台湾の医療制度では、医師は西医師(西洋医学の医師)と中医師(中国医学の医師)に分けられ、それぞれの分野で診療を行います。
私の恩師、郭先生は中医師で、患者さんが来院されると状態に応じて漢方薬の処方や針灸で診療を行っておりました。
診療中は先生の邪魔をしてはいけないので、私は先生の処方する漢方薬の内容や、針を打ったツボを見て、
先生はどのように患者さんの状態を把握しているのかを推察し、必要ならば診療終了後に質問をしました。
ちなみに漢方薬ですが、漢方薬の成分を抽出して粉状に精製したいわゆるエキス剤を出す場合と、
生薬という薬草などの薬材を自分で煎じて服用する煎じ薬を処方する場合があります。
前者は、診療所内で先生の処方に従って、○○を何グラム、××を何グラムなどと調合し、1回分ずつ包装して患者さんに渡します。
後者の煎じ薬は、先生が紙に処方を書いて患者さんに渡し、
患者さんは自分で漢方薬材店に行ってその処方分の薬を1回分ずつ量り分けてもらい、自分で煎じて服用します。
ある日、連続して3人の患者さんが煎じ薬の処方を受けました。
最初に、喘息の患者さん。
次に、関節リウマチの患者さん。
そして、ガンの患者さん。
私はその3人の処方を見てある疑問が生じ、診療終了後に郭先生に質問しました。
「先生、今日煎じ薬の処方を受けた3人の患者さん、先生がいつも風邪の患者さんに処方する内容とあまり変わらないように思えたのですが、何が違うのでしょうか?」
すると、郭先生は
「同じだよ。治し方はみんな風邪と同じ。
病名だけで判断するからややこしくなるのだよ。ちゃんと病人を見なさい。」
中国医学は「証」というものを基に治療方針を組み立てます。
「証」というのは病名とは違い、一人一人の患者の体質・体調や病気の性質・進行度などから導き出さるもので、
病名は違っても「証」が同じであれば、処方する漢方薬も同じような性質のものになりうるのです。
また、「証」を立てることで、複数の病気を併発していても、同時に治療することが可能となります。
逆に、たとえばAさんとBさんが同じ病名の病気を患っていたとしても、
二人の「証」が異なれば、中国医学的には別々の治療方針を立てるため、別々の性質の漢方薬を処方されることもあるのです。
よって、より効果的な治療を行いたければ、的確な「証」を立てることが必要で、
的確な「証」を立てるためには、患者さんの体質・体調と病気の性質・進行度などをしっかりと把握することが必要です。
つまり、患者さんをよく観察しなさいということです。
それは風邪であっても他のどんな病気であっても同じです。
「証」を立てて治療するるということは、何本にも分かれた道の中から、どれが目的地にスムーズに到着できる正しい道なのかを選択するようなものです。
病名だけで判断して「証」を軽視すれば、道を誤ることにもなりかねません。
最後に蛇足ですが、上記した3人の患者さんの漢方薬がどれも風邪の場合と同じようなものにみえたのか考察しますと、
どれも免疫が関係しているからだと思います。
私の恩師、郭先生は中医師で、患者さんが来院されると状態に応じて漢方薬の処方や針灸で診療を行っておりました。
診療中は先生の邪魔をしてはいけないので、私は先生の処方する漢方薬の内容や、針を打ったツボを見て、
先生はどのように患者さんの状態を把握しているのかを推察し、必要ならば診療終了後に質問をしました。
ちなみに漢方薬ですが、漢方薬の成分を抽出して粉状に精製したいわゆるエキス剤を出す場合と、
生薬という薬草などの薬材を自分で煎じて服用する煎じ薬を処方する場合があります。
前者は、診療所内で先生の処方に従って、○○を何グラム、××を何グラムなどと調合し、1回分ずつ包装して患者さんに渡します。
後者の煎じ薬は、先生が紙に処方を書いて患者さんに渡し、
患者さんは自分で漢方薬材店に行ってその処方分の薬を1回分ずつ量り分けてもらい、自分で煎じて服用します。
ある日、連続して3人の患者さんが煎じ薬の処方を受けました。
最初に、喘息の患者さん。
次に、関節リウマチの患者さん。
そして、ガンの患者さん。
私はその3人の処方を見てある疑問が生じ、診療終了後に郭先生に質問しました。
「先生、今日煎じ薬の処方を受けた3人の患者さん、先生がいつも風邪の患者さんに処方する内容とあまり変わらないように思えたのですが、何が違うのでしょうか?」
すると、郭先生は
「同じだよ。治し方はみんな風邪と同じ。
病名だけで判断するからややこしくなるのだよ。ちゃんと病人を見なさい。」
中国医学は「証」というものを基に治療方針を組み立てます。
「証」というのは病名とは違い、一人一人の患者の体質・体調や病気の性質・進行度などから導き出さるもので、
病名は違っても「証」が同じであれば、処方する漢方薬も同じような性質のものになりうるのです。
また、「証」を立てることで、複数の病気を併発していても、同時に治療することが可能となります。
逆に、たとえばAさんとBさんが同じ病名の病気を患っていたとしても、
二人の「証」が異なれば、中国医学的には別々の治療方針を立てるため、別々の性質の漢方薬を処方されることもあるのです。
よって、より効果的な治療を行いたければ、的確な「証」を立てることが必要で、
的確な「証」を立てるためには、患者さんの体質・体調と病気の性質・進行度などをしっかりと把握することが必要です。
つまり、患者さんをよく観察しなさいということです。
それは風邪であっても他のどんな病気であっても同じです。
「証」を立てて治療するるということは、何本にも分かれた道の中から、どれが目的地にスムーズに到着できる正しい道なのかを選択するようなものです。
病名だけで判断して「証」を軽視すれば、道を誤ることにもなりかねません。
最後に蛇足ですが、上記した3人の患者さんの漢方薬がどれも風邪の場合と同じようなものにみえたのか考察しますと、
どれも免疫が関係しているからだと思います。