1994年(平成6年)にSANKYOから登場した2回権利モノ「ポールポジションI」
当時流行りの「F1レース」をモチーフにした、新要件権利モノ(現金機、ステラ枠)。
※後継機…「CRポールポジション」、「サーキットウルフ」
(後継機については、後述)
盤面中央には、赤白ツートンカラーのレーシングカーが、横向きにドーンと構えていた。
このヤクモノ、車体のカラーリングやドライバーの黄色いヘルメットから、当時カリスマパイロットだった「アイルトン・セナ」(マクラーレン・ホンダ)がモデルと思われる。
ただ皮肉な事に、本機がまさに新台導入される時期(94年5月)、セナはレース中の大事故(イタリア・イモラ、サンマリノGP)で帰らぬ人となった。F1界の英雄の急逝に、世界中が悲しみにくれた事を思い出す(GW連休中、長野・大町の観光ホテルで訃報に接した)。
登場のタイミングは少々悪かったものの、デジタルとアナログを融合したゲーム性を評価するファンも多い。まぁ、好き嫌いのハッキリ分かれる機種だったが…。
(スペック)
★賞球…7&15
★デジタル確率…1/65(2回目権利時は1/6.5)⇒デジタル「33」「55」「77」で当り
★回転体の振り分け率…1/4(V穴1個、ハズレ穴3個)
★TOTALの大当り確率…1/260(2回目権利時は1/26)
★平均出玉…4000~4600個
★盤面左サイドに、LN抽選用の7セグあり(0~9の10種類、選択率は各1/10)
(ゲーム性)
レーシングカーの前後輪を挟むように、二桁の7セグデジタルが配されている。これは、「カーナンバー」を意識した配置だろう。
役物下の「START」チャッカーを通過すると、メインデジタルが回転する(保留4個付)。
メインデジタル当選で、天下の電チューが最大0.9秒×6回開放。但し、玉を1個拾った時点で、開放は打ち切りとなる。
電チューに拾われた玉は、レーシングカーの後輪を伝って前輪に向かう。タイヤの前輪は、約4秒周期で反時計方向に回転しており、等間隔に4つの穴がある。うち一つがVゾーンで、「SUPER V」と書かれている。
すなわち、本機は「デジタル当選⇒回転体Vゾーン入賞」の二段階を経て、権利獲得となるタイプだ。権利獲得後は、右打ちで消化する。16ラウンドで出玉約2300個。2回目の権利時は、デジタル確率が10倍アップ。
(リーチアクション)
左デジタルには3,5,7の他に、ブランク絵柄のアルファベット。一方、右デジタルには0~9の数字。左デジに3,5,7が出ればリーチで、ノーマルリーチの他に2種類のスーパーリーチが存在した。スーパー、ノーマルのいずれからも大当りする。
(1)スローリーチは、大当り絵柄の手前でスロー回転に切り替わるSPアクション、(2)レーサーリーチは、役物のドライバーが右手を上げてVサインをする。2回目権利時に発生したレーサーリーチは鉄板。
(止打ちによる回転体Vゾーン狙い)
本機は、回転体(タイヤ)と電チュー開放の周期が完璧に同調しており、一見すると止打ち攻略の隙はないように見える。
しかし、実際には、Vゾーンの位置を見極めて玉の打ち出しを調整(二個入れ)する事で、通常よりV入賞率をアップさせる事が可能だった。
具体的には、デジタルが揃った瞬間のVゾーンの位置によって、打ち方を変える。
この時、反時計周りに動く前輪の回転体を、文字通り「時計」に見立てると判り易い。
(1)Vが「1時~11時」の時にデジタルが揃ったら、そのまま打ち出しを続行。このタイミングでデジタルが揃った場合、電チュー入賞=ほぼV入賞となる。
(2)Vが「3時~1時」の時にデジタルが揃うと、通常はV入賞が困難である。しかし、電チューの開放に合わせて玉を2発だけ打ち出せば、2個目の玉が拾われた時に、V入賞する可能性が高い。空振った時は、最大6回の電チュー開放に合わせて、「2個入れ」を繰り返す。
(3)Vが「11時~9時」の時にデジタルが揃ったら、2個入れでも良いが、より確実性を求めるなら、電チュー開放と同時に玉が入賞するよう、フライング気味に打ち出しを開始する。タイミング良く電チューに拾われた玉が、Vに行き易い。
(4)Vが「9時~3時」の時にデジタルが揃うと、Vに入る可能性は極めて低い。技術介入しにくいパターンだが、Vの位置によっては(2)と同様に「2個打ち」でVを狙える場合アリ。
なお、上記の方法以外にも、「デジタルが揃った後、回転体のVゾーンが11時の位置に来た時に、玉を3発だけ打つ」という、シンプルな止打ち打法も存在した。
(ポールポジションIの後継機について)
(1)CRポールポジション(1994年、CR権利モノ、ステラ枠)
