Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

◆DIR EN GREY◆VESTIGE OF SCRATCHES◆20周年記念BEST ALBUM◆

2018年1月2日に、DIR EN GREYのベストアルバムがリリースされました

結成?デビュー?20周年を記念した渾身のバンドヒストリーアルバム。

その名も、

VESTIGE OF SCRATCHES

=スクラッチ(軋む音)の痕跡(形跡・残存物)

(餌の残り物、とも訳せそう!?)

DIR EN GREYらしいタイトルのベストアルバムですね。

結成?デビュー?

20周年、おめでとうございます!

***

さて。

DIR EN GREYは、メンバーチェンジ一切なしで、20年歩み続けてきました。

この20年、DIR EN GREYは、国内にとどまらず、世界中にその名を轟かせてきました。

本人たちも想像できない「20年」だったんじゃないかな、と思います。

とにかく、凄かった。

ちょっと思い出話。

DIR EN GREYは、他の好きなバンドと違って、

自分と同世代のバンドなので、20年前の受け止め方もちょっと違いました。

結成されたのも、僕が既にバンド活動から学業にシフトした1997年のこと。

世の中は、空前の「ヴィジュアル系ブーム」。

(とはいえ、僕ら世代が憧れたバンドは活動休止や解散し出す頃)

彼らの音に初めて触れたのは、同年7月にリリースされた「MISSA」というミニアルバム。

最初に聞いた時、「げ、何、このヘタクソなバンドは…」って思ったのをはっきり覚えています(すみません)。

演奏もめちゃめちゃなら、歌も酷い…(すみません、、、汗)

CDを買ったはいいけど、最後まで聞けませんでした…(すみません×3)

(で、誰かにあげちゃった…)

まさか、その後、日本で最狂のヘビー級モンスターバンドになるとは、微塵も思いませんでした。

1997年というと、SIAM SHADEやラクリマ・クリスティが脚光を浴びている頃で、V系バンドの演奏スキルも高まっている頃でした。ブームもあって、ヘタクソなバンドもいっぱいCDを出し始める頃でした。中でも、音程が全く定まらない「歌の下手なバンド」もいっぱい出てきていて、リスナーの耳も肥え出す頃でした。

なので、DIR EN GREYは、その当初、何がいいのか全然分からなかったです。ただ、当時は、あの頃のディルのように「精神病理系」「メンヘラ系」「精神異常系」「グロ系」(つまり、今の「主流ヴィジュアル系」)は、あまりいなくて、そこにうまくはまっていったのかな、とは(今になって)思います。当時としては、初期黒夢やDeshabillz(デザビエ)くらいじゃなかったかな。V系シーンは、もともと「病んだ感じ」はあったんですが、1997年頃って、どちらかというとポップでキャッチーで華やかで(かつ技巧派な)バンドがもてはやされた時代でした。

そんな華やかな時代で、ひっそりと毒まみれの屈折した頽廃的で病的なバンドが登場したんですね。それが当時のDIR EN GREYだったのかな、と思います。

その後、一年ほどして、-I’ll-というシングル曲をリリースします。1998年8月12日のことでした。このシングルは今でも僕の家にありました。

MISSAの頃の楽曲と違って、ずいぶんと聴きやすくなりました(苦笑)。当時のクレジットを見ると、編曲にD≒SIREのKIYOSHI氏の名が刻まれているんです。D≒SIREを知っている人はあまりいないと思うけど、当時、ヴィジュアル系シーンではとても注目されていた正統派ダーク系バンドでした。某雑誌でも「ZI:KILLやD'ERLANGERが好きな人ならはまるはず」と書かれていたのを覚えています。そんな正統派ダーク系バンドのギタリストが参加することで、より「キャッチーなダーク系バンド」になった、と思います。この曲で、一気にファン層が広がったんじゃないかな。今回の20周年BEST ALBUMの一曲目は、まさにこのI'llなんですね。彼らにとっても、「最初の第一歩」となる大切な一曲なのでしょう。

ちなみに、僕はこの頃ドイツに留学していて、どうやってこのシングルを入手したのか分かりません…。多分、親か友人かに送ってもらったんだと思うけど・・・。だから、この曲を聴くと、僕はなぜかドイツの景色が浮かぶんです。個人的にも、I'llは大好きな曲。Bメロの「幼い頃を想う 優しさに飢えてた あまりにも遠すぎた 貴方の声」のメロが、歌謡曲の王道コードで、これが「ツボ」でした。サビも、当時としては「王道メロ」って感じで、この時代の「キラーチューン」を意識して作ったのかな、と(今となっては)思います。

