今、滞在しているホテルの無料ワイヤレスランが使用できない。どうもプロバイダが故障しているらしい。ホテルの客は困惑している。フロントにいると、何人もの客が「コンピュータが使えない!」とクレームをつけてくるのを見る。だが、フロントの女性は、「現在、故障中です」とはいうものの、決して謝ろうとはしない。半ば、「私の知ったこっちゃない」という態度である。だが、客も客で、「あ、そう」といって、引き下がる。面白い。
日本だと、フロント=ホテル全体の一従業員なので、ホテルの代表として謝罪する。だけど、こっちの人たちは、「W-LANがどうであろうと、私たちには関係がない。私の仕事はフロントの受付。それ以上でもそれ以下でもない」、と考えているようだ。客も客で、フロントに文句を言ってもどうにもならないことくらいわきまえているようで、あっさりと引き下がる。
考えてみれば、フロントの女性たちがW-LANの責任を負う必要は全くもってないわけで、どうでもいいこと。職場の別の部署がどんな問題を引き起こそうと、私たちには関係がない、と。そういう視点が根っこにある。職場での個人主義が徹底されている。
しかし、日本は、そういう意味では、全体主義的な要素がまだ残っている。クレーマーしかり、JR職員への暴力しかり、である。日本人の労働者たちも、こっちくらい個人主義が徹底していたら、きっと困った客に(何の責任もないのに)頭を下げる必要もなくなり、変なストレスもなくなるだろう、と思う。
客のエゴイズムに付き合わない社会がいつか日本にも来るだろうか。それを僕は強く願っている。
from Dortmund 8.18