Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

◆デランジェ◆the price of being a rose is loneliness◆

遂にデランジェ、通算4枚目のオリジナルフルアルバムがリリースされた!

本作は、La vie en Rose、バシリスク、ラザロに続く四枚目のアルバムであり、復活後二枚目のアルバムとなる。5月の武道館のライブに合わせた形でのリリースということもあり、デランジェファンにとってはたまらない時期に到来したことを示している。今回の作品は、一言でいうならば、「Let's dance」ってことになるのかな。歌詞もサウンドも雰囲気も世界観も、今回は「踊ろうぜ」ってところで一致している。柘榴のPVも、Sensual Danceのタイトルも、やはりダンスをモチーフにしていた。(こう言っていいか分からないが、後期craze以降の流れを汲んでいるように思われる。とはいえ、パンクを基調としていたcrazeにひきかえ、今のデランジェはかなりアダルトなポップロックを基調としているので、一概にこの連続性を認めることはできないが・・・)

01.Eloa
デランジェの美学ともいえるオープニングSE。今回のSEは、これまでにない淡々とした混沌さを感じるものだった!

02.影舞
まず出だしで驚愕する。感情を抑えるところまで極限に抑えたイントロ、そして抑圧に抑圧を重ねたAメロ。妖しすぎる。これがヴィジュアル系の原点なのだ、ということをはっきりと証明する一曲ともいえる。他の誰でもないデランジェのサウンド。また、今のデランジェをしっかりと示すサウンド。全体的には異国感が漂いつつも、しっかりと和風ロックに仕上がっている。欧州と日本の融合サウンドと言えるかな。泣きのメロディーと恍惚の世界観。正直、一曲目には(これまでの価値観からすると)ふさわしくない、けれど、やっぱり一曲目でしかないような一曲だ。

03.TABOO
影舞から連続した展開に驚く。02から03のつながりはまさに聴きどころだ。これまでのデランジェにはないタイプの曲で、ジャジーなシャッフルビート。本作のテーマである「分かりにくいポップ」がみごとに表現された曲だと思う。タイトル的にB-T?!と思う部分もあるが、ホッピーさんとデランジェの見事なカップリングのおかげで、唯一無二のアダルトなポップに仕上がっている。

04.PUBLIC POISON♯09
本作最強のキラーチューンだ。初期デランジェと後期CRAZEの融合形という感じかな。乾いたシャリシャリのギターで始まるイントロもチェック。そして、ベースの高音フレーズが乗っかり、ノイジーなギターが重なっていく。Aメロのkyoのクレイジーなシャウトボイスはかつてないほどスリリングだ。Bメロの「クロになれ グロになれ」という叫びは心に響く。サビは結構ポップ。ライブだとすごいことになりそうだ。サビ後のギターリフはもうサイファさま~と叫びたくなる。そして、ドラムとギターとベースの熾烈な激突が炸裂。妖しくて暴力的で破壊的でどこかはかなげだ。アルバムタイトルと重なるが、道化師の孤独を描いた作品。深い!

05.Sensual Dance
これはもうすでにマキシシングルのところでコメントをしたので。。。ただ、一つ言えることは、この曲が今回のアルバムのシンボルというか、一つの象徴だったということだ。最初聴いたときは、なんじゃこの曲は・・・と思ったが、アルバムの中で聴くと、全然違和感がないどころか、これぞ「今のデランジェ」を見事に示していたのだ。分かりやすい曲が横行する中、分かりにくいポップさにこだわった職人的追及を表現したのがこの曲だったのだ。ラザロにはないテイストがこの曲にぎゅっとつまっていた。

06.Parfum de l'avidite
なんともゴシックな・・・ というか、カルメン? スペインを感じずにはいられない一曲。あれれ、デランジェってこんなに国際的なバンドだったっけかな?と思ってしまった(汗)。曲の裏になっているアコーディオンサウンドがすごい切ない。とはいえ、単なるメロウな曲で終わるわけではなく、TETSUのハイスピードドラムがかぶさっている。ゆえに、デランジェ特有のメランコリックなハイスピードロックを見事に継承しているサウンドとも言える。サビのYou love me? Lady・・・というところはもうなんともいえない切なさと哀愁を感じてしまう。これは是非バルセロナかどこかで聴きたい曲だ。またkyoの歌詞も、天使と悪魔を対比させた散文的な内容になっていて、すぐに情景を描写することができない。これもまたデランジェの美学なんだろう!

