Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

V系ロック少年の未来-現代ヴィジュアル系試論―

先日、現役でヴィジュアル系バンドをやっている20代前半のボーカルと語り合った。

20年前の僕みたいな奴だ(苦笑)。

この子は、それこそ5,6年くらい前かな。このブログを読んでくれていて、「落葉」というハンドルネームで、コメント欄にいっぱい意見を書いてくれていた子だった。

当時は、高校生(あるいは中学生?)だったと思う。まだ、僕が元気があって、ヴィジュアル系バンドのCDのレポをいっぱい書いていた頃だった。僕が紹介する昔のV系の音楽を、落葉くんは積極的に聴いてくれて、どんどんこのシーンの歴史について詳しくなっていった。今となっては、僕より詳しいくらいになった。若者の吸収力はすごい。

そんな彼は、今、ヴィジュアル系バンドを組んで、頑張っている。ライブも精力的に行っていて、音源もちらほら制作し始めている。

忙しい中、先日、わざわざ、千葉まで来てくれて、4時間弱、語り合った。

僕としては、とにかくやれる限り、頑張ってほしいな、と思う。もし可能なら、ヴィジュアル系シーンを暴れまわって、次の時代を築いてほしいと思うし、いつかは「武道館」に僕を招待してほしい。やるなら、とことん突き詰めてほしい。奴ならできる、と思う。「ネオ・ネオヴィジュアル系時代」を何と呼ぶのかは分からないけど、ポスト・ネオヴィジュアル系時代の礎を築いて、嵐を巻き起こしてほしい。

なお、武道館は、一階席のど真ん中がいい(苦笑)。

***

それはさておき、、、

一生懸命に話す彼を見ていて、微笑ましいなぁ、と思うと当時に…

今の音楽シーンのリアルな厳しさを感じずにはいられなかった。

根本的に、今、あるいは、今後、『ヴィジュアル系バンドマン』で、やっていけるのかどうか。

(職業人として、あるいは、アーチストとして食っていけるかどうか…)

確かに、僕らの時代は、バンドマンが輝いていた時代だった。

X JAPAN、BUCK-TICK、LUNA SEA、GLAY、LA'rc en cielなど…

大物バンドが出現して、職業的にも、「やりがい」のある時代は、確かにあった。

上記の5バンドについては、もう、誰も何も文句は言わないだろう。

(シド、ナイトメアも、その中に入ると思う。Dirについては触れないでおく)

今も、彼らは第一線で、(ちょっと皮肉だが)僕ら世代のオーディエンスたちを相手に、「ビジネス」を続けられている。X JAPANのライブは、いい席だと10万円もするんだとか、、、 

でも、それ以外のバンドは、ほとんど消えてしまった。

今、当時活躍していたバンドマンは何をしているのだろう?」、と時おり考える。

夢の先の現実のことである。

僕も、もしかしたら、そうなっていたかもしれない(売れなかったと思うけど・・・苦笑)

そう考えると、この問いは僕にとってリアリティーが出てくる。

***

そして今…

今日のヴィジュアル系シーンを見ていると、ホント、背筋が寒くなる。

当時の大物バンドよりもはるかに技術もあり、美しさもあり、カッコよさもあり、歌唱力もあり、コンセプトもしっかりしているのに、ぱっとしないバンドが実に多い。ぱっとしないわけではないが、当時のような「ブレイクアウト」、あるいは、「お茶の間進出」には至らない。

そして、解散…。

それに追い打ちをかけるように、音楽シーン全体が沈んでいる。CD販売ビジネスが(一部をのぞいて)成立しなくなり、ライブビジネス(あるいはそれに付随するアイテム販売)で、小銭を稼ぐようになった。「チェキ」とかいうインスタント写真を手売りするバンドマンも少なくない。

今も、ある程度の「顧客=ファン」はいる。いつの時代も、アンダーグラウンドの世界で、アンダーグラウンドな音楽を好む人はいる。

だけど、そんなコアなファンも、一生、自分たちのファンで居続けてくれるわけではない。数年もしたら、飽きられて、別のバンドに乗り移る。アンダーグラウンドの世界のコアなファンは、基本的に、「新し物好き」だから、新たにアンダーグラウンドな魅力をもったバンドが出てくれば、そのバンドに乗り移る。でも、それを責めることはできない。顧客=ファンの自由だからである。

バンドマンは、ゆえに、ある程度アンダーグラウンドな世界で活躍したら、「ブレイクアウト」、「お茶の間進出」を目指さなければならなくなる。バンドマンも人間であるし、その後の生活もあるし、職業人として生きていかなければならなくなる。ロックバンドミュージシャンとして生きていくためには、しっかりと「生業」として、地盤を固める必要がある。

ただ、完全なる固定ファンを数万人確保することは、今の時代、極めて難しい。

例えば、X JAPANやBUCK-TICKなど上記の5バンドは、数万~数十万の「完全に固定化されたファン層」をもつ。その一人が僕だ(苦笑)。彼らがリリースする作品であれば、なんでも買う(苦笑)。彼らが音楽活動を続ける限り、僕ら固定ファン層の人間は、お金を使い続ける。初回限定豪華版1万円でも、CDを買う。

そういう固定ファン層を数万以上集めるためには、「ブレイクアウト」、「お茶の間進出」は欠かせない。

それでも、圧倒的な人気を誇るのは、数年程度でしかない。その後は、ゆるやかに売り上げを落とし、ファンも一人ひとり消えていき、最終的に熱心な固定ファンだけが残ることになる。ほとんど、そういうファナティックな固定ファンが残らないバンドもいる。

