市立の美術館に勤める学芸員が、ふとしたきっかけで一人の無名画家に興味を惹かれる。画家の名前は東条寺桂。その画家の経歴を見ると三十八歳で亡くなっていた。
三十三歳から制作を始め三十八歳で死亡している。自殺だった。わずか五年の製作期間。休みを利用して遺族を訪ねた。妻に話を聞くうち自殺した同じ年にたった一度個展を開いていた。
その時買われた二枚の絵を見たくて買った親族を訪ねる。イコノグラフィー<図像学>とイコノロジー<図像解釈学>をもって遺されていた二枚の100号の絵に意味を見出そうとする。
不思議な絵は何を表わしているのか。そして一枚の絵に手記が隠されているのを発見する。クリスマス・イブの夜に起きた二つの密室殺人。一階の風呂場と二階の部屋に被害者が、そして凶器はひとつ。
風呂場で叫びがあり、その数分後二階で悲鳴が上がる。風呂場も二階の部屋も施錠されていた。誰がどの様に犯行を。
前半の学芸員が絵の作家を調べて家族のもとへと訪ね歩くところが、独特の雰囲気ある文章で読ませます。イコノグラフィーとかイコノロジーとか初めて知ったので新鮮で、そういった手法で絵を
読み解くとは中々面白いと思いました。後半は一転して果然ミステリ小説になってきます。見つけた手記。それを読み進む形で彼、東条寺桂の人柄や人間性。そして一人の少女との出会いなどが
語られます。この主人公の画家東条寺桂の心情はとても良く理解出来ます。絵を描きだしたきっかけとその少女への想い。五年の製作期間での自殺はその時点が彼の完結だったということに。
ミステリ部分よりも前半と画家の心情などを表わしたところが良く描かれていて面白い読み物と感じました。
東京創元社から刊行されている本ですが、装丁が恐ろしく地味で何故こんなにも地味な装丁にしたのかと首を傾げるばかりです。
作家さんもこのような装丁でよくOKを出したものと思います。
第九回 鮎川哲也賞受賞作 飛鳥部克則 著「殉教カテリナ車輪」
三十三歳から制作を始め三十八歳で死亡している。自殺だった。わずか五年の製作期間。休みを利用して遺族を訪ねた。妻に話を聞くうち自殺した同じ年にたった一度個展を開いていた。
その時買われた二枚の絵を見たくて買った親族を訪ねる。イコノグラフィー<図像学>とイコノロジー<図像解釈学>をもって遺されていた二枚の100号の絵に意味を見出そうとする。
不思議な絵は何を表わしているのか。そして一枚の絵に手記が隠されているのを発見する。クリスマス・イブの夜に起きた二つの密室殺人。一階の風呂場と二階の部屋に被害者が、そして凶器はひとつ。
風呂場で叫びがあり、その数分後二階で悲鳴が上がる。風呂場も二階の部屋も施錠されていた。誰がどの様に犯行を。
前半の学芸員が絵の作家を調べて家族のもとへと訪ね歩くところが、独特の雰囲気ある文章で読ませます。イコノグラフィーとかイコノロジーとか初めて知ったので新鮮で、そういった手法で絵を
読み解くとは中々面白いと思いました。後半は一転して果然ミステリ小説になってきます。見つけた手記。それを読み進む形で彼、東条寺桂の人柄や人間性。そして一人の少女との出会いなどが
語られます。この主人公の画家東条寺桂の心情はとても良く理解出来ます。絵を描きだしたきっかけとその少女への想い。五年の製作期間での自殺はその時点が彼の完結だったということに。
ミステリ部分よりも前半と画家の心情などを表わしたところが良く描かれていて面白い読み物と感じました。
東京創元社から刊行されている本ですが、装丁が恐ろしく地味で何故こんなにも地味な装丁にしたのかと首を傾げるばかりです。
作家さんもこのような装丁でよくOKを出したものと思います。
第九回 鮎川哲也賞受賞作 飛鳥部克則 著「殉教カテリナ車輪」