個人的に言えば、ぶっちゃけ、DIR EN GREYがその後どういうふうに売れていったのかは全く分からないんです。ドイツに留学してたから。ただ、あっという間に「人気バンド」になっていき、どういうわけか、1999年、YOSHIKIプロデュースで、三枚同時シングルリリース、そして、当時としては初となる武道館でのデビューライブと、立て続けに、ビッグニュースを振りまいていきます。今回のBESTの4枚目のDVDで、当時の武道館ライブの映像とそれに対するメンバーのコメントも出ていて、ここは「見どころ」だと思います。「なるほどなぁ~、当時、メンバーはそんなことを想っていたんだ…」、「そうだよなぁ~…」、とふむふむ言いながら、インタビューを聞きました。

2018年の今、「旬」となっているX JAPANのYOSHIKIプロデュースでリリースされたのが、今回のBEST ALBUMの2曲目以降に収録されている「アクロの丘」「ゆらめき」、それから、DISK3の2曲目に収録されている「残」でした。これ、三枚とも未だに持ってます♪ 僕的には、「アクロの丘」がお気に入りで、今なお定期的に聴いている「名曲」の一つです。「ゆらめき」は、なんか「黒夢のパクリ」って感じがして、好きじゃなかった…(すみません)。「残」は、僕的には理解不能で…(すみません)…。 当時は、YOSHIKIプロデュースってことで、相当話題になった気もしますが、GLAYのRAINほどの話題にはならなかったよなぁ、、、とも(すみません)。

1999年には、彼らの初期のヒット曲「Cage」がリリースされますね。もちろんV-keiフリークの僕も、このシングルを買いましたし、いっぱい聴きました。ただ、これもまた、なんか「黒夢っぽい感じ」(あるいはルアージュっぽい感じ?)がして、そこまでハマらなかったかな…。好きなんだけど、食傷気味、というか。とはいえ、今でも歌詞を見ないで、普通に口ずさめるくらいにいっぱい聴きましたけど…。一番、「カッコいいV系時代」のDIR EN GREYだったかな、と思います。

その後、2000年から2001年にかけて、「予感」、「脈」、「太陽の碧」、「ain't afraid to die」、「FILTH」と、本BESTにも収録されているシングル曲が次々にリリースされていきます。彼らにとっては、「試行錯誤の日々」だったんじゃないかな、と思います。僕はというと、念願の大学院生になり、研究者への道を歩み出した頃でした。(とはいえ、2001年頃、院生をしながら、バンド活動やってました。詳しくはこちらのサイトを!(懐かしい!))

2001年頃が、音楽シーンの大きな転換期だったんだろうな、と今になって思います。確実に「インターネットの時代」に突入していました。上の僕のバンドのレポさえ残っているのだから…。とはいえ、まだSNSなんてなくて、ブログさえもまだ一般に知られてない頃。「ホームページビルダー」が売れてた頃(苦笑)。

この時期に、DIR EN GREYは、自分たちの運命を変えるような最高にカッコいい新たなシングルをリリースします。僕自身、DIR EN GREYの楽曲の中で一番大好きな曲になった一曲。

超名曲、JESSICAであります!! 

この曲の出だしは、なんといっても、「少年はベルリンの壁に唾を吐き付け」、ですからね。当時、ドイツかぶれだった僕には、ど・ストライクな楽曲でした。でも、それよりも、「今」のDIR EN GREYの全てのはじまり、みたいな楽曲で、彼らの歴史上においても、とても重要な一曲だったと思います。だからこそ、本BESTでも、DISK2の一曲目にこの曲をもってきたのでしょう。この曲をDISK1の最後には置けないだろう、と。(単純に時間の問題なのかもしれないけど、、、汗 でも、それだけじゃないな…、と)

2002年7月31日にリリースした「six Ugly」は、DIR EN GREYそのものにだけでなく、その後のヴィジュアル系シーンをがらりと変える「革命的なミニアルバム」となったと僕は考えています。これまでの彼らからは想像できない「ぶっとんだ曲」ばかりのミニアルバム。しかも、過去の曲の「再構築」も行っていて、彼らが「NEXT STAGE」に立ったことを証明するアルバムだったと思います。このアルバムの4曲目に収録されていたのが、本BESTのDISK2の2曲目に収録されている「umbrella」です。大雑把にいって、第二期DIR EN GREYの本格機動ですね。このアルバムの「意義」については、かつてこのブログでも熱く語ったことがあります

このミニアルバムと同日にリリースされたのが、DISK2の4曲目に収録されている「CHILD PREY」という超ハードなナンバー。この曲は、six Uglyとは明らかに違う楽曲で、これまでのDIR EN GREYとこれからのDIR EN GREYを結びつける貴重な一曲になっていると思います。今聴いても、全然おかしくない、というか、変じゃないというか…。

それ以降、DIR EN GREYは、恐ろしいほどの「進化」(深化)を遂げていきます。よりハードに、よりヘビーに、よりコアに、よりディープに、より過激に、より猟奇的に…。それ以降は、おそらくもう語る必要はないかな、と思います。