現金機「ポールポジションI」のCR版として、約半年後の94年10月に登場。ヤクモノは共通だが、確率やゲーム性は少々異なる。
デジタル確率は1/12と高い。1,3,5,7,9のゾロ目のほか、左デジが奇数で右デジタルに「F」が出てもOKとなる。しかし、電チューの開放時間が0.38秒と短いのが難点。なお、回転体の振り分けは1/4のままだ。
また、CR版は、権利獲得時に盤面左の7セグ(現金機ではLN用セグ)で、「ラウンド&確変抽選」を行う。3か7が出れば16ラウンド確定&確変突入だが、7セグに「四角」が出ると1ラウンドの小当りとなる。確変は1/2継続の1回ループ型で、小当りで終了する。
なお、確変中は、電チュー開放時間が5.8秒or4個入賞まで延長される。したがって、デジタルさえ揃えば、ほぼ権利獲得となる。
(2)サーキットウルフ(1995年、一般電役、ナスカ枠とFF枠の両枠アリ)
「ポールポジションI」のリメイク的な存在だが、こちらは2回ワンセットの一般電役。
ゲーム性は、デジタルが低確率である事を除けば、CRポールポジションの確変時に近い。
デジタル確率は1/264と極端に低い。その代わり、電チュー開放時間は約5.5秒or4カウントと長くなっている。前輪の回転体にはVゾーンと3つのハズレ穴があるが、4個入賞なら確実にVに入る(3個以下だとアウト)。よって、デジタルが揃えば、ほぼ大当りとなる。
大当り後は、右打ちで消化する。3つの電チューの連動で、出玉を増やすタイプだ。右サイドの釘調整次第で出玉の増減はあるが、1回の大当りで2000~2500個の出玉がある。
1回目の大当り終了後は、通常打ちに戻す。この時、盤面左下のチューリップが開いているので、ここに玉を入れると2回目の連動がスタートする。よって、出玉ロスはほとんどない。
注意すべきは、大当り中の「パンク」だ。1回目の大当り中、誤って通常打ちに戻してしまうと、左下のチューリップに入賞して、チューリップが閉じる可能性がある。こうなると、2回目の大当りがフイになるので、右打ち時は注意が必要となる。
ちなみに、2回目の権利を獲得する時に、左のチューリップに2個入賞すると「ダブル」となり、1回分の大当り出玉が上乗せされる。
(3)炙熱賽車(「ポールポジションI」の台湾Ver。「炙熱」=フィーバー、「賽車」=レーシング)
1994年当時の話だが、某TV局のパチンコ特番で「台湾パチンコ」が取り上げられ、三共の台湾法人「三今股分有限公司」のショールームが紹介された事がある。
「三今」という社名の由来だが、「共」という字が共産主義を連想させる為、反共だった当時の台湾ではタブーとされたからだ。
このコーナーで、当時の「三今」担当者である森田氏へのインタビューが行われた。
森田氏の背後には、数々の現役機種が展示されており、「Fビューティフル」や「Fウォーズ」といった台に混じって、ポールポジションIの姿もあった。日本語の機種名の下には、「炙熱賽車」との表記があった。まだ、日本でも、新台からそれ程経っていない時期である。
その他、台湾オリジナル仕様の「フィーバー西遊記」(Fオールセブンがベースのドラム機)、「フィーバー至尊」(Fクイーンがベースの爆裂連チャン台)なども並んでいた。
森田氏によると、「台湾には規制が全くない為、連チャン性の高い台を自由に作る事ができる。また、メーカーが納入した台を、店側が一層波の荒いプログラムに改造するケースも多い。台湾の人はアツくなりやすい性格の為、こういったギャンブル台に需要がある」との事だった。
確かに、当時の台湾パチンコというと、大当り確率が1/500~1/600と低い代わりに、連チャン性も極端に強かった。また、大当り絵柄の数字分だけ連チャンするタイプも、多く存在した。
さらに、「呼出ランプや台枠が突然光り出す」、「リーチが立て続けにかかる」、「アタッカーが一瞬開く」という具合に、「大当りの前兆機能」を備える台も少なくなかった。
台湾版・ポールポジションIの「炙熱賽車」も、こうした基本スペック(メーカーが組んだプログラム)をベースにした複数のVerが存在したハズだ。
ちなみに、当時の台湾のパチ屋には、一日じゅう出っ放しの「サービスROM」がある一方で、三日三晩打ち込んでも絶対に当りの来ない、「極悪回収ROM」も存在したという。
オールナイト営業の店が多く、掛け持ち遊技も可能だった為、負けようと思えばとことん負けられるのが、この時代の台湾パチンコである。大当り確率ゼロの台を連日打ち続け、根こそぎやられた客がブチギレて、台を拳銃で打ち抜いた…という「逸話」もあるほどだ。