泉心堂治療院

せんしんどうちりょういん

ツボと中庸:道の医学

2015年09月20日 | Weblog
ある20代の女性患者さんとの会話より。

「この前『肘の少し下にあツボ、先生に押されると痛いんだよなっ』と思って、

試しに友達のツボを押しつづけていたら、『手がしびれてきた、やめて~』と言われました。」

そのツボの名は『手三里』。

肘の外側から親指に向かって指三本分ほど下にあるツボで、

一般的に腱鞘炎や肩こりなどに効果のあるツボです。

とくに近年パソコンのマウスやタブレット、スマホなどを多用する状況において、

負荷のかかりやすいポイントでもあり、

押圧してみるとズンとした痛みを感じる人も多いのではないかと思います。


通常、ツボは針やお灸、指圧などの適切な刺激を加えれば、

効果を発揮してくれると言われています。

そのツボを押してみてズンと応えるような鈍い痛みがある場合などは、

そのツボに体の不調による反応が出ているとされ、最適な治療点となります。

(注:ツボにより発現する反応は様々なパターンがあります。)


しかし、ツボによってはもう一つの側面を持っている場合があり、

それは武術の急所と一致したツボがあるということです。

そして、上記した『手三里』も、武術では急所とされているポイントになります。

例えば暴漢に襲われた際などに、『手三里』の部位を押さえると、

その痛みで相手がひるむなどと護身術に紹介されていることもあります。

そして一般の人では相手をひるませる程度かもしれませんが、

修練を積んだ武術家が的確にポイントをとらえれば、

相手の腕の自由を奪ってしまうほどの威力が発揮できる可能性を秘めています。


つまり、ツボというものは、多くは表裏性を持っているということです。

手三里の場合、「表」はツボ(治療点)としての側面。

「裏」は急所としての側面。

どちらも同じ場所に存在しています。

そして、それをツボ(治療点)として作用させるのか、急所として作用させるのかは、

それを扱う者次第ということになります。

ちなみに冒頭の患者さんには

「○○さんの邪な心が負の効果を引き出してしまったのですね。」

と申し上げておきました。(もちろん冗談ですが・・・)

中国医学を修めるものに中庸の心がけが求められる所以でもあります。