先日、現役でヴィジュアル系バンドをやっている20代前半のボーカルと語り合った。
20年前の僕みたいな奴だ(苦笑)。
この子は、それこそ5,6年くらい前かな。このブログを読んでくれていて、「落葉」というハンドルネームで、コメント欄にいっぱい意見を書いてくれていた子だった。
当時は、高校生(あるいは中学生?)だったと思う。まだ、僕が元気があって、ヴィジュアル系バンドのCDのレポをいっぱい書いていた頃だった。僕が紹介する昔のV系の音楽を、落葉くんは積極的に聴いてくれて、どんどんこのシーンの歴史について詳しくなっていった。今となっては、僕より詳しいくらいになった。若者の吸収力はすごい。
そんな彼は、今、ヴィジュアル系バンドを組んで、頑張っている。ライブも精力的に行っていて、音源もちらほら制作し始めている。
忙しい中、先日、わざわざ、千葉まで来てくれて、4時間弱、語り合った。
僕としては、とにかくやれる限り、頑張ってほしいな、と思う。もし可能なら、ヴィジュアル系シーンを暴れまわって、次の時代を築いてほしいと思うし、いつかは「武道館」に僕を招待してほしい。やるなら、とことん突き詰めてほしい。奴ならできる、と思う。「ネオ・ネオヴィジュアル系時代」を何と呼ぶのかは分からないけど、ポスト・ネオヴィジュアル系時代の礎を築いて、嵐を巻き起こしてほしい。
なお、武道館は、一階席のど真ん中がいい(苦笑)。
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それはさておき、、、
一生懸命に話す彼を見ていて、微笑ましいなぁ、と思うと当時に…
今の音楽シーンのリアルな厳しさを感じずにはいられなかった。
根本的に、今、あるいは、今後、『ヴィジュアル系バンドマン』で、やっていけるのかどうか。
(職業人として、あるいは、アーチストとして食っていけるかどうか…)
確かに、僕らの時代は、バンドマンが輝いていた時代だった。
X JAPAN、BUCK-TICK、LUNA SEA、GLAY、LA'rc en cielなど…
大物バンドが出現して、職業的にも、「やりがい」のある時代は、確かにあった。
上記の5バンドについては、もう、誰も何も文句は言わないだろう。
(シド、ナイトメアも、その中に入ると思う。Dirについては触れないでおく)
今も、彼らは第一線で、(ちょっと皮肉だが)僕ら世代のオーディエンスたちを相手に、「ビジネス」を続けられている。X JAPANのライブは、いい席だと10万円もするんだとか、、、
でも、それ以外のバンドは、ほとんど消えてしまった。
「今、当時活躍していたバンドマンは何をしているのだろう?」、と時おり考える。
夢の先の現実のことである。
僕も、もしかしたら、そうなっていたかもしれない(売れなかったと思うけど・・・苦笑)
そう考えると、この問いは僕にとってリアリティーが出てくる。
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そして今…
今日のヴィジュアル系シーンを見ていると、ホント、背筋が寒くなる。
当時の大物バンドよりもはるかに技術もあり、美しさもあり、カッコよさもあり、歌唱力もあり、コンセプトもしっかりしているのに、ぱっとしないバンドが実に多い。ぱっとしないわけではないが、当時のような「ブレイクアウト」、あるいは、「お茶の間進出」には至らない。
そして、解散…。
それに追い打ちをかけるように、音楽シーン全体が沈んでいる。CD販売ビジネスが(一部をのぞいて)成立しなくなり、ライブビジネス(あるいはそれに付随するアイテム販売)で、小銭を稼ぐようになった。「チェキ」とかいうインスタント写真を手売りするバンドマンも少なくない。
今も、ある程度の「顧客=ファン」はいる。いつの時代も、アンダーグラウンドの世界で、アンダーグラウンドな音楽を好む人はいる。
だけど、そんなコアなファンも、一生、自分たちのファンで居続けてくれるわけではない。数年もしたら、飽きられて、別のバンドに乗り移る。アンダーグラウンドの世界のコアなファンは、基本的に、「新し物好き」だから、新たにアンダーグラウンドな魅力をもったバンドが出てくれば、そのバンドに乗り移る。でも、それを責めることはできない。顧客=ファンの自由だからである。
バンドマンは、ゆえに、ある程度アンダーグラウンドな世界で活躍したら、「ブレイクアウト」、「お茶の間進出」を目指さなければならなくなる。バンドマンも人間であるし、その後の生活もあるし、職業人として生きていかなければならなくなる。ロックバンドミュージシャンとして生きていくためには、しっかりと「生業」として、地盤を固める必要がある。
ただ、完全なる固定ファンを数万人確保することは、今の時代、極めて難しい。
例えば、X JAPANやBUCK-TICKなど上記の5バンドは、数万~数十万の「完全に固定化されたファン層」をもつ。その一人が僕だ(苦笑)。彼らがリリースする作品であれば、なんでも買う(苦笑)。彼らが音楽活動を続ける限り、僕ら固定ファン層の人間は、お金を使い続ける。初回限定豪華版1万円でも、CDを買う。
そういう固定ファン層を数万以上集めるためには、「ブレイクアウト」、「お茶の間進出」は欠かせない。
それでも、圧倒的な人気を誇るのは、数年程度でしかない。その後は、ゆるやかに売り上げを落とし、ファンも一人ひとり消えていき、最終的に熱心な固定ファンだけが残ることになる。ほとんど、そういうファナティックな固定ファンが残らないバンドもいる。
ファン(主に女性)も、やがて、結婚し、出産し、子育てに励み、あるいは、仕事に忙殺され、音楽を楽しむ余裕を失っていく。
