労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

メリット制の概観

2023-10-01 15:32:43 | 労働保険

ある一定規模以上の事業が払う労災保険料については、自動車任意保険に似た保険料率アップダウンする制度があります。メリット制と言いますが、自動車保険は事故に対し等級、割引率がさがり、無事故を続ければ年々回復していくしくみ(多少こみいった部分あり)ですが、労災保険は「保険給付にかかった費用」と「支払保険料」の比で直接割引率を設定する方式になります。

ここでは、主に継続事業(事務所、工場)の説明を中心にしています。

対象事業

  • 100人以上の労働者を使用する事業
  • 20人以上100人未満である一定料率以上の事業

対象期間

第1年度 第2年度 第3年度 第4年度 第5年度
         
← 収支算定期間 →   メリット率適用

第1年度からの3年間に納めた保険料額を分母、同期間の保険給付した額を分子にして収支率を算出。求めた収支率に応じた増減率(-40%~+40%)を、第5年度の保険料に乗じます。たとえば今年度に起こした業務上災害事故(上表では第3年度)による影響は、はやくて2年先(同第5年度)の保険料に現れ、以後3年間(同5~7年度)にわたり影響します。第6年度保険料は、第2年度からの3年間の収支率を元に算定します。

算定対象

メリット収支率 =  3年度の保険給付の額  × 100
3年度の納付保険料

分母の納付保険料には、業種に応じ調整率(林業0.51、建設港湾0.63、その他0.67)がかかり、分子の給付額には、特別支給金を含み、また障害遺族の補償年金は実際の支払い額でなく等級に応じた一時金に換算します。また分母分子には通勤災害にかかる保険料、給付は除外します。

増減率

求まった収支率を増減率に換算します。換算率は-40%から+40%の範囲で5%刻みです。収支率75%以下ならマイナスに、同85%超ならプラスに作用します。

メリット収支率 メリット増減率のイメージ
~10%    -40%
     
     
     
     
     
     
     
75%~85%   ±0%
     
     
     
     
     
     
     
 150%~   +40%

保険料率

換算した増減率を、第5年度の保険料に乗じますが、全体に乗じるのでなく、通勤災害等に対する料率(1000分の0.6)を省いた率に乗じたのち、省いた通勤災害料率等を足しこみます。

メリット料率 = (労災保険料率-0.6) × 100+メリット増減率(%)  + 0.6
100

実業を行わないおおかたの事務所に適用される「94その他の各種事業」3/1000で計算例を示してみます。 3年間無災害の増減率(-40%)場合、

メリット料率 = ( 3 - 0.6) × 100-40  + 0.6 = 2.04
100

災害多発の増減率(+40%)場合、

メリット料率 = ( 3 - 0.6) × 100+40  + 0.6 = 3.96
100

無災害の場合、保険料率は約2/3に低減(3 ⇒ 2.04)される反面、災害多発事業所の場合、同4/3倍(3 ⇒ 3.96)となっており、さらに保険料率が高い事業ほど、増減率の効果が効いてきます。実際の納付時には、保険料確定申告書に「メリット」と表示されて、増減後の率にしたがって保険料額を納めることになります。

参考サイト

厚生労働省 労災保険のメリット制について(概要)

厚生労働省 労災保険のメリット制について(PDF)

(2023年10月1日投稿)

参考記事

労災勘違いあるある

労災保険給付手続きは誰がするのか

労災保険未加入に罰則がない

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