「民主主義は国民が政治に参加して初めて成り立つ。若者たちに求めたいのは、「正解」を探すことではなく、それぞれの視点で考え抜き、自ら1票を投じることだ。」
日本の政治が、右傾化し、排外主義的な傾向を強める結果となっています。その契機は、09年民主党政権の登場に期待した国民、選挙民の期待と要望を大きく裏切ったことで、政治不信を大きく増幅させたことです。自民党型政治が腐敗堕落しているときに、その政治の転換をうたって、二大政党制を宣伝しながら、政権交代を実現しました。しかし、その期待を背負い、実現すべき民主党政権――菅、野田の政権公約の保護と裏切りは期待しただけに本当に大きな失望と政治不信を増幅させました。その影響が2016年までの国政選挙3回に依然として影響を与えています。その1つが低投票率です。投票しない多くの選挙民は、その時の感情を引きずっています。
しかし、其の間に、安倍、山口自公政権は憲法無視と、悪政の限りを尽くしています。絶対投票率は全く上昇せず、過半数を大きく割っているにもかかわらず、衆参の議席数では過半数、三分の二を占める異常事態です。低投票率、小選挙区制度、政党助成金制度が相乗して、大政党有利の政治が表面化しています。このような状態は議会制度、議会制民主主義を危機に陥れ、立憲主義の破壊をもたらしています。政治不信があったとしても、選挙に自らの一票を行使することで、最悪の政治状況を少しでも改善することがいま、われわれに求められる政治参加です。
選挙制度も、本当にいびつで、国民を愚弄しています。政治宣伝も制約され、比例と選挙区の宣伝カー4台(候補一人当たり)しか政策宣伝ができない。その他の政党要員が宣伝するマイク放送は全く禁止されています。また、政策宣伝用の宣伝紙も法定何号までと限定され、選挙民が政党、候補者の政策、見解を知る機会を著しく制約されています。同時に、政党の党首討論もほとんどないために、選挙期間中に入っての論争、見解も国民が知ることができません。議会制民主主義、立憲主義を擁護回復するためにも一票の行使を通じて、日本の政治の質を高める主体的な行動が必要です。
<北海道新聞社説>2016参院選 きょう投票「国のかたち」を考えて
参院選はきょうが投票日。戦後70年余り続いてきた「国のかたち」を大きく変えかねない選挙である。
衆院では改憲勢力がすでに改憲の発議に必要な3分の2の議席を得ている。今回の選挙で、参院でも改憲勢力が非改選と合わせて3分の2以上を占めれば、改憲が初めて政治日程に上る可能性が出てくる。有権者が投じる1票の意味はそれだけ重い。
選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初の国政選挙でもある。
少子高齢化が進み、社会保障政策は人口が多く投票率も高い高齢者に軸足が置かれがちだ。選挙権年齢の引き下げは、こうした政策に若者の意見を反映させる絶好の機会である。積極的に投票所へ足を運んでほしい。
安倍晋三首相は2014年の衆院選で経済政策「アベノミクス」の是非を問うて大勝。その「数の力」を背景に安全保障関連法成立に突き進んだ。
今回も首相はアベノミクスを前面に掲げ、これに対して各党はさまざまな主張を展開した。
投票に当たり、そうした公約を吟味するのはもちろん大切だ。その一方で、有権者が知りたいのに、積極的に語られなかった論点も少なくない。そこにも目を凝らす必要がある。
懸念されるのは投票率だ。
北海道新聞社が3~5日に行った道内世論調査では、参院選に「大いに関心がある」と答えた人は24%で、公示前の調査と比べて7ポイント減った。
3年前の参院選道選挙区の投票率は6年前に比べ7・48ポイント減の54・41%だった。政治の正統性を危うくしかねない状況だ。投票率低下に歯止めをかけたい。
今回初めて選挙権を得た18、19歳からは「間違った投票をしたら困る」という声も聞こえてくる。
全国初の「18歳選挙」となった今月3日の福岡県うきは市長選で18、19歳の投票率が38・38%と、全体よりおよそ18ポイントも低かったのはそのためだろう。
しかし、民主主義は国民が政治に参加して初めて成り立つ。若者たちに求めたいのは、「正解」を探すことではなく、それぞれの視点で考え抜き、自ら1票を投じることだ。
道選挙区は今回から改選数が2から3へ増え激戦模様だ。道内政治の流れが変わることも予想される。それを決めるのは私たち道内の有権者である。