しかし、それはいつの時代でも同じこと。
今のヴィジュアル系界は、さらに深刻な問題を抱えている(ように思う)。
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ヴィジュアル系に限らず、「ロック」、あるいは、「若者文化」は、世代を超えることはほとんどない。同時代人たちのスタイルが通じるのは、同時代人だけである。稀に世代を超えて愛されるバンドもいるが、それとて、ごく限られたバンドだけである。今の若者たちに、かつて大ブレイクしたアーチストの名前を尋ねても、ほとんど知らないし、知っていても、まず音を聴くことはない。(落葉くんは、その点で別格だった)。
ヴィジュアル系バンドの中でも、これは顕著で、今頑張っている「中堅V系バンド」でさえ、若いV系ファンたちは見向きもしない。
上に挙げた5バンドのファンは、若い子の中にもいなくはないけれど、そのほとんどが「親が聴いていたから」という理由だ。
やがて、彼らは、「同時代」の若者のロックにはまっていく。
今で言えば、ONE OK ROCK、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女あたりか。
ヴィジュアル系界では、その母集団(ヴィジュアル系バンドを聴くリスナーの総数)も、どんどん少なくなってきている。
「ワンオク」をはじめ、ロック業界全体としては、まだまだ勢いのあるバンドも多いし、ブレイクアウトするバンドもいる。けれど、残念ながら、ヴィジュアル系バンドではないバンドばかりだ。それが、「時代精神」なのだろう。この時代精神には、抗えない…。
そんな「厳しい冬」の時代を迎えているのが、今のヴィジュアル系シーンだ。
ヴィジュアル系バンドを応援する僕としては、「いったい何をどうしたらよいのだろう」、と考える。
まぁ、音楽は、また巡り巡って、再び盛り上がる日が来るのだから、それを待てばいい、とは言えるかもしれない。
けど、それで、「食っていく」ことはできない…。
未来に待っているのは、「解散」しかない…。(現実的に…)
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純粋に、バンドの夢を追いかけている若い子たちは応援したい。
この冬の今、ヴィジュアル系を愛して、頑張っているバンドマンを心底応援したい。
でも、その一方で、その夢を追ってしまったことの「代償」を考えると、心配になる。
(親心、、、汗)
かといって、将来のことを考えてバンドをやるっていうのも違う気がする。
ロックなら、後先なんて考えずに、やりたいようにやればいい。
好きなことを好きなようにやればいい。
でも、それを、「大人」が無責任に言ってしまってよいものなのか。
…
先日、テレビで、某ロボット工学の研究者が言っていた。
「若いときには、夢を見るな。若いときの夢は、視野が狭く、可能性を(結果的に)閉ざすことにしかならない。大人になれば、子どものときには分かり得なかったような世界がある。その世界は、深い世界だ。その時までは、夢をもたずに、勉強をしろ」、と。
とてもドライな、でも、的を得た発言だなぁ、と思った。
幼き頃に夢描いたバンドマンに、ぴったりと当てはまる発言でもある。
だけど、、、
これを認めてしまったら、アナーキーなバンド文化はなくなってしまうだろう。(いや、もしかしたら、それでも生まれてくるかもしれないが…)。色々とフラストレーションをもち、感受性が豊かな若者だからこそ、ヴィジュアル系のようなド派手で、びっくりするような「表現」ができる、とも言える。
でも、、、
その世界だけにどっぷりと浸かって、世の中を知る努力を怠ると、その後で、悲惨な生活が待っているかもしれない。しかも、そういう人たちに対して、世間は、「自分が好きにやってきたからでしょ?!」、と、とても冷たい。
たとえ、バンドで成功したとしても、知性や教養がなければ、その「業界」にただ飲み込まれるだけで、使い捨てられてしまうだろう。ヴィジュアル系の世界は、今や、「既得権益」が強く作用している世界だ。それでいて、大手音楽業界的には、「うまみ」の少ない世界だ。パイの取り合いでもある。
だから、
僕はこう言いたい。
「若いときに、夢を見て、それを追いかけることは、素敵なことだ。だけど、夢だけを見ていると、その後で、厳しい現実が待っている。人様が知っているある程度の知識や教養を身につけて、10年後、20年後のことも考えて、真剣にバンド活動をやってほしい。武道館を目指すことと、一社会人・一家庭人になることを、同時に頑張ってほしい」、と。
***
…なんて、偉そうなことを言ってるけど、、、
僕なんかは、将来のことを考えて、いつもバンド活動を犠牲にしてきた身だから、なんとも言えない。
ヴィジュアル系の世界で生き続けている、本当にV系を愛しているバンドマンもいる。
生き方は色々だと思う。
…
でも、誰よりも「夢」を抱いていた。
そして、まだ、「夢」を見続けている。
だからこそ、バンドマンたちが後に不幸にならず、夢に向かって頑張っていけるよう、エールを送りたいのである。
大胆に。
且つ、賢明に。。。
1995年の僕…(苦笑)
この頃には、夢を犠牲にして、社会的に自立するための道を歩んでいたな、、、
その選択が正しかったのか、それとも、間違っていたのかは、分からない。
けど、今も、音楽を嫌いにならず、音楽を愛して、バンドマンの道を歩み続けている。
(バンドは今、空中分解中だけど、、、汗)
(でも、自分のバンドで夢を追うための準備はずっと続けている)
夢って、自分が諦めなければ、ずっとずっと続くんだよな。