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新所城 伊勢 奈良時代から戦国時代まで、鈴鹿の関を守った興味深い要衝を見学する

2022-10-03 | 歴史

新所城は三重県亀山市関町新所にあります。かつては関城又は関地蔵城と呼ばれており、新所城は後世の地名変更に伴って名付けられたようです。新所城のある場所付近は奈良時代には鈴鹿の関が置かれ、戦国時代になって国人領主の関盛信あるいは関実忠によって城山に城が築かれてとされます。その後、秀吉の伊勢侵攻によりその配下によって修築が行われたと伝わります。さらに関ケ原の戦いの前哨戦では、西軍の部隊が関地蔵に布陣したとされ、新所城も使われたと考えられています。今回の参考資料は (1)「三重の中世城城館」三重県教育委員会1976  (2)「三重の山城ベスト50を歩く」福井健二・武田憲治・中井 均 編2012  (3)鈴鹿市公式ホームページの「鈴鹿関跡」などです。


新所城 東海道を挟んだ観音山と新所城(城山)の西側に鈴鹿関の長大な築地塀が想定されている
 発掘調査により、奈良時代に関を守るために長大な築地塀が設けられたのが確認され、資料(3)によると図1のような長大なものであったと想定されています。戦国時代になり街道の要衝を抑える位置にある城山に新所城が築かれました。


新所城 独立した四つの曲輪群が築かれ、西側には二段の石垣が残る
 関氏がABCDの曲輪群を当初から築いたとは考えにくいですが、どの時期にどの曲輪群が築かれたのかはは明確ではなさそうです。秀吉の命で五名の近江武将によって修築が行われたとされますので、その際に増築が行われた可能性がありそうですね。


新所城 西側の登山口 配送センターの駐車場を通る
 配送センターの駐車場から入ると、登山道の取っ付きには「城山登山口」の看板がありました。駐車は国道1号線北側の観光客用駐車場を利用しました。



新所城 西側山下の石垣群 下段の石垣① 北端部 見どころです!
 新所城の西側には2段階の石垣群が残されていました。いつの時代に築かれた石垣かは不明のようですが、鈴鹿の関の時代に築地塀と関連して築かれた可能性も捨てきれないようで、誠に興味深い石垣群でした。


新所城 石垣群 上段の石垣② 北端部
 石垣②は石垣①と比べて長大でしたが、高さは低いものでした。二段の石垣の上はそれぞれ平場になっていましたが用途はわかりませんでした。思いっきり想像力を膨らますと、鈴鹿の関の時代の建物があった場所かもしれないということになりますが、発掘調査が待たれます。


新所城 上段の石垣②の中間部 段差は低い
 上段の石垣②の中間部は地山の地形の関係か、段差は低くなっていました。


新所城 上段の石垣②   南端部
 石垣②の南端部の下には横堀状の溝がありました。石垣の上に溝の土を盛り上げたような土塁状の地形がありました。地表面の観察では石垣を積んだ時期と溝を掘った時期が異なっているような印象でした。


新所城 曲輪群A南西端の巨石   見どころです
 この巨石群は自然地形かもしれませんが、曲輪群Aの南西端を区切る5mを超すような巨石で、見ごたえありでした。


新所城 A群南下の竪土塁③ 南下から 見どころです
 何の変哲もない小尾根のようですが、資料(2)によると鈴鹿の関時代の遺構の可能性がありそうでした。東海道を挟んだ北側の観音山にも類似の竪土塁があり、発掘調査で鈴鹿の関時代の遺構と確認されているそうです。竪土塁③の西側にもう一条の竪土塁④がありました。


新所城 堀切⑤  竪土塁③の南下に設けられている
 堀切⑤は薬研掘りの堀切で、竪土塁③を登り曲輪群Aへ進入するのを防ぐ役割だったように見えました。鈴鹿の関時代の遺構というよりも、戦国期の遺構ではないかと思いましたがどうでしょう。


新所城 曲輪群Bと曲輪群C間の尾根  西から
 曲輪群B-C 間の尾根筋には特に遺構らしきものは見当たりませんでしたが、曲輪群BとCはそれぞれ独立している様に見えました。資料(2)に依拠すれば、異なる味方の武将が秀吉の命により各々の持ち場を固めた姿なのかもしれませんね。


新所城 曲輪群Cの土塁⑦ 新所城の曲輪群で最大の土塁 南から
 新所城の今見る城郭遺構は、短期間の使用だったためか、城郭遺構としては未完成に見える部分が多かったのですが、この土塁⑦は山城でよく見かける規模と形状の土塁でした。


新所城 西側登山口の看板 城道かは不明
 今回の見学では図2の集配センターにある東側の「城山登山口」から入り、石垣群と四つの曲輪群を見学して東側の「城山登山口」に下りました。資料(2)によると、城道は明らかになっていないということでした。

古い時代の鈴鹿の関の遺構と戦国時代の城郭遺構が部分的にオーバーラップしている新所城の、貴重で興味深い遺構が楽しく見学出来て良かったです。今後の発掘調査にも期待です。