喫煙は様々な疾患のリスク因子となっていますが、骨粗鬆症も例外ではなく、喫煙者は骨折リスクが高いことが知られています。喫煙がどのような機序で骨折を増加させるのかについては不明な点も多く、例えば酸素濃度が下がることで転倒しやすくなるのではないか、などとも推測されていたのですが、本研究で著者らは喫煙がカドミウムへの曝露を増加させることで骨密度低下、骨折のリスクを高めるという非常にユニークな結果を示しています。
日本人にとってカドミウムはイタイイタイ病の原因として悪名が高いですが、低濃度のカドミウムへの曝露であっても骨粗鬆症および骨折のリスクを上昇させることが最近報告され、注目されています(Akesson et al., Environ Health Perspect. 2014;122(5):431-8; Sommar et al., Calcif Tissue Int. 2014;94(2):183-90; James et al., Int J Public Health. 2013;58(5):737-45; Engstrom et al., Bone. 2012;50(6):1372-8)。この研究では男性骨粗鬆症研究で有名なMrOS studyのスウェーデン人コホート(Wallin et al., J Bone Miner Res. 2016;31(4):732-41) において、高齢男性886人(never smoker 353人、former smoker 463人、current smoker 70人)を対象として、尿中カドミウム値と、骨密度や骨折との関連を検討しました。
平均の尿中カドミウム濃度は0.25 μg/g creatinineでした。喫煙とtotal body, total hip, trochanter BMDは負の相関を有していました。またカドミウム曝露が間接的に全身骨密度に与える影響は43%と算出されました。また喫煙は骨折(all fracture, major osteoporosis fracture)のリスクを高め、カドミウム曝露の骨折に与える間接的な影響は非椎体骨折、大腿骨近位部骨折で最も高く、少なくとも50%以上存在することが分かりました。
以上の結果から、喫煙の骨粗鬆症リスク増加にはカドミウム曝露増加が関与している可能性が示唆されました。骨粗鬆症以外にも様々な疾患で喫煙がリスク因子になっていますので、今後これらの疾患とカドミウムとの関係は興味深いテーマになりそうです。
Smoking‐induced risk of osteoporosis is partly mediated by cadmium from tobacco smoke: The MrOS Sweden Study
J Bone Miner Res. 2020 Mar 19. doi: 10.1002/jbmr.4014. [Epub ahead of print]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます