遂にデランジェ、通算4枚目のオリジナルフルアルバムがリリースされた!
本作は、La vie en Rose、バシリスク、ラザロに続く四枚目のアルバムであり、復活後二枚目のアルバムとなる。5月の武道館のライブに合わせた形でのリリースということもあり、デランジェファンにとってはたまらない時期に到来したことを示している。今回の作品は、一言でいうならば、「Let's dance」ってことになるのかな。歌詞もサウンドも雰囲気も世界観も、今回は「踊ろうぜ」ってところで一致している。柘榴のPVも、Sensual Danceのタイトルも、やはりダンスをモチーフにしていた。(こう言っていいか分からないが、後期craze以降の流れを汲んでいるように思われる。とはいえ、パンクを基調としていたcrazeにひきかえ、今のデランジェはかなりアダルトなポップロックを基調としているので、一概にこの連続性を認めることはできないが・・・)
01.Eloa
デランジェの美学ともいえるオープニングSE。今回のSEは、これまでにない淡々とした混沌さを感じるものだった!
02.影舞
まず出だしで驚愕する。感情を抑えるところまで極限に抑えたイントロ、そして抑圧に抑圧を重ねたAメロ。妖しすぎる。これがヴィジュアル系の原点なのだ、ということをはっきりと証明する一曲ともいえる。他の誰でもないデランジェのサウンド。また、今のデランジェをしっかりと示すサウンド。全体的には異国感が漂いつつも、しっかりと和風ロックに仕上がっている。欧州と日本の融合サウンドと言えるかな。泣きのメロディーと恍惚の世界観。正直、一曲目には(これまでの価値観からすると)ふさわしくない、けれど、やっぱり一曲目でしかないような一曲だ。
03.TABOO
影舞から連続した展開に驚く。02から03のつながりはまさに聴きどころだ。これまでのデランジェにはないタイプの曲で、ジャジーなシャッフルビート。本作のテーマである「分かりにくいポップ」がみごとに表現された曲だと思う。タイトル的にB-T?!と思う部分もあるが、ホッピーさんとデランジェの見事なカップリングのおかげで、唯一無二のアダルトなポップに仕上がっている。
04.PUBLIC POISON♯09
本作最強のキラーチューンだ。初期デランジェと後期CRAZEの融合形という感じかな。乾いたシャリシャリのギターで始まるイントロもチェック。そして、ベースの高音フレーズが乗っかり、ノイジーなギターが重なっていく。Aメロのkyoのクレイジーなシャウトボイスはかつてないほどスリリングだ。Bメロの「クロになれ グロになれ」という叫びは心に響く。サビは結構ポップ。ライブだとすごいことになりそうだ。サビ後のギターリフはもうサイファさま~と叫びたくなる。そして、ドラムとギターとベースの熾烈な激突が炸裂。妖しくて暴力的で破壊的でどこかはかなげだ。アルバムタイトルと重なるが、道化師の孤独を描いた作品。深い!
05.Sensual Dance
これはもうすでにマキシシングルのところでコメントをしたので。。。ただ、一つ言えることは、この曲が今回のアルバムのシンボルというか、一つの象徴だったということだ。最初聴いたときは、なんじゃこの曲は・・・と思ったが、アルバムの中で聴くと、全然違和感がないどころか、これぞ「今のデランジェ」を見事に示していたのだ。分かりやすい曲が横行する中、分かりにくいポップさにこだわった職人的追及を表現したのがこの曲だったのだ。ラザロにはないテイストがこの曲にぎゅっとつまっていた。
06.Parfum de l'avidite
なんともゴシックな・・・ というか、カルメン? スペインを感じずにはいられない一曲。あれれ、デランジェってこんなに国際的なバンドだったっけかな?と思ってしまった(汗)。曲の裏になっているアコーディオンサウンドがすごい切ない。とはいえ、単なるメロウな曲で終わるわけではなく、TETSUのハイスピードドラムがかぶさっている。ゆえに、デランジェ特有のメランコリックなハイスピードロックを見事に継承しているサウンドとも言える。サビのYou love me? Lady・・・というところはもうなんともいえない切なさと哀愁を感じてしまう。これは是非バルセロナかどこかで聴きたい曲だ。またkyoの歌詞も、天使と悪魔を対比させた散文的な内容になっていて、すぐに情景を描写することができない。これもまたデランジェの美学なんだろう!
07.OPIUM
ここでブレイクタイム(なのかな)。デランジェとしては初のインターブレイクだ。ギターと奇妙なノイズが耳を強く刺激する。そして、破壊的なギタープレイが続く。何気に裏のベースのフレーズがすごくかっこいい。このベースラインは、ちょっと他じゃ聴けないと思う。さすがシーラ先生! ただ、どうしてここでこの曲をもってきたのかは謎だ。っていうか、今回のアルバムは謎が多すぎる!
08.dancin'g with Lilly
この曲はラザロの楽曲の延長線上にある曲と解釈したいところ。いや、ラザロの楽曲たちの進化系、成長形と考えたほうがいいかな。淡々とした曲なんだけど、聴こえる歌の裏側ですごい熱いものを感じる。表面的な熱さではない内面の熱さというか。曲的にはシングルカットしてもおかしくない一曲だとは思う。が、シングルにするにはちょっと斬新さがないかなとも思う。ある意味で一番支持される一曲だとは思うが、逆に一番素通りされてしまう曲とも考えられる。でも、こういう曲が一曲あると、アルバム全体のイメージがピリッとしまる。やっぱり重要な一曲なのかも。
09.Blanc -cheres roses-
なんだなんだ・・・ このなんともいえない上品なサウンドは・・・ デランジェの曲じゃないよな・・・とホンキで思ったり。そう、デランジェ初のボサノヴァ調のバラード曲。すごい・・・ なんてコメントしたらよいのだろう、、、と悩んでしまう。kyoのウイスパーヴォイスは、まあBUGで聴いてはいるけど、デランジェでこうやって聴いていると、なんか世界に引き込まれる感じ。しかも、ホッピーさんの奇妙なエレクトリック音が妙な妖しさをかもし出している。なんていうか、宇宙に連れていかれたような・・・
10.Blanc -cheres douleur-
そして、知らぬ間に曲が変わっている。そして、自然と体が揺れてしまう横ノリビートの曲に展開していくのだ。この曲もまたデランジェとしては超斬新的な曲に仕上がっている。シーラのベースのせいか、すごいグルーブが出ているのだ。だから、体の横揺れが止まらない。やばい、こりゃライブで揺れちゃいそう。ダンサブルでポップでノイジーでハードでメロウ。こういう曲をさらっと出来るようになったところが、デランジェの成長したところなのかな。いい意味で力の抜けた曲といえる。ともかく、これまでのデランジェとは違う『脱力系サディスティカルパンク』を堪能したいところだ。
11.柘榴
やっぱり『柘榴』は、本作の<代名詞的存在>であった。淫靡でエロティックでアダルトでダークでセクシーでポップで難解。で、難解なんだけど、どこかすごく近づきやすい。近づきやすいんだけど、どれだけ近づいても分かり合えない、、、みたいな。
12.amaoto
ダークなゴシックロックテイストの一曲。これだけゴシック&ドラマティックな曲ってなかったんじゃないかな。kyoの超低音ボイスがすごくクールに流れる。ちょっとDIE IN CRIESっぽいかも。いや、やっぱり今のデランジェなのかなぁ~。なんていうか、これまでのデランジェにはあまり感じなかった「愛」を感じる一曲だ。たしかに切ないラブバラードなんだけど、血の通った人間の一曲になっているように感じる。それは、サイファのギターソロにも感じる。なんか人間らしい音になっているような。crazeのアイスルココロよりも曲調は暗いんだけど、より愛を感じるっていうか。。。最後の「こんな夜には逢いたくて・・・」ってところに揺るぎない愛を感じた♪ 最後のBGMは鳥肌モノかも・・・
13.Elod ~Symphony 4 INCARNATION OF EROTICISM
いわゆるエンドロールのようなアウトロ。壮大なオーケストラサウンドだ。中世のヨーロッパを感じるゴシックなSE。デランジェの4人が演奏しているわけではないのだが、まさにデランジェ!という感覚を引き起こす。演奏せずに自らを表現するなんて、すごすぎる・・・ なんか今回の復活劇の序章の終わりを示しているような印象を受けた。終わりであり始まりであるような一曲なのだ。この曲にいったいどんな意味が込められているのかは、きっと武道館以降の展開で自ずと分かってくる・・・はず。最後のkyoの囁きにはどんな意味が・・・
【総評】
今回のデランジェの新譜ははっきりいって「問題作」だ。かつてのデランジェを期待していた人はきっと度肝を抜かれるはず。これほど濃厚でディープで深遠な作品は後にも先にもこれ限りと言えるかも。
だが、ラザロから本作への変貌は、ある意味、ラビアンローズからバシリスクへの変貌に似ている。よりディープになり、よりダークになり、より濃厚になっていく変貌はかつての変貌に重なるところがある。勢いからムードへの転換と言い換えてもよいだろう。
ずっとデランジェを愛し続けた僕は言いたい。デランジェの本当の「始まり」はここからだ!、と。僕らにとって、このアルバム以降のデランジェこそ、本当に僕らの知らないデランジェなのだ。いわば「孤独の向こう側」というか。僕は心底、向こう側のデランジェを知りたい。薔薇である代償としての孤独を抱え、まだ見たことのない世界を僕らに見せてほしい!