今朝、あんとサイとはなで朝五時半から多摩川に行った。
あんは多摩川に着くとはなと走り回ったが、すぐに帰ろうとした。
そこに柴犬が通り、あんは遊びに行った。
その柴犬が帰るとあんも帰ろうとして、多摩川の沿線道路の信号のところまで歩いて行ってしまった。
そこで伏せをして待っていたが、自分が近くによると遊びたがるように逃げ、道路に行ってしまい、車にぶつかってしまった・・・。
それから、あんは帰り道とは反対の方向、多摩川上流に向かい、沿線道路の脇を走っていってしまった。
呼んでも来なかった・・・。
走り方は普段と変わらない様子だったので、車にぶつかった恐怖心でとりあえず走り出してしまった。
自分が走っても、到底追いつかず、あんを見失ってしまった。
矢野口の橋の向こう側には行っていないと思った。
その前の草むらのなかで脅えているのではないかと思った。
矢野口の橋の向こうにも行って、散歩している人に「黒の柴犬を見ませんでしたか?」と聞いたが「見ていない」とのことだったので、やはり草むらのなかに逃げ込んで脅えているのだろうと思った。
自分の背丈ほどもある草むらのなかを必死に探した。
泣きそうになりながら必死に探した。
「あん!」何度も何度も呼んでみたが、あんのいる気配を感じることが出来なかった。
サイもはなも探してくれた。
母親も呼んだ。
そばを通りかかった柴犬を散歩していたおじさんも一緒に探してくれた。
あんの友達のサン{パピオン}も矢野口の橋の向こうから来た。
「あんを見ませんでしたか?車にはねられ、逃げてしまったんです・・・。たぶん、ここにいると思うのですが・・・」。
「それは心配ですね」。
そう言ってほんとうに心配してくれて、一緒にしばらく探してくれた。
橋の手前には多摩川に流れる小さな川がある、そこに走り疲れて入ったのでないかと思い、川に入り、草むらの方に声をかけながら探したりもした。
声が出なくなるくらい、あんの名を呼んだ。
祈りに祈った。
泣きそうになりながら、祈りながら、あんの名を呼び続けた。
いろんなことが頭のなかを過ぎった。
あんがうちに来てくれた最初の日のこと、今朝のこと、昨夜のこと、あんの居ない世界のこと、自分の愚かさのこと、・・・ほんとうにいろんなことが脳裏をかすめ、絶望感に包まれながら、草むらのなかを歩き回った。
疲れ歩けなくなり、腰を下ろした。
頭抱えてしゃがみ込んだ。
それでも、また少し動けそうになると草むらの回りを歩いたり、そのなかに入ったりの繰り返しを二時間ぐらいしていた。
母親には帰ってもらい、警察に行ってもらうことにした。
きっと悲嘆にくれたとんでもない顔をしていたと思う。
サイとも顔を合わして話が出来なかった。
あんが出てくるまで、もうしばらく、いや、ずっと待っていようと思っていた。
また少し腰を下ろし、絶望とあんが痛み怖がっていないかと胸が張り裂けそうに痛めていると、矢野口の橋の向こうから、二匹の柴犬を連れて散歩しているおばちゃんともう一人ダックスを連れているおじさんが来た。
二匹の柴犬のうち、一匹は黒柴だった。
だんだんと近づいてくるとあんに似ていると思った。
あまりにあんを探していたので、世の中のすべての黒柴がきっとあんに見えるかもしれないと思った。
だが、それはあんだった。
すっかり人の家の子になって散歩している感じだった。
平気に顔してトコトコと歩いてきた。
あんを連れてきてくれたのは、ふぅーちゃん{柴犬}とふぅーちゃんのおばさんだった。
{つづく}
書きながら、今でも胸はどきどきしている。
長くなってしまうので、今日はこのくらいで。
あんはいつものように寝ている。
身体に痛いところはないようだ。
優しくあんを撫でてくる。