Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「黒龍荘の惨劇」岡田秀文のミステリ

2014-10-05 07:16:30 | ミステリ小説
                                                                                                                                            昔懐かしいスタイルのミステリです。舞台は明治の時代です。なぜ明治の時代になっているのか?それは現代では金田一耕介の世界が描き様がないからです。

交通が遮断され孤立した山荘で警察の介入も助けも呼べない状況で起きる連続殺人事件。 これだけでもサスペンス感が盛り上がりワクワクしながら読んでいきます。

でも、現在ではケータイやパソコンがありますので情報があっという間に外に流れます。写真や動画となってです。これではミステリは成立しません。警察の鑑識技術もそうです。死因、死亡推定時刻、DNA鑑定による身元の確定など、これでは誤魔化しようがありません。死んでいたのは双子の弟の方だった、こんなトリックはもう使えません。ミステリ作家受難の時代です。従ってこういった世界のミステリを書くには

時間を遡るしかありません。こう書くとこのミステリの内容のある意味ネタバレに繋がりますが、その辺は目をつぶって下さい。

伊藤博文公の書生だった二人が探偵とワトソン役になって連続殺人の謎を解明するために奮闘する物語です。 政界をうまく泳ぎまわり利権を漁っていた男のもとに脅迫状が届き、やがて彼の屋敷内で首が切断された

死体で発見されます。依頼を受け警察と連携しながら調べを進める二人ですが次々と殺人事件が起き、隣の部屋に関係者全員を集めていたのに死体のあった部屋では首が切断され持ち去られる事態が起こります。

謎めいた事件です。全部で六人の被害者が出ますが、その時探偵はこれまでの出来事に16の謎があると言います。確かに読者にも示される不可解な出来事は16もあります。

これを探偵は最後にすべてを明らかにしなければなりません。どういった答えを見せるのか興味は尽きません。

クラシックな本格ミステリです。極上の味かどうかはあなた自身の判断にお任せします。シリーズとして書くようですが、この世界感で書き続けて欲しいものです。