クジラのクロちゃんと出会い、お友達になりました。
あれからクロちゃんは、時々キューちゃんの所へ遊びに来てくれるように
なりました。
キューちゃんは、クロちゃんの大きな背中に張り付いて、海を自由に泳いで
遊ぶのが大好きで、楽しくて楽しくて仕方がありません。
ある日キューちゃんは、クロちゃんに言いました。
「クロちゃん、もっともっと遠くの海に行ってみたいんだ。
お願い、クロちゃん、僕を連れてって。」
「ああ、良いとも。おいらは色んな所へ行ったことがあるし、どこでも
自由に行けるからね。キューちゃんは、一体どこに行きたいんだい?」
「ずっとずっと遠くだよ。クロちゃんが行った一番遠くへ行きたいな。」
「それなら、南の海へ行こう。」
キューちゃんは、クロちゃんの背中にぴったりと張り付いて、明石の海を
後にしました。
キューちゃん達が南へ向かってから、何日目かのことでした。
今まで何も無かった穏やかな海に、突然竜巻が現れて、猛スピードで
近づいて来たのです。
「クロちゃん、あのぐるぐるしたものは何?」
「うわぁ、竜巻だ。巻き込まれたら大変なことになるぞ。とにかく逃げよう。」
クロちゃんは、ぐんぐんとスピードを上げて竜巻から離れました。
「ふう・・・。危なかった。」
竜巻が通り過ぎた後には、空からたくさんのお魚が降ってきました。
それにはキューちゃんもびっくり。
「竜巻ってやつは、何でも空に巻き上げてしまうんだ。」
「クロちゃんのように大きくても?」
「そうさ、僕のお父さんのようにもっともっと大きくてもね。」
二人はまた、南へ向かって進んで行きました。
しばらくすると、一隻の船が転覆しているのを見つけました。
あたりには人影も無く、どうやら竜巻に巻き込まれたようでした。
「きっとどこかへいると思うんだ。探そう。」
クロちゃんは、あたりを泳いで飛ばされた人を探しました。
すると、船から大分離れた所に、一人のおじさんが浮いていました。
「あ、大丈夫だったんだ。助けるぞ。」
クロちゃんは、ゆっくりとおじさんに近づき、横にぴったりと付いて
おじさんを助けに来たことを知らせました。
「キミは、私を乗せてくれようとしているのか、クジラくん。」
クロちゃんは、尾ヒレを小さく振ってそれに答えると、おじさんは、
ゆっくりとクロちゃんの背中に乗りました。
おじさんは、クロちゃんの背中に張り付いているキューちゃんを見つけると、
「おお・・これはタコの干物かい?」と不思議そうに言いました。
キューちゃんも、8本の足をヒラヒラさせて、合図をしました。
「そうか、クジラ君とタコ君は仲良しなんだね。」
おじさんは、嬉しそうに目を細めました。
クロちゃんとキューちゃんは、おじさんを近くの島の浜辺で降ろすと、
おじさんは言いました。
「キミ達は旅の途中だったようだが、とんだ寄り道をさせてしまったようだ。
気をつけて行くんだよ。有難う、世話になったな。」
クロちゃんとキューちゃんは、再び南の海を目指して泳いで行きました。
<続く>