いつもあんと多摩川のグランドでボール投げをしているところの多摩川は本流ではなく、小さな川と湧き水が流れ込む水の流れの少ない場所であり、それを作り出している中州には小さな砂丘がある。
今日はあんに砂の上を走らせてあげようと思い、あんを抱っこして、小さな川を渡り、湧き水が湧いているところを通った。
この湧き水がわいているところにはクレソンがあった。
案外クレソンが好きな自分は一瞬持って帰って食べようかなとも思った。
湧き水のところにあるクレソンはきれいだし、食べても問題ないだろうと思ったからである。
一瞬思ったと言うのは、こうして書いているとすでに嘘だと分かる。
なぜなら、今でも持って帰って来れば良かったと少し思ったり、明日取りに行こうかと考えているからだ。
さて、この話はさておき、小さな砂丘に着いた自分はあんをすぐに放してみた。
あんは想像以上に砂場の感じを楽しみ、そこら中をダッシュしていた。
だけど、すぐにちょっと不安になるようで止まっては、自分の居場所を確認していた。
小さくなったあんに大きく手を振る。
「おいで!」
あんはダッシュで砂の小さな丘を越えて楽しそうに走ってくる。
その楽しさは自分に移る。
あんは草の上、枯葉の上、土の上、そして、砂の上も走るのが好き。
今日は新たな大発見であった。
また一つあんのお気に入りの遊び場が増えた。
いつも行っていた場所のすぐ近くにそれはあった。
自分たちはすぐ傍にある美しいもの、嬉しいもの、大切なものすら、気付かないこともありえてしまう。
これはもったいない。
ほんの少しの勇気があれば、これを感じいることが出来るのではないだろうか。
またいつもとは違ったところから眺める客観的な姿勢と思い込みからの解放とがあれば良いのではないだろうか。
その時は必ず来る。
希望はなくしてはならない。
決して。