Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『図書館の殺人』青崎有吾のミステリ

2016-04-10 09:41:57 | ミステリ小説
    
           
                               

三作目でもありこれまでのキャラクター達が際立って描かれており、適材適所のポジションで生き生きと動き回っている印象です。

普通、人通りの少ない裏通りなどで殺人事件が起きた場合、警察の初動捜査としては被害者の私生活を徹底的に洗って広範囲に調べることが必要でしょう。通り魔や会社の仲間、友人関係のトラブル。

金銭関係のもつれ、恋愛関係のもつれ、本人が意識しなくても第三者に深い恨みを買っていたとかあらゆる可能性を視野に入れて捜査対象を絞り込むでしょう。

まぁ、ミステリ好きならこれぐらいは想像できるのですが現実の問題でもそんなに間違ってはいないと思います。

しかし、今回の現場は図書館です。しかも閉まった夜間の図書館で起きる殺人です。となると被害者の身辺に居る人物が犯人となります。

無差別の通り魔の犯行といった可能性は低く余計な神経を使わずに現場の様子と当日の被害者の行動を調べていくのが本筋です。

こういった環境設定で主人公の天馬が現場の様子から導かれる論理で犯人に迫っていくところがこの本の持ち味です。

断っておきますが動機云々を云ってはいけません。天馬の謎解きのロジックを楽しむのがこの本のすべてなんですから。

消えた本にも犯人には危うい意味があって隠された真相の一つという役割と犯人の立場で見れば重要な小道具建てとしての役割もあって細かく計算されている事が分かります。

ダイイングメッセージなんて今時そんなネタ?と思いますがミスリードの材料にしても最後まであやふやにして引っ張ってケリをつけるオチをちゃんと用意してあり、それも隠された真相に関連しているとは流石です。

天馬の謎解きのロジックが楽しみで読んでいるのですが、祖語のない計算された小道具と構成は見事です。

天馬の知られざる部分を柚乃が調べて少しづつ明らかになっていくところは今後もこの設定で書かれていくのかと楽しみになります。

世界観は少し悪く言えば漫画チックと云えますが登場人物たちの生き生きした様子や日々の過ごし方に好感を持てて今後もこのシリーズを出して欲しいと思います。

   
    
                           
                  


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