ファン(主に女性)も、やがて、結婚し、出産し、子育てに励み、あるいは、仕事に忙殺され、音楽を楽しむ余裕を失っていく。

しかし、それはいつの時代でも同じこと。

今のヴィジュアル系界は、さらに深刻な問題を抱えている(ように思う)。

***

ヴィジュアル系に限らず、「ロック」、あるいは、「若者文化」は、世代を超えることはほとんどない。同時代人たちのスタイルが通じるのは、同時代人だけである。稀に世代を超えて愛されるバンドもいるが、それとて、ごく限られたバンドだけである。今の若者たちに、かつて大ブレイクしたアーチストの名前を尋ねても、ほとんど知らないし、知っていても、まず音を聴くことはない。(落葉くんは、その点で別格だった)。

ヴィジュアル系バンドの中でも、これは顕著で、今頑張っている「中堅V系バンド」でさえ、若いV系ファンたちは見向きもしない。

上に挙げた5バンドのファンは、若い子の中にもいなくはないけれど、そのほとんどが「親が聴いていたから」という理由だ。

やがて、彼らは、「同時代」の若者のロックにはまっていく。

今で言えば、ONE OK ROCK、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女あたりか。

ヴィジュアル系界では、その母集団(ヴィジュアル系バンドを聴くリスナーの総数)も、どんどん少なくなってきている。

「ワンオク」をはじめ、ロック業界全体としては、まだまだ勢いのあるバンドも多いし、ブレイクアウトするバンドもいる。けれど、残念ながら、ヴィジュアル系バンドではないバンドばかりだ。それが、「時代精神」なのだろう。この時代精神には、抗えない…。

そんな「厳しい冬」の時代を迎えているのが、今のヴィジュアル系シーンだ。

ヴィジュアル系バンドを応援する僕としては、「いったい何をどうしたらよいのだろう」、と考える。

まぁ、音楽は、また巡り巡って、再び盛り上がる日が来るのだから、それを待てばいい、とは言えるかもしれない。

けど、それで、「食っていく」ことはできない…。

未来に待っているのは、「解散」しかない…。(現実的に…)

***

純粋に、バンドの夢を追いかけている若い子たちは応援したい。

この冬の今、ヴィジュアル系を愛して、頑張っているバンドマンを心底応援したい。

でも、その一方で、その夢を追ってしまったことの「代償」を考えると、心配になる。

(親心、、、汗)

かといって、将来のことを考えてバンドをやるっていうのも違う気がする。

ロックなら、後先なんて考えずに、やりたいようにやればいい。

好きなことを好きなようにやればいい。

でも、それを、「大人」が無責任に言ってしまってよいものなのか。

先日、テレビで、某ロボット工学の研究者が言っていた。

若いときには、夢を見るな。若いときの夢は、視野が狭く、可能性を(結果的に)閉ざすことにしかならない。大人になれば、子どものときには分かり得なかったような世界がある。その世界は、深い世界だ。その時までは、夢をもたずに、勉強をしろ」、と。

とてもドライな、でも、的を得た発言だなぁ、と思った。

幼き頃に夢描いたバンドマンに、ぴったりと当てはまる発言でもある。

だけど、、、

これを認めてしまったら、アナーキーなバンド文化はなくなってしまうだろう。(いや、もしかしたら、それでも生まれてくるかもしれないが…)。色々とフラストレーションをもち、感受性が豊かな若者だからこそ、ヴィジュアル系のようなド派手で、びっくりするような「表現」ができる、とも言える。

でも、、、

その世界だけにどっぷりと浸かって、世の中を知る努力を怠ると、その後で、悲惨な生活が待っているかもしれない。しかも、そういう人たちに対して、世間は、「自分が好きにやってきたからでしょ?!」、と、とても冷たい。

たとえ、バンドで成功したとしても、知性や教養がなければ、その「業界」にただ飲み込まれるだけで、使い捨てられてしまうだろう。ヴィジュアル系の世界は、今や、「既得権益」が強く作用している世界だ。それでいて、大手音楽業界的には、「うまみ」の少ない世界だ。パイの取り合いでもある。

だから、

僕はこう言いたい。

若いときに、夢を見て、それを追いかけることは、素敵なことだ。だけど、夢だけを見ていると、その後で、厳しい現実が待っている。人様が知っているある程度の知識や教養を身につけて、10年後、20年後のことも考えて、真剣にバンド活動をやってほしい。武道館を目指すことと、一社会人・一家庭人になることを、同時に頑張ってほしい」、と。

***

…なんて、偉そうなことを言ってるけど、、、

僕なんかは、将来のことを考えて、いつもバンド活動を犠牲にしてきた身だから、なんとも言えない。

ヴィジュアル系の世界で生き続けている、本当にV系を愛しているバンドマンもいる。

生き方は色々だと思う。

でも、誰よりも「夢」を抱いていた。

そして、まだ、「夢」を見続けている。

だからこそ、バンドマンたちが後に不幸にならず、夢に向かって頑張っていけるよう、エールを送りたいのである。

大胆に。

且つ、賢明に。。。

1995年の僕…(苦笑)

この頃には、夢を犠牲にして、社会的に自立するための道を歩んでいたな、、、

その選択が正しかったのか、それとも、間違っていたのかは、分からない。

けど、今も、音楽を嫌いにならず、音楽を愛して、バンドマンの道を歩み続けている。

(バンドは今、空中分解中だけど、、、汗)

(でも、自分のバンドで夢を追うための準備はずっと続けている)

 

夢って、自分が諦めなければ、ずっとずっと続くんだよな。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Visual-Kei/J-ROCK」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事