「独楽」を静止状態で立たせようとするのは至難の業です。
しかし、高速で回転させてやると、独楽は起立状態を保つことできます。
つまり動きによって安定が生じるのです。
そして独楽の形は回転時の安定を保つための重要な要素です。
いびつな形の独楽では不安定な回転でバランスを保つことができず、すぐに倒れてしまいます。
独楽が起立する際の軸は、回転という動きの中での安定よって生み出されたものです。
それはすなわち「動中の静」であるといえます。
そして「動中の静」は回転する独楽における「無用の用」であるといえます。
回転している時のみに出現する「無用の用」です。
人間の身体は、エネルギーが常に循環することによって、バランス・恒常性が保たれています。
つまり、エネルギー循環という「動」により、
バランス・恒常性という「静=無用の用」が生み出され、保たれます。
そしてエネルギー循環などの「動」に乱れが生じたとき、
「静」すなわちバランス・恒常性にはひずみや乱れが発生すると考えます。
「動」であるエネルギー循環の乱れを察知し、調えることで、
「無用の用」である「静」のバランス・恒常性の乱れを復元させることが、
道の医学の原則でもあるのです。
このように、道の医学において
「無用の用」を生み出す「器」は「形=物体」だけではなく、
エネルギー循環などの「動」としても存在するのです。