Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「二重螺旋の誘拐」喜多喜久のミステリ

2014-11-02 08:10:32 | ミステリ小説
                                     

誘拐ミステリです。ミステリのジャンルで古くからあるものですが、最近はあまり見かけません。エド・マクべインの「キングの身代金」を黒澤明が映画化した

「天国と地獄」などが有名ですが、要するにこういった誘拐モノの最大の見せ場は捜査側と犯人が唯一接触する場面である身代金の受け渡しをどのようにするか、この一点に係わってくるといっても過言ではないと思います。

そこに考え抜かれたアイデアを見せなければ面白さは半減すると思います。本田靖春の「誘拐」は実際にあった事件を扱ったノンフィクションですが、その中で警察の動きが拙くみすみす犯人を取り逃がすところが

あり、犯人もただ金に困った凡庸な人物でした。肝心の身代金の受け渡しの現場でそんな単純なミスがあるようでは小説としては成り立ちません。犯人側も巧緻に長けた人物で捜査側との頭脳戦の様子を見せてくれなければ読み物としては面白くありません。

三好 徹の書いた「コンピューターの身代金」、「モナ・リザの身代金」、「オリンピックの身代金」と身代金三部作があって、この他に天藤 真の「大誘拐」が有名なところですがこの「二重螺旋の誘拐」はどうなんでしょう。

結論から云いますと有名作品の★★本と★★本を上手くミックスさせた誘拐ミステリといえます。中々ミスリードが巧みで地の文ではハッキリと誤魔化さずにフェアに書いてあるのですが読んでいるコチラは

まったく気付かずにいてすっかり騙されてしまいました。ドンデン返しの効いたストーリーのミステリといえます。しかも伏線も周到に張ってあり、その辺も読後に上手いなあと感じるところです。

掘り出し物といっては著者に失礼ですが、この内容であればもっと話題に上っても良さそうなのにと思いました。この著者のファン以外に読まれる機会があまり無いのであればもったいないと思う作品です。

文章も読みやすく人物などもしっかり書き分けられていてスラスラ読めました。 捜査側と誘拐犯の知恵比べといった内容ではありませんがこれはこれで面白いミステリと評価できると思います。

              
                           

                         
                                   
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