派遣契約、派遣会社から交付される派遣通知や就業明示書に「協定対象派遣」という用語が使われています。これについて簡単に説明をしてみます(以下「協定派遣」と略します)。
もとはといえば、平成31(2019)年4月に施行され働き方改革法にはじまります。36協定がどうのと大がかりな改革でしたが、その中で派遣社員への同一労働同一待遇が盛り込まれており、翌令和2(2020)年4月施行となりました。(参照 ⇒ 厚労省 働き方改革・同 概要)
派遣社員にとっての同一労働同一待遇とは、派遣元でなく派遣先(就業先)の同一職務につく労働者との同一待遇を指します。これが大原則ですが、原則をつらぬくと派遣先も派遣元も派遣をする(派遣を使う)メリットうまみがありません。そこで、原則に対し例外がこの協定派遣にあたります。施行されてまもなく5年になる現在、派遣事業者の9割が、例外の協定派遣をとっている状況です。
何を協定してあるかというと、派遣の業務別に標準賃金を設け、地域指数(全国平均100.0、東京112.7:令和7年値)、経験年数指数(勤続1年116.0、勤続5年133.0:同)を乗じた時間単価をもって、派遣社員の処遇がこの時間単価以上とすることを義務付けるものです。
算出例
(総合事務員1247円の就業地東京、要経験年数5年の時給)
1247円×1.127×1.330=時給1870円(小数点未満切り上げ)
標準賃金は、国の統計調査等から業務別に数字をはじき出し、毎年8月に告示され、翌年4月からの適用となります。標準賃金には賞与が含まれ、この他通勤手当、退職金完備となります(設けない場合は時給に換算して上乗せ)。また技能向上を正当に評価して昇給も義務付けています。
この協定は、派遣会社が会社(あるいは事業所ごと)の所属労働者の中から過半数の信任をえた代表を選出させ、労働者代表と結ぶ形になります。協定は原則毎年※更新で、派遣会社の賃金制度、退職金制度が、全国水準(地域指数による補正はある)より上回っていることを確認させる内容となっています。(※:派遣会社の給与規定(賃金水準)が変わらない場合は、2年有効を可とし、更改しない年は、直近告示の賃金水準と比較して下回ってない確認することをもって、協定締結に代えることができます。もし下回っていることが判明したなら、賃金規定等改定のうえ新たな協定結びなおしとなります。)
以上のことから派遣で働く場合は、地域補正がかかるとはいえ、その業務の全国水準並み以上の待遇で働けることを意味します。
追補:派遣社員への退職金については、派遣会社が全国企業の標準的な退職金規定例からたとえば「勤続3年以上」という要件をもりこんで、労働者代表に説明し協定をむすんでおくことも可です。
(2024年12月2日投稿)