07.OPIUM
ここでブレイクタイム(なのかな)。デランジェとしては初のインターブレイクだ。ギターと奇妙なノイズが耳を強く刺激する。そして、破壊的なギタープレイが続く。何気に裏のベースのフレーズがすごくかっこいい。このベースラインは、ちょっと他じゃ聴けないと思う。さすがシーラ先生! ただ、どうしてここでこの曲をもってきたのかは謎だ。っていうか、今回のアルバムは謎が多すぎる!

08.dancin'g with Lilly
この曲はラザロの楽曲の延長線上にある曲と解釈したいところ。いや、ラザロの楽曲たちの進化系、成長形と考えたほうがいいかな。淡々とした曲なんだけど、聴こえる歌の裏側ですごい熱いものを感じる。表面的な熱さではない内面の熱さというか。曲的にはシングルカットしてもおかしくない一曲だとは思う。が、シングルにするにはちょっと斬新さがないかなとも思う。ある意味で一番支持される一曲だとは思うが、逆に一番素通りされてしまう曲とも考えられる。でも、こういう曲が一曲あると、アルバム全体のイメージがピリッとしまる。やっぱり重要な一曲なのかも。

09.Blanc -cheres roses-
なんだなんだ・・・ このなんともいえない上品なサウンドは・・・ デランジェの曲じゃないよな・・・とホンキで思ったり。そう、デランジェ初のボサノヴァ調のバラード曲。すごい・・・ なんてコメントしたらよいのだろう、、、と悩んでしまう。kyoのウイスパーヴォイスは、まあBUGで聴いてはいるけど、デランジェでこうやって聴いていると、なんか世界に引き込まれる感じ。しかも、ホッピーさんの奇妙なエレクトリック音が妙な妖しさをかもし出している。なんていうか、宇宙に連れていかれたような・・・

10.Blanc -cheres douleur-
そして、知らぬ間に曲が変わっている。そして、自然と体が揺れてしまう横ノリビートの曲に展開していくのだ。この曲もまたデランジェとしては超斬新的な曲に仕上がっている。シーラのベースのせいか、すごいグルーブが出ているのだ。だから、体の横揺れが止まらない。やばい、こりゃライブで揺れちゃいそう。ダンサブルでポップでノイジーでハードでメロウ。こういう曲をさらっと出来るようになったところが、デランジェの成長したところなのかな。いい意味で力の抜けた曲といえる。ともかく、これまでのデランジェとは違う『脱力系サディスティカルパンク』を堪能したいところだ。

11.柘榴
やっぱり『柘榴』は、本作の<代名詞的存在>であった。淫靡でエロティックでアダルトでダークでセクシーでポップで難解。で、難解なんだけど、どこかすごく近づきやすい。近づきやすいんだけど、どれだけ近づいても分かり合えない、、、みたいな。

12.amaoto
ダークなゴシックロックテイストの一曲。これだけゴシック&ドラマティックな曲ってなかったんじゃないかな。kyoの超低音ボイスがすごくクールに流れる。ちょっとDIE IN CRIESっぽいかも。いや、やっぱり今のデランジェなのかなぁ~。なんていうか、これまでのデランジェにはあまり感じなかった「愛」を感じる一曲だ。たしかに切ないラブバラードなんだけど、血の通った人間の一曲になっているように感じる。それは、サイファのギターソロにも感じる。なんか人間らしい音になっているような。crazeのアイスルココロよりも曲調は暗いんだけど、より愛を感じるっていうか。。。最後の「こんな夜には逢いたくて・・・」ってところに揺るぎない愛を感じた♪ 最後のBGMは鳥肌モノかも・・・

13.Elod ~Symphony 4 INCARNATION OF EROTICISM
いわゆるエンドロールのようなアウトロ。壮大なオーケストラサウンドだ。中世のヨーロッパを感じるゴシックなSE。デランジェの4人が演奏しているわけではないのだが、まさにデランジェ!という感覚を引き起こす。演奏せずに自らを表現するなんて、すごすぎる・・・ なんか今回の復活劇の序章の終わりを示しているような印象を受けた。終わりであり始まりであるような一曲なのだ。この曲にいったいどんな意味が込められているのかは、きっと武道館以降の展開で自ずと分かってくる・・・はず。最後のkyoの囁きにはどんな意味が・・・

