現在のネオ・ヴィジュアル系シーンで、今後の活躍がかなり期待されているバンドの一つ、ジュリィーが待望のファーストフルアルバムをリリースした (kei的には、ジキル、初期LUNA SEA、ムックファンetcには超オススメです!)
ジュリィーは四人組のバンドで、2004年に結成。メンバーは、慎一郎(ex-ホタル)、杏太(ex-ホタル)、勇治郎(ex-Shullaローディー、ex-ポロリ)、豪(ex-カリメロ)だ。結成は二年前だが、メンバーのキャリアは決して浅くはない。また、ex-カリメロのナオとコースケとex-ポロリのDs小石川桐は現在Heidi.で活躍中(なんか複雑?!)。これまでのところ、『サクラ心中』(Single)、『心叫』(Mini)、『空が堕ちた日』(Maxi)、『碧空』(Maxi)を発表している。ボクはサクラ心中以外は全部聴いているが、これまでの印象としては、(言い方は悪いが)『なんか暗くて、地味めで、おとなしくて、内に篭っている・・・』といった感じだった。「最終列車」という曲があり、そのバンドのイメージからして、中期ムックっぽい感じというか。。。昨年リリースされた二枚のMaxiはあのデンジャークルーからのリリースだったが、方向性としてはあまり変わっていなかった。なので、正直、このアルバムを聴くまでは、ほとんど新作に期待していなかった、というのがホンネのところだった。(正直、買おうかどうかも迷ったくらい)。
だが・・・ 聴いてビックリ。。。めちゃめちゃクオリティーが上がっていた。最初のSEのような一曲目から最後の13曲目まで、一切の無駄がなく、どれも個性的で、しかもパワフルで、しっかりと歌が生きていて、演奏がまとまっていた。歌詞にも正直ビックリした。
1.胎動
突然のドラムソロでアルバムの幕は上がる。そして、それを追うかのようにしてギターとベースが入り込んでくる。そして、妖しげなビートが刻まれていく。歌や言葉はないけれど、確かに何かが伝わってくるそんなプロローグだ。
2.愛憎の絵画
唸るようなギターで始まる。すこしどろっとしたビートが鳴り、メロディアスなAメロへと続く。これまでのジュリィー以上にメロがしっかりしている。『誰もが信じた君の思想は 闇に囚われ狂気になる』、『翻す反旗の象徴になるように』・・・かなり歌詞もえぐい。少し反戦チックな歌。ボクにはヒトラーの話と被って困った(苦笑)ギターソロも素敵。ラストでドラムのパターンが変わるところはお見事っ!
3.輪廻
これまた奇妙な出だし。クリアトーンのイントロはどこか懐かしい。この曲もメロディーがはっきりとしていて気持ちよい。サビの『望むのだろう 想うのだろう・・・』というところはかなり突き抜けている。シングルになりそうなインパクトがある。歌詞もかなり哲学的だ。「そうそれは始まりから終わり無き時を巡り、唯ゆっくりと切々と刻まれていく ならこれはいつかの記憶 不確かに時は巡り、今確実に次へと繋がっていく」。このバンドの歌詞は一回読んだだけでは感情移入できない抽象性がある。大サビのツービートになるところはまさに圧巻だ!!
4.レインカーネーション
ちょ~~っとLUNA SEAチックな始まり方♪歌は・・ムック(苦笑)。この曲も勢いがあってメロディアスでカッコイイぞ。歌詞的には、究極の根源的愛を欠如した人間の叫びみたいな感じ。「初めての愛さえ知らない僕は雨にしか咲けない花なんです」。児童福祉のテーマになりそうな曲だ。はっきりいって【重い曲】だ。人間の根源である「人から愛される」、「必要とされる」という欲求/願望が見事に表現されている。
5.空が堕ちた日
こちらは、Maxiですでに発表された曲。アルバムバージョンということで若干のアレンジ(?!)がなされているとのこと(歌取り直してる?)。アルバムの中だと、ここでクールダウンするって感じかな。まさに中盤戦!って感じです。最後の【雨に問う 何が正しい 誰を信じれば良い 今 心は死にました】っていうところはホント胸に突き刺さる。(10代のボクだったら絶対感動/共感してたな・・・)
6.人間失格
これは、ジュリィー結成当時の曲とのこと。確かに、めちゃめちゃ暗くてじめ~っとしていてどうしようもない感じが漂う一曲だ(苦笑)。イントロのギターはDie in Criesみたいでカッコイイ。これまた【児童福祉】っぽい曲だ。。『この腕を切って流れる赤い病み』って。。。リストカット?!で、さらに、『孤独 嗚呼 消したい」って。。。でも、あくまでも思春期の苦悩を歌っているのであって、大人の自殺を歌ったわけじゃなさそうだ。「僕は本当は誰ですか 僕は本当に生きていますか」と問いかけているところに希望が見出せる。アイデンティティーを求める青年の苦悩がひしひしと伝わってくる。
7.公園通り
人間失格の次にこれをもってくるか?!?!普通・・・ これはわざとか?!あれだけ消えたい!と言っておきながら・・・ 7は超ポップ。一気に開き直ったのか、ただのアイロニーか?!この6~7の展開の奇妙さはどう考えたらいいんだ? 「雨止んで虹 あくび真似る猫 全てが馬鹿らしく思えてきた きっとそれが答えなのだろう」って。。これもまた【児童福祉】の目的っぽくて。。。【当たり前のことが、今生きてるって事が 平凡な日々こそが幸せって気付いたよ】って。素晴らしいです。。(けど、ちょっとまえ6で腕を切ってたんだろ?!?!?とつっこみたくなるが・・)
8.蛾
これはですね、、もうナイス!の一言。このちっぽけな自分を蛾に喩えて歌っている歌詞内容で、慎一郎の才能がキラリと光っている。蝶になりたい蛾の苦悩、とても分かりやすくて共感しやすいだろうな。この曲はなんといっても歌詞だろう!!
