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じな ければならないものとする。
(4)継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託 事業者に対し予告しなければならないものとする。
4.違反した場合等の対応
公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為につ いて助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。
※ 命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する。法人両罰規定あり。
5.国が行う相談対応等の取組
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、 相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとする。
<施行期日>
公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日(内閣官房サイトより)

<関連記事>

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)条文と概要|佐伯博正|note

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)成立 フリーランス保護法(フリーランス保護新法)、またはフリーランス・事業者間取引適正化法とも呼ばれる法...

note(ノート)

 

フリーランス保護新法(「新しい資本主義実現会議」緊急提言)とは|佐伯博正|note

フリーランス保護のための新法を早期に国会提出 今年(2021年)11月8日に首相官邸において開催された「新しい資本主義実現会議」(第2回)の資料が翌日(11月9...

note(ノート)

 

<参考記事>

フリーランス新法、参院内閣委で全会一致で可決 取引の適正化図る:朝日新聞デジタル

 フリーランスで働く人を保護するための法案が27日、参院内閣委員会で全会一致で可決された。28日の参院本会議で成立する見通し。フリーランスは取引上の立場が弱く、報酬...

朝日新聞デジタル

 


最新の画像もっと見る