【総評】
今回のデランジェの新譜ははっきりいって「問題作」だ。かつてのデランジェを期待していた人はきっと度肝を抜かれるはず。これほど濃厚でディープで深遠な作品は後にも先にもこれ限りと言えるかも。

だが、ラザロから本作への変貌は、ある意味、ラビアンローズからバシリスクへの変貌に似ている。よりディープになり、よりダークになり、より濃厚になっていく変貌はかつての変貌に重なるところがある。勢いからムードへの転換と言い換えてもよいだろう。

ずっとデランジェを愛し続けた僕は言いたい。デランジェの本当の「始まり」はここからだ!、と。僕らにとって、このアルバム以降のデランジェこそ、本当に僕らの知らないデランジェなのだ。いわば「孤独の向こう側」というか。僕は心底、向こう側のデランジェを知りたい。薔薇である代償としての孤独を抱え、まだ見たことのない世界を僕らに見せてほしい!

コメント一覧

kyoの詩
>kyoはどこであんなボキャブラリーを得ているのか・・・

語彙力も凄いですが、自分の言葉として表現する創造(想像)力はホント凄いですよね。
20年以上唄と詩に対して向き合っているからこそ成せる業だと思います。

今作の中では「SenSual Dance」がツボですね。
"サロメ"と"エロド"という単語が頭の中で廻って離れません(笑)。
kei
透さん

ホント難解な作品ですよね!

いったいkyoはどこであんなボキャブラリーを得ているのか・・・ 不思議です。kyoの頭の中を一度のぞいてみたいですね。

今回の作品は、ある程度予想範囲内かなと思います。一番問題となるのは次の作品だと思うんです。デランジェがどんなアプローチで攻めてくるのか・・・ 想像できませんし、すごく楽しみです。

デランジェは、今回の作品で過去と決別したと思います。だからこそ、次の作品こそが、デランジェの新世界を見せる作品になると思うんです。

でも、今、2008年、デランジェが現役で活動しているってことが信じられないことですよね。今後、どんな動きを見せるのか、とても楽しみです!!!
難解、でも何故か惹かれる…
こんばんは、keiさん。

今さらながら、昨日タワレコで購入しました。
レビューに記してある通り、ホントに難解な作品です。
エロド・紫の闇・麝香など古典文学に出てくるような言葉が多いので解釈し辛いです(泣)。
もっと教養を深めなければ…。

理解できないけれど、聴くほどにどんどん深みにはまっていくというのが魅力なのかもしれません。
売り上げ的には厳しい作品ですけれども、分かり易いだけの曲に飽きたって人にはお勧めだと思いますよ。
kei
ラビさん

すごいです!! herodのh省略形だったんですね。。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AD%E3%83%87

これを見ても「エロド」って出てました。

今回の作品を理解する上ですごく重要な発見でした!!すごいです!!

ありがとうございました!!

ますます今作の深みにはまりそうです・・・
ラビ
すみません、「エロド」の綴りは「herod」なんですね(汗)

僕はたまたま「サロメ」を読んでたので何も調べもせずに決め付けてしまいました。今ググってみたところ、「elod」じゃ出てきません。何かコンピュータ用語が出てきました。

でも、「sensual dance」の歌詞を読む限り間違ってはいない・・・ですよね(多分)。
お騒がせしました、これからはこれからはコメントするときは気をつけます。
kei
るさん

ググって、Elodの意味、出てきますか??

僕は今週図書館にこもって、調べてみます!!楽しみです!!
2ch 邦楽板 レス95
斧はgoogieで検索
kei
unknownさん

まさに!そのとおりですね。Easy make...の匂いがプンプンします。ああいうアレンジでリバイバルっていうのもユニークだなぁ~と感心してしまいました!

ラビさん

こんばんわ。いつもコメントありがとうございます!

>ただ「猿の何ちゃらみたいに~」というあまりにアレなフレーズは覚えてます。そんな詞が今作のそれとどうリンクしとんねん!と(笑)

いいツッコミです!! 僕もそう思いました。まぁ、謎ということにしておきましょう!

Elodの意味は知りませんでした・・・ありがとうございます。僕もしっかり調べてみたいです。しかし、なんかすごい妖しい言葉ですね・・・(汗) どこでこんな言葉を見つけてくるんでしょうか??