改めて、彼らの楽曲に耳を傾けると、本当に凄いモンスターバンドだなぁ、と思わされます。唯一無二の最狂バンドだなぁ、と。しかも、ただ海外のラウドシーンのモノマネに走るのではなく、あくまでもDIR EN GREYの音として進化していくんですよね。新しいものを貪欲に取り入れながらも、全体的な世界観は保持されている。スタイルは違えど、BUCK-TICKのような「一貫性」を感じずにはいられません。

DISK3は、初期DIR EN GREYの「名残」すら感じない「マスターピース」の連続。半端ない破壊力と、どこまでも深淵な音世界が次々に展開されています。もう、ただただ「圧巻」です。この彼らの音を聴く度に、「僕は、あの当時、音楽を辞めていてよかった」と思うんです。同じ世代ですけど、なんか、全てが「桁違い」というか、「ステージが違い過ぎる」というか。「こんな化け物みたいなバンドとは一度たりとも張り合いたくもない」、というか…(苦笑)(最大限の褒め言葉として…)。…でも、(DVDを見ると分かると思いますが)彼らも彼らで、ドイツのフェスで僕と同じようなことを感じたりもしてきたんですよね。確かに、世界には、更に化け物みたいなモンスターバンドが無数にいますからね。

そういう意味では、彼らもまた、「途上」にいるのかな、とも思います。もちろん、僕も(彼らと立ち位置は違うけど)まだまだ途上の途上の途中…。彼らの音楽と共に、自分の道をしっかりと歩いていかなくっちゃな、と思います。

【収録曲】

[Disc-1:CD]
01. -I’ll-
02. アクロの丘
03. ゆらめき
04. Cage
05. 予感
06. 脈
07. 理由
08. 太陽の碧
09. ain’t afraid to die
10. FILTH
11. 蟲-mushi-
12. 腐海

[Disc-2:CD]
01. JESSICA
02. umbrella
03. audience KILLER LOOP
04. CHILD PREY
05. DRAIN AWAY
06. dead tree
07. 朔-saku-
08. C
09. 鼓動
10. DOZING GREEN
11. AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
12. 艶かしき安息、躊躇いに微笑み
13. CLEVER SLEAZOID
14. 我、闇とて・・・
15. VINUSHKA
16. THE IIID EMPIRE

[Disc-3:CD]
01. 霧と繭
02. 残
03. 罪と規制
04. 羅刹国
05. かすみ
06. OBSCURE
07. THE FINAL
08. DIFFERENT SENSE
09. 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
10. LOTUS
11. 輪郭
12. Revelation of mankind
13. Sustain the untruth
14. Un deux
15. 詩踏み
16. Beautiful Dirt

[Disc-4:Blu-ray or DVD] ※初回生産限定盤のみ
・DOCUMENTARY OF DIR EN GREY 20 YEARS
・INTERVIEW
・腐海 (Shot In One Take)
・THE IIID EMPIRE (Shot In One Take)
・Beautiful Dirt (Shot In One Take)

***

もし、…

もし、自分の人生に「絶望」を感じている人がいたとしたら、

あるいは、生きることに苦しんでいる人がいたとしたら、

そっと、このアルバムを一度、全部聴いてみていほしいです。

DIR EN GREYの音は、「音楽」ではありますが、「音楽以上のもの」でもあります。

どの曲も「痛々しさ」に溢れていますが、そこに、痛みをもつ人にしか分からない「作用」があるように思うんです。

音楽なので、「薬」とはいいませんが、「薬」に近い効果がある、というか。

心に苦しみや痛みを感じている人にしか分からない、「何か」が彼らの作品にはある。

音楽を超えた芸術性をもち、そして、どこまでも深淵で難解で闇に満ちている。

100年後も、きっとこの楽曲たちは、残っている気がするんです。

これまで、彼らほど、難解であり、また芸術性を備えた音楽ってなかったように思うんです。

ロック音楽を芸術的にどこまでも突き詰めていった結果が、この楽曲たちなのでは、と。

もはや、「好き」とか「嫌い」とかのレベルじゃないですからね。

ただただ、圧倒されるだけです。

音の芸術に・・・

コメント一覧

kei
F#24さん

コメントありがとうございます。F#24さんも相当のフリークさんで在られますね。

Laputaも同時代でしたね。若干Laputaの方が先輩ですけど、今となっては同時代、ですよね。

GAZさんのことは存じ上げていませんでした。教えていただきありがとうございます。Kneuklid~も大好きでした。ご冥福をお祈りいたします。
F#24
聖詩とはまた懐かしい名前…今は目立った活動してるのでしょうか?

私はMISSAのヘッタクソな感じがツボでしたw
当時よく聴いていたのは彼らと袂を別ったKISAKIのMIRAGE「Arcadia」、Laputa「眩めく廃人」「蜉蝣」、ROUAGE「BIBLE」とかですねー。

これとは関係無いですが、元MALICE MIZER、元KneuKlid RomanceのGAZが亡くなったそうですね、好きなドラマーだったので残念です。
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