入り江の小船

ヒマがあったら書く日記。

海の沈黙。

2010年05月06日 22時20分39秒 | Weblog
岩波ホールが配給の「海の沈黙」を見た。

ドイツ占領下のフランスの田舎で
フランス人の家に独軍の将校が同居する物語。

この映画は私が中高生ぐらいの年頃であれば、
戦争映画なのに戦闘シーンが一切ない作品で
あえて言うならば、回想シーンでⅣ号戦車が
アップで出てきて砲撃音と画面が揺れるだけなので
おそらく見る気はしなかっただろう。

しかし、実年齢とともに精神年齢も上がったのか、
作品の哲学的、思想的な要素と映像表現を
存分に楽しむことができた。

劇中のフランス人のお父さんがRの父親の
仙人と性格的にそっくりなので、
別の意味で親近感が湧いた。

独軍将校ヴェルナーは知人や友人にいたら
少し困るタイプの人間だな。
知ったかぶりではなく純粋な知識自慢みたいで
話も知っていることを前提に話してきそうで
知らなかったら口には出さないが、
「低レベルで下賤な奴め」
と、相手にしてくれそうにない。

「フン、ブログに書く感想がこの程度か」
と、ヴェルナーに怒られそうだ。

終盤の前線に赴くヴェルナーに
フランス人のお父さんが本に挟んでいた
メッセージが印象的だった。
「罪深き命令に従わぬ兵士は素晴らしい」
仏文学者アナトールの言葉で、翻訳者によって
表現の違いが多少あるが、意味は共通している。
他の人の感想を読んでもこのシーンは
印象的らしく、捉え方もさまざま。
私なりの解釈を申したいが、的外れなことを
書いてしまえばフランス人のお父さんが
ガックリして肩を落としそうだからやめておこう。