労働法の散歩道

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代休の効果とは

2023-06-12 14:55:46 | 労働時間

このブログの随所に書いた代休についてのまとめ記事です。休日出勤させても、あとで代休させれば、休日労働、時間外労働とは相殺できる、なかったことにできる、と勘違いされている経営者多数いらっしゃいます。

そこでネット記事を検索してみたのですが、休日出勤と割増賃金の相殺、すなわち「時間」と「賃金」の相殺について書かれた記事が大半で、時間は時間と賃金は賃金とを書きわけた記事がほとんどみあたらなかったのです。ここでは「時間」と「時間」の相殺について書き留めておきます。

たとえば今月の残業が、45時間越えそうだ、超えてしまったので、急遽代休させる、あるいはいつかわからないけれど代休させるので、36協定時間に計上しなくともよい、という誤った考えがはびこっています。労働者からの質問で、代休とれずに、あるいは公休消化できずに退職するけど、どうしたらいいかという質問を結構みかけます。その裏事情には、休日出勤の賃金が一銭もはらわれていないことがうかがえます。

一度、法定労働時間を超えてしまえば、超えたという事実は、あとから何かをして帳消しにすることはできません。法定労働時間とは日8時間、週40時間のことで、この時間をこえた労働は時間外労働として扱われ、36協定無しには労働させることができません。

どういう理屈をこねてだか、代休させることで時間外労働をさせた事実を消し去ろうとします。ある日10時間働かせ、2時間時間外労働が発生しました。翌日所定8時間のところ、2時間早帰りさせたとして、見かけ上相殺されるのは、給与明細上の支払賃金です。

時給1500円で説明します。ある日10時間働かせたので、

1500円×8時間+1500円×1.25倍×2時間
=12000円+3750円
=15750円

翌日8時間分12000円でなく、2時間早帰りの3000円マイナスすることで、割増賃金2時間分払わなくともよい、とはなりません。0.25倍部分の750円の支払がのこります。1日休日出勤の1日代休でもおなじことです。0.25もしくは0.35部分が残ります。一方で36協定の月間累計時間といったものはいっさい減りません。

以上は「時間」と「賃金」の相殺となっており、民法の相殺にあたりません。払うべき「賃金」と引き去る「賃金」との給与明細上の見かけの相殺です。時間外させた「時間」と代休や早帰りさせた「時間」同士の相殺はできません。

極端な話、ある日休日労働させ、その翌日以降その月末まで代休や有給で全休してもらったとしても、その休日労働させた事実は消えません。相殺できるのは、金銭の「債権」と「債務」の間で給与明細上払うものは払い、引けるものは引かせてもらう見かけ上の相殺できるのであって、「時間」と「賃金」の相殺はなしえないのです。また当月45時間超えた時間外労働時間を減数する効果は、代休にはありません。代休させたことで時間の唯一の効果は、代休させた週の40時間枠にゆとりができるというものです。その週の時間外労働のうち、週枠にカウントする時間で、40時間枠に空きが増えるということでしょう。その意味で法定外休日に休日出勤させた週に代休させれば、その週の40時間枠超の発生を抑える効果はありましょう。なんでもかんでも休日出勤を、法定休日労働や時間外労働に組み込んでおられるなら、そこは見直しされるといいでしょう。

(2023年6月12日投稿)

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