人間の側から見ると、大佑の死はあまりにも早すぎて、悲しすぎる。
大佑の声、歌、曲、どれも、本当に素晴らしかったし、もっと生きててほしかった。
けれど、芸術の側からすると、大佑の死によって、とんでもない作品が生まれてしまった。
この作品は、「大佑」という人間の命が消えたことで生まれてしまったもので、
死によって産み落とされた音作品なんですね。。
このアルバムは、ヴィジュアル系の伝統をある意味濃縮還元した作品集で、
すべてのヴィジュアル系ファンが聴かねばならぬほどの作品だと思う。
自分が好きなバンドだけを聴くのは、ヴィジュアル系ファンじゃない。
そのバンドのファンに過ぎない。ゆえに、ヴィジュアル系など語ってはならない。
(例えばガゼットだけのファンなら、ガゼットだけ語ればいい。
偉そうに、ヴィジュアル系を語るな、と)
ヴィジュアル系ファンであるなら、「聴くべき作品」はたくさんある。
「聴くべきもの」をしっかり聴いている人間だけが、ヴィジュアル系を語れるのだ。
好き嫌いじゃない。
この大佑の『漆黒の光』は、まさにヴィジュアル系の歴史全体を包含している、といえよう。
とにかく、曲が素晴らしくて、どれもヴィジュアル系にまみれている。
大佑自身、本当に心からヴィジュアル系を愛していた男だから。。。
2曲目の「嫌」なんかは、もうヴィジュアル系の王道中の王道でしょう。
ハイスピードでネガティブでダークで狂気的。最高です。
3曲目のグリードは、12012の宮脇渉が歌っている。
曲の雰囲気を壊さず、大佑の意図もしっかり汲み取っている気がする。
歌詞は、もうほんと救いようのない人間の悲しみが綴られている。
まともな人間には書けない、迫力のある言葉だ。
4曲目のピアスも、ヴィジュアル系のお手本となりそうな曲。
この曲、なんとなんと、大佑とKannivalism|怜とのデュエット!!
これは絶対に聴くべき美しきハーモニーですよ。
ギターの入れ方も素晴らしく、圭の才能を感じる一曲。
ベースはラクリマのSHUSEで、うねりまくり。このベースも聴きどころ満載。
6曲目の「地下鉄に流れる、ある独りの男の『悲痛な叫び』にも似たメロディー」は、
MERRYのガラがたんたんと、時に激しく歌う悲壮感ただようメロウな曲。
これ、ガラでしょー!っていう、ホントガラにぴったりな曲でした。
退廃的で、絶望的で、終末的で、、、
荒んだ人が聴いたら、これ、まずいかも。。。本当に。。。
「君だけは違う、そう信じていた けれど皆と同じ普通の人だった」って、、、凄いです。
8曲目の翻弄は、この曲の中でも一番明るい?曲になってます。
この曲は、MERRYの健一が頑張ってます。
だから、MERRYっぽく聞こえてきます。ホントに!(わお)
大佑と黒の隠者達 - 翻弄
9曲目の独裁者の涙は、なんとMUCCの達郎がボーカル。
で、ドラムがなんと大佑(もともとドラマーだったんですよね、、、)
途中のジャズになるところとか、ドラムも上手かったんだ~って、、、
トドメは11曲目の葬送でしょうね。
このアルバムの最大の山場ともいえるでしょう。
ボーカルは、Dir en greyの京。すごいですよ、もう、これは。。。
ボーカルが楽器になってるし、狂気の叫びが連発。。。
愛されないことが人間形成にどれだけのダメージとなるのか。
愛されない人間の救いは、人間ではなく…
神とは何か、ということを示す究極の曲になっています。
「哀れみを」の連呼は、もはや「救われなさ」しか感じません。。。
最後の「嘘と迷路」は、大佑最強の一曲かもしれません。
ヴィジュアル系という世界を愛し貫いた男の必殺ソングですね。
僕自身、ヴィジュアル系が好きでよかったと思えるくらいにいい曲でして。。。
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大佑の死はとてつもなく悲しい。
でも、ヴィジュアル系最高のアーチストになりました。
死は永遠であり、永遠を喚起します。
彼の肉体はなくなっても、彼の魂は今僕の耳元で鳴り響いています。
それにしても、「愛されない」という苦しみがここまで人を苦しめるとは、、、
僕自身、ホンキで悩みます。
ある時期に、愛されなかった人間は、のちに愛されることを実感できるのか、と。
大佑の過去は全く分かりません。でも、きっと愛を知らないで育ってきたのでしょう。
(違ったら、ごめんなさい、、、)
この作品は、そういう葛藤に満ち溢れています。
愛されたい、愛されない、愛される実感が欲しい、愛されない実感・・・
全てのヴィジュアル系ファンにおススメしたい名盤であります!!
ザッヘル
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大佑は、1978年生まれ。享年31歳。
うちの弟と同い年。なんか、色々と考えてしまう。
30代前半って、色々と立ち止まる年齢だし、悩む年齢だし、
20代前半の常識が通じなくなる年。
うまくいけば、30代前半は飛躍の年になるけど、
躓けば、奈落の底に突き落とされる、そんな年だと思う。
10代の頃は、全てが輝いていて、目に見える格差もなくて、可能性に溢れている。
でも、20代になると、「格差」が歴然としてきて、可能性が次々に断たれていく。
で、30代になると、どうしようもないくらいに「現実」が固定化されて、動けなくなっていく。
ほとんど同じ世代の大佑に、僕はすごい感情移入をしてしまう。
ロックをやっていなかったら…とは考えたくないけど、
ロックをやっていなければ、また違う人生があったんだろうな、と。
でも、ロックをやったからこそ、こうして僕でも知っているわけで。
人生とは常に分からないものですね。。。