労働法の散歩道

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2022.12労政審議会報告

2023-01-06 08:29:52 | 労働条件通知書

昨年暮れの労働政策審議会労働条件分科会で長らく審議され、ネットニュースでは裁量労働制の拡充といった報道がなされました。でも労務畑に従事している部門には読み捨てならない制度が導入されるようなので、概略をいくつか紹介してみたいと思います。主に労働契約法、労働基準法改正による無期転換、雇入れ通知書、就業規則にかかわる部分です。

出典:厚生労働省 報道資料R4.12.27より

1.無期転換ルール関連

有期雇用者への無期転換ルールの追加として、無期転換権発生する更新契約において「転換権発生」する(した)ことと「転換後の労働条件」が、労基法15条交付書面(以下「交付書面」)への記載事項(以下「書面事項」)となります。転換権行使後の労働条件明示も同様。

更新上限規定の「有無」、有りなら「その内容」も交付書面の書面事項。契約後に更新上限規定の新設・期間短縮する場合の事前説明を、労基法14条紛争防止基準に盛り込む。

無期転換後の労働条件決定で考慮した均衡事項の説明を努力義務化

2.契約関係の明確化

交付書面の記載事項に「『就業場所』・『業務』の変更の範囲」を追加

いわゆる人事異動において、交付書面の書面事項のうち「変更する点」を書面にて明示することが努力義務 ⇒ 義務化は今後の検討課題

「就業規則の備え付け場所の周知」といった周知方法の明示を義務化 ⇒ 周知のあり方は今後の検討課題

短時間正社員にはパート有期労働法の均等均衡待遇条項の適用があること、適用とされていなかった無期契約社員への展開

コメント

有期雇用者の更新して5年を超える部分の期間中に、無期転換権が発生しますが、その行使を促せるよう使用者からの雇入れ時交付書面に明示する義務を設けるものです。なお、有期雇用にあっては更新時ごとに雇入れ書面交付となります。

無期転換後の労働条件を変更する場合を、交付書面はもとより就業規則等に明示しておくことは論をまちません。

無期転換を阻む目的で、更新回数等に上限を就業規則等に設けてある場合は、交付書面への記載事項とするのは当然でしょう。その上限を後出しで設ける、設けてあった期間を短縮するというズルについても、説明責任を課しています。

次に、その交付書面に雇入れ時の就業場所、業務内容を記載すればよかったものを、さらに一歩踏むこんで将来転勤させる場合の範囲、業務転換させる場合の範囲も雇入時の交付書面への記載事項となります。これは地域限定社員とかがポピュラーになった反面、限定の有無をとわず雇入れた人員を配置転換させようとして紛争になるケースがあとを絶たないからでしょう。

その人事異動ありきで雇入れた労働者に対しては、異動の際の書面明示も義務化を見据えて努力義務の位置づけです。労務管理のしっかりした企業であれば、人事異動は辞令交付してきたから問題ないでしょうが、業務ごとに賃金ベースが異なるいわゆるジョブ雇用なら、それについての記載をどうするか、という側面があるのでしょう。

就業規則の周知についても、人事部長のひきだしにしまいこんでいるようなケースにあって、周知と言えるのか裁判で衝突するからでしょう。周知するだけでなく、周知方法の周知です。

パートと有期労働者は、均等均衡待遇における保護に置かれていましたが、フルタイムの有期雇用者が無期に転換した場合、せっかく切り替わったのに正社員との待遇差については、とりのこされていました。その面に光をあてようというものです。

パブリックコメントに意見募集されていました。労基法施行規則改正による令和6年4月施行です。

追補

令和5年3月30日、労基法施行規則改正が官報に公布されました。同時に特設サイトが設けられました。

1年後の令和6年4月施行です。その時点以降の雇入れる労働者への労働条件通知書、有期雇用(更新者を含む)への労働条件通知書の改定が必要です。そのひな形も掲載されています。

有期雇用 無期雇用
雇い入れ後の就業場所、従事内容の変更の範囲
更新上限の有無
(有ならその上限内容)
無期転換権発生の表示
転換権行使後の労働条件変更の有無
(有ならその労働条件の内容)
就業規則を確認できる方法

4/24付けパブリックコメントで、職業安定法施行規則改定の方法にて、求職者に労働条件開示項目に次の条件を追加することに、国民の意見を求めています。とりまとめ後、6月公布、来年4月施行の予定です。

  • 有期契約更新基準、あれば更新上限
  • 就業場所、従事業務の変更の範囲

(2023年1月6日投稿、2023年5月10日編集)

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