「学ぶことを支えるはずの制度が、むしろそれを妨げるのでは本末転倒だ。奨学金という名の「学生ローン」だと批判される現状を改めなくてはならない。」
1つは、少子高齢化を是正する措置として、青年たちが学ぶためにかかる費用が将来設計を狂わせる。学生ローンを抱えて社会に出ても、スタート時点で借金を抱えて、普通の生活が送れない。こんな社会で青年たちが結婚し、子供を持つのか考えればわかることです。
新自由主義政治経済のむき出しの利益・競争至上主義は自己責任をかざして、格差をこれ以上ないまで拡大しています。正規労働を切り崩し、非正規雇用を爆発的に増加させています。労働者の大半が低賃金、年収200~300万世帯という社会で学費年間50万円を支払うことができるはずがありません。学費以外の日常生活費・家賃を入れれば月額10万近い資金が必要となります。家計の半分近い資金を一人の青年に費やす。金持ちの世帯、子どもしか大学には入れない。貧困の連鎖と階層の固定化が、社会の治安を悪化させ、子供たちの教育を受ける権利を著しく棄損することは明らかです。
社会保障と消費税を連動させる自民党、公明党の主張も含めて、いままでとってきている政治、政策を抜本的に見直し、転換しなければ、日本社会そのものが崩壊します。富裕層、大企業の法人税率の引き下げを止めること。租税回避を摘発し大企業、富裕層からの徴税を適正化すること。第二に、軍事費、公共事業、大企業への補助金の見直しを止めること。第三に、非正規労働などの止めて原則正規労働として、最低賃金を抜本的に引き上げること。中小零細企業への最低賃金保障・支援策を具体化すること。
憲法に基づく機会均等の原則、生活保障、学ぶ権利を保障することはあらゆる政治課題と共通の政治課題です。
<信濃毎日社説>参議院選に問う 給付型奨学金 実現の道筋示す議論を
「親にこれ以上負担をかけられないから大学は諦める」「奨学金を借りても、返せるのか不安だ」―。大学などへ進学する意思も能力もあるのに経済的な理由で断念せざるを得ない若者が少なくない。等しく教育を受ける権利が保障されているとは言いがたい現状がある。
それは、社会の将来を考えたときにも大きな損失だろう。学費の心配をせずに学ぶ機会を得られるよう、返済の必要がない給付型の奨学金を導入すべきだ。
国費で賄う日本学生支援機構の奨学金は、およそ130万人が利用している。大学生ら全体の4割を占めるまでに増えた。
背景にあるのは学費の高騰だ。国立大で見ると、1975年に3万6千円だった授業料が今は50万円を超す。一方で親の年収は下がり、仕送り額も減っている。
日本の子どもの貧困率は16・3%。標準的な所得の半分未満の世帯で暮らす子が6人に1人いる。経済格差が広がるなかで、生活保護世帯やひとり親家庭をはじめ、教育の機会を保障するための支えが必要な人が増えている。
機構の奨学金は有利子、無利子とも貸与で、卒業後に返さなくてはならない。非正規雇用が増え、大学を出ても安定した仕事に就くのは容易でない。奨学金の“借金”を何百万円も抱えて、月々の返済に困る人は多い。
2014年度、3カ月以上延滞した人は17万3千人に上った。長期に及ぶ返済の負担は、結婚や子どもを持つことをためらわせる要因にもなっている。
奨学金を借りるのが心配で、進学自体を諦める人も出ている。また、借りる額を減らすためアルバイトに追われたあげく、疲れ果てて中退してしまう学生もいる。
学ぶことを支えるはずの制度が、むしろそれを妨げるのでは本末転倒だ。奨学金という名の「学生ローン」だと批判される現状を改めなくてはならない。
参院選では与野党の大半が給付型奨学金の創設を公約に掲げた。ぜひ実現させたい。給付の対象をはじめ具体的な制度の中身や、財源をどう確保するかを議論し、道筋をつける必要がある。
今回、選挙権を得た18、19歳の有権者の多くにとっても、切実な問題だろう。給付型の創設を選挙のときだけの看板に終わらせぬよう、自分から声を上げ、各党、候補に求めていくことも大事だ。