任意でない強制適用の事業所が、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に未加入(正しくは被保険者手続き懈怠)の場合、次のような罰則がまっています。
- 健康保険法 48条違反(208条 懲役6月、罰金50万円)
- 厚生年金保険法 27条違反(102条 懲役6月、罰金50万円)
- 雇用保険法 7条違反(83条 懲役6月、罰金30万円)
ところが労災保険にはこの手の罰則がありません。なぜでしょう。まず労働者であればだれでもカバーするので、労災保険に被保険者手続きというものがありません。そして事業主が手続きしていない労災保険未加入でも、次の条件みたしていれば被災労働者(遺族)の申請請求で労災保険給付されるからです。すなわち被災者が事業者に雇われた労働者であること、事故が業務上(通勤)災害であること。
そもそも業務上災害については、一義的に労働基準法(第8章 災害補償)が無過失責任にて補償義務を事業者に課しています。その事業者が補償しないと刑事罰が待っています。ただ被災労働者が労災保険から給付をうければ、その範囲で雇用主は補償義務を免れます(労働基準法84条)。
その代わり、未加入、保険料滞納中の保険事故への給付に要した費用を政府は怠慢事業主に求償します(労災保険法31条(徴収法4条の2第1項の規定による届出、同法10条2項1号の一般保険料を納付しない期間))。
(2023年5月11日投稿)