Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『鑑定士と顔のない依頼人』ラスト・シーンがどう見えるか

2014-10-13 09:14:30 | ミステリ小説
                                       

一流の審美眼を持つ鑑定士バージル・オドマン。その彼が人前には出れない精神的な病の女性から依頼を受けて受け継いだ財産の家財などを処分するため

目録作りを依頼され彼女の館に赴きます。電話でしか彼と接触しない女性。会う約束をしても何かと理由を付けて彼の前に姿を現さない。この辺がミステリアスで観ている方も主人公と同化して謎めいた

彼女の正体に興味津々です。一流の鑑定士には別の一面もあり、オークションで狙った品にはサクラを使い自身が手に入れていました。いつも手袋をして潔癖症のような彼はこれまで女性との関係などもなく

これまで独身で過ごしてきた男でした。そんな彼が興味を惹かれたのが謎の依頼人。彼女の名はクレア。仕事の契約書のことなどで時には衝突しながらも依然彼の前に姿を現さないクレア。

彼女の館の地下室で見つけた小さな歯車。知り合いのロバートに見せれば古いオートマタの部品だろうと言います。八割がたあればあとは作って完成させられるといわれ、その部品を見つけることも

クレアの館に行く理由でした。しかし、言葉を交わすうちクリアに翻弄されていくオドマン。ロバートの知恵で帰ったと見せて物陰に隠れクレアが部屋から出てくるところを見ます。

そうして少しずつオドマンとクレアの距離が縮まります。この辺では初老の孤独な男と精神的に弱った女性とのラブロマンスかと思います。広場恐怖症という人前や外に出れない症状に悩む

クレア。そのクレアに惹かれていくオドマン。いつもモノを触る時は手袋をしたりグラスを持つ時はナプキンでくるんで持ったりとしていたオドマンがこのあたりからなりふり構わず

クレアのために動き回ります。この辺の心理を表わす描写は上手いです。クレアの人物像も徐々に明らかになり二人はやがて結ばれます。

このあたりからラブロマンスとしてハッピーエンドに向かうのかと思いますが、少しずつ怪しくなってきます。これまで散りばめられた各人の話やエピソードが意味を持ってきます。

残酷と云うか悲劇と云うか結末にはいろんな想いが観る人に起こってくる物語です。

登場人物すべてに存在理由があり意味がある、そんな無駄の無い配役とキャスティングの良さ。そして画面を彩る小道具の数々。エンニオ・モリコーネの音楽も作品世界にピッタリです。

監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレです。

主人公のバージル・オドマンを演じるのはジェフリー・ラシュ。

競演はドナルド・サザーランド、シルビア・ホークスなど。

一度ではなくもう一度見直したくなる映画です。                                                                  DVDで鑑賞。
                                       
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