9.さよなら
これまた哲学者も真っ青な深い歌詞。。「一度冷めた物を温め直しても何処かしら温かくて何か物足りない 薄れた味と引き換えにして飲み込む不味さを許せと我慢するのでしょう」って。。。客観的な温度は同じでも、【温め直し】による再現は物足りない、と。。こういう物事の捉え方って大好きなんだよな。。あと、ちょっと祐っぽいなあと思ったのが、「如何にもな理論でもっと誘惑されたい環状線」という箇所。ホント、言葉の使い方がお見事。最後のところはちょっとメリーっぽい言葉遊びが入っている。
10.屑星
僕個人的にこのアルバムで最も好きな曲の一つ。これぞまさにシングルだろ!っていうハイテンションなアップビート。ZI:KILL、LUNA SEA好きなら絶対気に入るはず。あるいはムックのシングルっぽい曲。是非どこかでなんらかの仕方でこの曲は聴いてもらいたいな。。。「この世が終わらない限り 救いを求める亡者達 方舟なんてありゃしねぇ 鋼鉄の船は何を載せる」、すごくいい問いだと思う。慎一郎の詩のすごさは、まさに問いの立て方そのものだ。
11.光指す場所
気持ち的にはもう10曲目で超満足なのだが、さらにジュリィーの別の側面をここで見せてくる。まず、クリアトーンのコーラスギターの音色。こういう音色ってなんか懐かしいんですが・・・ 歌詞もかなり希望が見えてきている。このアルバム全体が、なんか一つの生命みたいな感じさえする。七曲目以降、どんどん希望が鮮明になってくるところが面白い。いったい6と7の間に何があったんだろう???
12.碧空
多分、この曲がジュリィーのターニングポイントとなったのだろう。一人苦悩していた人間が「普通の人」になる喜びを歌った曲、と僕は勝手に解釈している。しかも、この曲では、『他者へのまなざし』が入り込んできている。ここまで成長できたらたいしたもんだ。。究極の自己否定の先には、最高の自己肯定が待っている、そんな真理を描いた究極のポップロックだ。こういう曲って、今の時代にぴったりとはまっているとも思えなくもない。
13.紡ぐイノチ
ジュリィーのメンバーが、このアルバムで一番大切な曲!と言い切るロックバラード。ジュリィー初のフルアルバムは、かなり心地よく終わることになる。確かに、この曲があるのとないのとでは随分アルバムの印象は変わるだろうな。
【総評】
正直なところ、このアルバムにはほとんど期待していなかった。だからか、これを聴いた後、すごい幸せな気分になってしまった。「ああ、買っててよかった~」って。それくらいに、満足できる一枚に仕上がっていた。捨て曲なし。バリエーション豊富。歌詞も深くて読み応え抜群。彼らの伝えたいことも明確。ホント、いいバンドだなあと思えた。というわけで、ジュリィーも僕のお気に入りのV系バンドとなりました♪
このアルバムはどんなことを伝えようとしているのか?、という質問に対して、ボーカル慎一郎は次のように話していた。
これもやっぱり「命の尊さ」とか「重さ」とかですよね。ここ最近は自殺とか、誰かを誰かが殺したりとか、毎日誰かが死ぬってことが当たり前のように起こって。俺がガキの頃は、ここまで毎日人が死ぬようなニュースに触れることが無かったと思うんです。人の命の重さっていうのが軽くなってしまっているのかなって思ってて。犯罪が低年齢化して、小学生が同じクラスの子を殺しちゃったり、ましてや親を殺しちゃったりしてるのもあったり。アルバムタイトルに「イノチノ衝動」って言葉を使ったのは、衝動的でもいいから生きて欲しいって意味を込めたからなんです。生きようって思える一瞬を作って欲しいというか。(引用元)
この言葉にあるように、このバンド、結構真面目、というか、しっかり考えているバンドでもある。薄っぺらい美辞麗句を並び立てるバンドが多い中、言葉にこだわった歌をしっかり創作しよう!という意気込みも感じられる。このジュリィー、ホント素敵なNew Comerです。
僕ら元祖V系時代のリスナーにも、是非聴いてもらいたい ところどころジキルっぽいところもあったりして・・・ ・・・そう、かつてのジキルファンに是非聴いてもらいたい一枚なんです!(暗くて、重くて、歌詞がディープで・・・) Vo.の声質的にはムックそのものなんですが・・・ 世界観がジキルに近いように思うのです、はい。