今日も多摩川にあんと行っていた。
多摩川では胡麻柴犬にあった。
飼い主さんとしばらく談笑した。
飼い主さんの話によると、もうその胡麻柴は9歳になり、どの犬ともケンカしてしまうとのことだった。
あんもそれを察したのか、また遊んでくれないのが嫌だったのか、珍しく吠えた。
その前に「うちはケンカしませんよ」と言った手前、少し恥ずかしくもなったが、あんはすぐに大人しくなり、飼い主さんに頭を撫でられ、良い子良い子されていた。
「二歳過ぎて大人しい柴なんて、天然記念物ですよ。うちのはゴールデンにも、熊とでも思っているのか、バクッと行ってしまうんです」そう言ってリードは短くしていた。
その胡麻柴は大人しくお座りも出来ずに身体を斜めに倒していた。
あんはもう大人しくお座りしていた。
「綺麗な黒柴ですね。麻呂もしっかりと出ている」
麻呂とは目の上のマークのこと、あんはしっかりと出ている。
綺麗と言われ、きっとあんよりも自分が喜んでいただろう。
小心者でやんちゃなあんだが大人しくてほんとうに可愛い。
そんなあんもこれから少しずつ変わっていくのかもしれないと胡麻柴の飼い主さんの話を聞きながら思った。
だけど、それから別れ、あんと走り出し、あんとともに風を浴び、あんの笑った顔を見ると、あんがどう変わろうと、それはそれで良い、そんな心配を今する必要もない、気持ちよく走ろうと、そんな風にすぐに思えた。
あんは相変わらず、まだ遊び足らぬと多摩川の沿線道路の信号の近くに行くと、帰る方向と反対を向いて座り込む。
座り込むが今日は「おいで」の一声でくるりと飛び上がり、こっちに向かって走ってくる。
うふふ、鳥のササミを持っているんです。
あんは遊びたい気持ちよりもササミを選ぶんです。
その変わりように少し笑った。
あんはビッグスマイルでササミをもらいに来た。