今回の作品は、ホント色んな仕掛けがあって面白いと思います。昔のデランジェとは違うところも多々ありますが、音楽的にはかなりディープになったと思います。

噛めば噛むほど味がでてくるスルメみたいなアルバムですよね。
ラビ
最後の囁きは
タイトルにもあるあの曲の歌詞の一部、というか出だし部分ですよね。
まあだからと言って何かがわかったわけではないのですが(笑)

「EASY MAKE, EASY MARK」に関しては、実はライヴ盤売っ払ってしまったので(だってkyoのヴォーカルが・・・以下自粛w)なんとも言えないです。
ただ「猿の何ちゃらみたいに~」というあまりにアレなフレーズは覚えてます。そんな詞が今作のそれとどうリンクしとんねん!と(笑)

あと「Elod」に関しては、これは明らかに「サロメ」でも有名なユダヤの王様ですね。引用元がデランジェっぽいというか。
「Eloa」は、現代音楽家とか基金の名前とかありますが(後者は「eRoa」ですが)、バンドのことを考えると金銀細工師の聖エリギウスではないかと。タロットカードの魔術師の絵にも当てられているそうです。ただ問題なのは仏語だと「エロア」は「eloi」になってしまうのですね。

色々言ってますが、そんなことは抜きにしても音楽のみで十分楽しめる作品ですから、今後メンバーが何かしら明かしてくれないかと気長に待ちます。
長々と失礼しました!お仕事のためすっかり夜型になってしまってますがさすがにヤバイのでもう寝ます。お休みなさいませ。
Unknown
OPIUMはEASY MAKE,EASY MARKにつながっていますね。
kei
景虎さん

初めまして!コメントありがとうございます。なんかラーメンとV系の記事ばかりですが、読んでくださり嬉しい限りです。

やっぱりこのアルバムは「問題作」なんですね。これまでのデランジェを期待している人の中には、「ええ?!?!」と思う人も多いんだと思います。(僕的にはB-TのTABOO~悪の華の変化に近いのかなと思ったり) OPIUMの最後は「おお!」と思いますが、ちょっと短くなかったですか(苦笑) 「ええ?!それだけ?!」って、、、 武道館、楽しみましょう!

ラビさん

こんにちわ!

さすがラビさんですね。分析が明晰ですね。音楽的には数段レベルアップしましたね。やっぱりホッピーさんの影響でしょうか。サイファのギターもかなり凝ってますよね。シーラのベースラインはやっぱ半端ないです。ラザロの百倍はかっこいい(と思いました)。

たしかに「ワクワク」はすごいありましたね。やっぱ18年前に戻ったかのような・・・ 今回のアルバムはバリエーションが豊富なので、最後まで全くもって飽きることなく聴くことができました。やっぱりデランジェはすごいなぁ、と。

このアルバムには、たしかに「仕掛け」らしきものが3つくらいあったかな、と思います。最後の曲の最後の最後にやっぱり「仕掛け」があったのかな?と思ったり。。。

あと、最後の最後のkyoの囁きが何を意味しているのか、これは話すと盛り上がりそうです。。



ラビ
お久しぶりです。

今作は前とはかなり違うという前知識があったにも関わらず、聴いた時にはぶったまげましたw
しかし、Aメロ→Bメロ→サビで盛り上がるといういわば日本的な曲構成には最早心躍らされないというイヤな大人の自分w(いやもちろんそんな曲も大好きですけど)としましては、これは非常に嬉しい変化でした。

これだけのキャリアを積んで、ベテランの域に達している彼らが未だに攻めの姿勢をくずしていないこと、まさに賞賛に値しますね。
様々な音楽を聴き漁って耳がかなり肥えてきた現在でも、次は何が出てくるかというワクワク感を持って音楽に接することができるのだとわかったのが今作を聴いての最大の収穫です。

しかし、大変失礼ですが売れなさそうですね~コレ(笑)少なくとも若い人にデランジェの偉大さを知ってもらおうと勧めるのに最も適していない作品だと思います(もちろん貶しているわけではありませんよ)。

ところでこのアルバム、何だか仕掛けがあるとのこと。keiさんはわかりました?僕はさっぱり・・・(確か最後の曲がキーだとか)
景虎
EASY MAKE,EASY MARK
keiさん、いつも楽しく見させて頂いております!「これまでのD'ERLANGER」を期待している自分としてはLAZZARO同様、欲求不満ですがOPIUMの最後にKYOさんの「EASY MAKE,EASY MARK!」が聴けて救われました!昔の曲を全曲録り直して発売してくれるのを期待する毎日です!日本武道館、一緒に楽しみましょう!
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