一の蔵 山廃純米酒 円融

いよいよ肌寒い日が続くようになってきた。
正直なもので、昨晩の夕餉は冷や奴から湯豆腐になった。

逆三角形の体型を目指しているからには、食事も若干の工夫が必要と、なるたけ野菜と豆腐を摂るように心掛けている。

それにうってつけなのが、豆腐サラダ。
キャベツの千切り、水菜、オニオンスライスを山のように和えて、そこに豆腐を添える。

この際の豆腐は充填豆腐が合う。
旨味が凝縮されているのと、存外水分が少ないのとで、サラダ向きなのである。

そこにハーブソルトと、若干のドレッシングを垂らす。
これも色々試してみたが、やはりイタリアンのオーソドックスなのがいい。
まあ、ホントならノンオイルのそれがいいのだろうが、ゆず、レモン、中華ごまと、順に試してみて、やはり豆腐の淡泊な味わいには物足らない気がする。

また、フレンチやサウザンアイランドのようなミルキーなのも今一。
そこで、ハーブの入ったイタリアンドレッシングに落ち着いたのである。

野菜だけだと、鳥にでもなった気分だが、そこに旨味のある豆腐が絡むだけで、「食った」感が出る。


そうして過ごしてきたところ、昨日たまたま覗いたスーパーで、普通の豆腐が特売になっていたので、つい２丁買ったのがトリガーとなった。

普通の豆腐は、サラダにすると、充填のそれほどはマッチしないのは、過去の経験で知っている。

ならば、湯豆腐だ、となったのである。
これがなんとも美味い。

単にこんぶでだしをとった湯に浮かべるだけのことでこんなに美味いんだから言うこと無い。

また暫く続くなこれは。
馬鹿の一つ覚えみたいに。







おっと、けふは酒の話を書くんだった。

燗酒に目のない私は、年中やっちゃう訳だが、やはりこれからの季節は別格に美味い。

それと、少しの日本酒を飲むことは身体にもとってもいいことなんだから、積極的に毎晩飲むことにしている（我田引水は得意パターン）。

但し、ビールに露払いとチェイサー役をさせるのは贅沢だ。
それに、カロリーも少々気になる。

そんなこんなで最近は冷たいミネラルウォーターを追い水にして、純粋に酒を愉しむことにしている。

これを基本的には２合程度までを目安に、まあ過ぎても３合までと決めて毎晩やる。

日本人に生まれて良かったなあとしみじみ感じるのがこの瞬間。
なんでこんなに美味いものをみんな気づかないのだろう。

たまに宴席で飲むと、まずほとんどの人が燗酒を敬遠する。
ビール一辺倒か、焼酎ときたもんだ。

勿論、それらも美味い。
でも、燗酒は別格に美味いのに・・・



では、そろそろ本題に。
この一の蔵　山廃純米酒　円融という酒が私は好きだ。

山廃純米酒独特の旨味や酸味が、そこはかとない奥行きを堪能させてくれる。
元々、ある焼鳥屋で飲んでから、その特徴ある味わいが、脂の多い焼き鳥にはにくいくらいに合うことを知った。

それが証拠に、その店がその酒をラインナップからはずして（どうやら売れなかったらしい）、同じ蔵元の辛口本醸造に替えたことで、致し方なく飲んでみたが、物足りなかった。

合わない訳ではないのだが、マリアージュというにはほど遠いのである。

但し、そこでは冷えたものが供されるので、私もずっと冷やして飲んできた。
常温だと若干気になる酸味が、冷やすと頃合いになるという事情からだが、調べてみると、燗にすると最高みたいなことを書いてある。

そこで何度か燗で試してみたが、どうにも酸が浮き立つ感じで好きになれなかった。


それが、
それがなのである。

昨晩はひょんなことから、「これや」という味わいに邂逅したのである。


というのは、いちいちガスレンジまで足を運ぶのが面倒くさい私は、小鍋に湯を沸かして、その中で湯煎をしながら飲むようにしているのだが、昨晩はそれが少々冷めかかっているところにこの酒を入れたのである。

さう、ぬる燗の域を越えて、「人肌燗」というやつだ。





こ、これが絶妙に美味い！のである。

さうか、これが燗の妙味なんだ。


この歳になって、ようやく開眼したぞ。



私は、チンチン言うほどの熱燗も好きだ。
猪口を口に運んだときにぷんと立ち上がる酒独特の香りに生唾が湧くのである。

但し、それはやはり本醸造酒のきりっと辛いのがいい。

それとは別に、しっかり造られた純米酒は、ぬる燗ですするのがいい。
口中に広がる酒の宇宙が愉しめる。



そして、昨晩見つけたのが、人肌燗の山廃純米酒を嘗めるように呑む喜びなのである。


ことほど左様に、日本酒の奥は深い。
それをじんわり伝えていくのが私の天職ではある・・・